2017年4月5日(水)更新

<2017年さらなる飛躍へ>

山本昌、注目の8人を語る。

自身の可能性を信じ、努力を重ねる選手たち。そこではベテランも若手も関係ない。
今年のプロ野球を面白くするセ、パ注目の8人を山本昌が語る。

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投手編

大谷翔平(北海道日本ハムファイターズ)

進化し続ける史上最高の逸材。

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 80年を超えるプロ野球の歴史でも最高の素材といえます。160kmの剛速球を投げて、3割22本を打つんですから。

 投手大谷は、まだ粗削りです。インタビューで本人は、ストレートがシュート回転することが課題だと話していました。制球もアウトコース一辺倒。変化球もスライダーくらい。でも、いくつも課題を抱えながら勝ってしまう。末恐ろしいことです。

 大谷投手には、底知れぬ才能が眠っています。それが覚醒するには、矛盾するようですが、勝てなくなる時期が必要かもしれません。人間、壁に直面すると本気になりますからね。イン、アウトの出し入れ、さらに緩急といった投球術を身につけたら、文字通り無敵の投手になるでしょう。

 打者大谷も一流。通常の野手の半分も打撃練習をしていないのに、昨季は打率.322で22本塁打。これで投手に専念しろ、といえなくなりました。嬉しい悩みですね。

 彼の打撃は緩い球は右方向に引っ張り、速球は左方向に流すという特徴があります。どんなボールでも体勢を崩さず、しっかりと反応する。それができるのは、タイミングの遅い振り出しでボールを見極め、速いスイングでボールを捉えているからです。

 打者大谷と対戦するとしたら、インハイの速球が有効でしょう。でも僕には速いストレートがないので、アウトローの変化球で勝負するしかないですね。これでは苦しい。ヒットで済めば御の字かな?

 投手大谷と打者大谷はどちらも七分咲き。史上最高の選手が花開く瞬間を見守ることができるのは、僕らの特権かもしれません。

松井裕樹(東北楽天ゴールデンイーグルス)

伝家の宝刀スライダーの威力。

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 高卒でプロ入りして4年目。線は細いですが、パ・リーグを代表する抑え投手のひとりになりました。緊張感が漂う最終回のマウンドに立ち、堂々と腕を振る。21歳には、なかなかできないことです。

 松井投手のいちばんの強みは、鬼のように落ちるスライダー。高校時代、甲子園で22奪三振を記録した決め球は、人間の動体視力を超えています。投球回数を上回る三振が取れるのは('16年は62.1回で75個)、松井投手にしか投げられない、このボールがあるからこそ。ボールが落ちるのは、リリースポイントが真上にあるからです。

 もっとも、プロ入りしてから徐々に投球スタイルが変わってきました。代名詞だったスライダーは減り、チェンジアップを多投しています。僕は「消える」スライダーをもっと見たいと思っていますが、ワンバウンドするリスクもあるので、キャッチャーの後逸が気になるのかもしれません。

 狙ったときに三振が取れる。こういう投手はプロでも、そうはいません。その意味で、間違いなく抑え向きです。しかし、入団直後のように先発で投げる姿をまた見たいもの。当時は制球が不安定でしたが、もうあのころの松井投手ではないでしょう。

 体力がつき、チェンジアップに続いてカットボールも習得。いま先発のマウンドに立てば、かなり勝てるんじゃないでしょうか。先発では全力投球を続ける必要はなく、いろんな球種を投げる余裕がある。そう考えると、伝家の宝刀のスライダーで三振の山を築く、無敵の松井投手が甦るかもしれません。いまも十分に凄いですけどね。

涌井秀章(千葉ロッテマリーンズ)

紆余曲折を経て甦った投手は強い。

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 投手はストレート次第――。

 これは僕が現役時代から持ち続けている哲学です。どんなにいい変化球を持っていても、質のいいストレートを投げられなかったら宝の持ち腐れ。勝てる投手は、みんないいストレートを持っています。

 かつてタイトル争いの常連だった涌井投手ですが、3、4年勝てないシーズンが続きました。それが千葉ロッテ移籍2年目に15勝。3度目の最多勝に輝きます。この復活劇は、全盛期に近いストレートを取り戻せたからだと思います。

 埼玉西武時代の後半に勝てなくなったのは、経験を積んだことが関係しているかもしれません。投手はキャリアを重ねるにつれ、球種や投球術を身につけます。でも、いいことばかりではありません。涌井投手も多彩な変化球を手に入れたことで器用さに走り、ストレートで勝負する本来の姿勢を見失っていたような気がします。

 西武での最後の2シーズンは抑えに転向、中継ぎにも配置転換されました。本人にとってはつらい時期だったかもしれません。でも、人生無駄なことはありません。抑えや中継ぎを経験したことは確実に、いまにつながっているはずです。抑えや中継ぎは先発とは違い、目の前の打者に全力で向かわなければなりません。痺れる場面に放り込まれて、もう一度腕を思い切り振る感覚を取り戻したのだと思います。

 再び本来の自分を取り戻した涌井投手。こういう選手は強い。今季もポーカーフェイスで二桁以上の勝ち星を積み重ね、チームに貢献するはずです。

和田毅(福岡ソフトバンクホークス)

遅い球を速く見せる投球術。

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 日本球界でいま、いちばん安定している左腕でしょう。アメリカではヒジの手術もあり活躍できませんでしたが、帰国1年目にして15勝。35歳にして2度目の最多勝に輝きました。

 和田投手と対戦する打者の多くが、こんなふうに口を揃えます。

「スピードガン表示では130kmそこそこなんだけど、それが打席に立つと140km台に見えるんですよ」

 実際に和田投手は、球速の割に空振りが取れる。昨年の奪三振は157個。これはパ・リーグ4位の数字です。

 遅いボールなのに空振りが取れるのは、なぜか。それは初速と終速が変わらないからです。実際は、もちろん遅くなりますよ。でも他の投手ほど速度が落ちないから、むしろ速く見える。その結果、ベース上がいちばん速く見えるんです。

 こうした錯覚を利用した投球ができるのは、いくつか理由が考えられます。

 まず手首のスナップが強烈に効いていて、ボールにかかるスピンが多いんだと思います。スピンがかかると、揚力が作用してストレートの軌道が浮き上がってくる。

 次にフォーム。腕の振りが身体に隠れていて、最後にピュッとボールが出てくる。打者はタイミングを取りづらく、どうしても振り出しが遅れてしまうんです。

 遅いボールで三振が取れるというのは、投手にとって一種の理想。キャンプのブルペンでも惚れ惚れするようなストレートを投げていました。遅い球を速く見せる、和田投手の投球術を堪能してほしいですね。

打者編

坂本勇人(読売ジャイアンツ)

プロ10年目でついに目覚めた天才。

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 高卒入団2年目で巨人のショートに定着。3年目には3割達成、4年目にはホームラン31本を記録――。

 坂本選手が急速に台頭したとき、僕は「この選手はいったいどこまで伸びるんだ!?」と思ったことを憶えています。

 でも、それから3、4年間は停滞しました。瞬く間に首位打者争いの常連になるかと思いきや、2割6分から7分あたりを行ったり来たり。でも昨季、ついに殻を破りました。打率.344で初の首位打者を獲得。これは才能が大きく伸びたというより、もともと備えていた潜在能力が花開いたんだと考えています。

 では、坂本選手の何が変わったのか。以前は大きく背伸びするようなフォームでしたが、近年は腰を落とし、ややコンパクトな構えに変わりました。もともとインローに強く、左投手の差し込んでくるボールに天才的な反応を見せる。「インローには投げるな」と僕も気をつけていましたが、落ちるスクリューを上手く拾われたものです。

 しかし変わったのは技術より、野球に取り組む姿勢ではないでしょうか。'15年、26歳という若さで巨人のキャプテンに指名されたことが、きっかけになったかもしれません。私生活や練習メニューなど、すべてを見直して野球に没頭。坂本選手の変貌ぶりは、傍目にもよくわかりました。

 タイトルを獲った翌年は真価が問われます。投手の攻めも厳しさを増す。ですから今季も昨年並みの数字を残せば、これはもう本物。名実ともにセ・リーグを代表する打者になったと考えていいでしょう。

筒香嘉智(横浜DeNAベイスターズ)

三冠王にいちばん近い打者。

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 いまもっとも素晴らしい左打者です。

 入団7年目の昨季、二冠を達成。逃した打率部門も.322(セ・リーグ3位)と高い数字でした。'04年の松中信彦さん以来出ていない三冠王も期待できます。

 この2月、DeNAのキャンプを見に行きましたが、素晴らしいスイングをしていました。周りとはレベルが違う。そんな筒香選手の打撃を見ていて、思い出すスラッガーがいます。松井秀喜さんです。僕は松井さんと何度も対戦しましたが、彼の持つ凄みが筒香選手にも漂っているんです。

 筒香選手の強みは、外に逃げるボールをしっかり捉えられるところ。昨季も逆の左方向に14本もホームランを打ちました。無理に引っ張りにかからないのは、力がついてきた自信があるからでしょう。

 でも、いちばんの強みは弱点がないところでしょうね。どんな選手でも、投手目線で弱点は見つかるもの。それがないんです。身体が柔らかくて、タイミングを外そうとしても、上手く合わせてくる。打撃フォームがほとんど崩れないんです。左投手にも腰が引けないし、インコースの厳しいところをついても器用に対応する。

 僕が対戦するとしたら? 困ったなあ……正直いって投げるところが見当たらないですね。ひとついえるのは、三振を取ろうと思わないこと。無理をすると、一発を食らう可能性がありますから。だから「ホームランを打たれなきゃいい。ヒットだったら、まあ、いいか」、そんな気持ちで投げるでしょうね。ヒットでOKという気持ちにさせる打者、滅多にいないですよ。

森友哉(埼玉西武ライオンズ)

今季いちばんのブレイク候補。

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 プロ野球選手は、いつブレイクするのか。僕にはひとつの持論があります。花が咲くのは投手よりも打者のほうが遅い、ということです。特に高卒選手は。

 ちなみに僕が初勝利を上げたのは、5年目の夏でした。かなりの遅咲きですね。ところが野手になると、5年目のブレイクは珍しくありません。高卒野手の有望株が独り立ちするのは、4、5年目が一般的。一軍の雰囲気や打席での厳しい攻めに慣れていき、身体も徐々にできていく。中田翔選手、山田哲人選手、そして昨季の鈴木誠也選手が頭角を現わしたのも4年目でした。

 森選手も今季4年目を迎えます。2年目からDHを中心に出番を得て、この年には143三振を記録しながら、17本塁打を放ちました。森選手のいちばんの魅力は、もちろんフルスイングです。170cmという小柄な身体で、あの大きなスイングができる。これは天性のもの。投手にしてみれば、タイミングが合わない空振りでも、嫌なものですよ。ひとつ間違えたら、スタンドに放り込まれる怖さがありますから。

 埼玉西武の辻発彦新監督は、森選手の捕手起用を明言しました。捕手というとリードで頭がいっぱいになり、打撃に集中できないといわれます。でも、これが吉と出るかもしれません。捕手は打席では気楽なもの。リラックスして打席に立つことで、あの豪快なフルスイングが爆発するかもしれません。将来の日本の中軸を担う逸材、その才能がいま開花しようとしています。(森は3月5日の西武対キューバ戦で左肘頭を骨折。開幕には間に合わない見込み)

高山俊(阪神タイガース)

数年後には首位打者争いの常連に。

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 阪神という注目度の高いチームで、1年目からレギュラーに定着、新人王に輝きました。これはただ者ではないですね。

 ルーキーイヤーの昨季は、序盤からハイペースで打ちまくりました。でも、プロの世界は一筋縄ではいきません。インハイの弱点を見破られて、かなり苦しみました(打率.275)。低めと外に強い反面、インコース、特にインハイに弱いんです。

 ただ、課題があるのは1年目だから当然のこと。それを補って余りある魅力を、この選手は備えています。アベレージヒッターの印象が強いですが、スイングが強く、フリーバッティングの飛距離がものすごく出るんです。「おお、飛ぶなあ」と練習では毎回、驚かされますよ。

 フリーバッティングで飛距離が出るのは、あのイチロー選手もそう。京セラドームの5階席に乗せたりする。こういう飛ばせるスイングを持つ選手が、ライナー性の打球を意識して、芯で捉えるスイングをする。だからイチロー選手は打率が高いんです。

 つまり高山選手には、もっとアベレージが上がる素地があるということ。2年目の慣れが見込める今季は、3割に乗せるでしょう。数年後には、首位打者争いの常連になるかもしれません。

 昨季後半は主に3番での起用でしたが、本質的には1番向きだと思います。打率が期待できて、足もある。選球眼にも磨きがかかって、四球も確実に増えるでしょう。走者を還すクリーンアップより、走者として生還するほうが適任。高山選手が1番で3割を打てば、今季の阪神は強いですよ。

- Number Web より転載 -

山本昌プロフィール

山本昌 Masa Yamamoto

1965年8月11日、東京都生まれ。
'84年、中日に入団し、'15年に引退するまで左の先発投手として活躍。
通算219勝165敗、防御率3.45を記録。野球解説者。

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