――では、今回のゴジラのデザインについての、お二人の印象などを教えていただけますか?
- 長谷川
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人間が作り出したものなんですが、見ていて不思議な感覚がしましたね。何かの化学合成で生まれたもの、というイメージよりも人間が作り出した異形のものという感じですね。初代(1954年版)の頃の姿は日本の神話に出てくる龍蛇に似ているな、と思ったのですが、今回は何か得体の知れないものが合成されたイメージがしましたね。簡単に格好良いと言ってはいけないのかもしれないけれど、昭和時代のゴジラに見られた愛嬌とか、チャーミングさはまったくなくなっていると思います。本当に怖い存在のゴジラに立ち返ったと言うのか。人間が感じる異形のものに対する恐怖、それをストレートに体現した姿になっていると思います。
- 石原
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やはり原始的な感じがしますね。ゴジラ、というひとつの“怪獣”のキャラクターだけではない気がします。何か「あなたはこのゴジラをどういう風に捉えますか?何に例えられますか? 形や動き、光っているものが何に見えますか?」と、人それぞれに思う部分も含め、私たちに問われているような気がします。
――タイトルの「シン・ゴジラ」の“シン”には、映画の内容を想起させることも含めて、例えばどんな漢字を当てはめられると想像できるでしょうか?
- 長谷川
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僕は色々な意味を含めてカタカナにしているんだと思います。新、神、進、真、心、辰、審、讖(予言の記録の意味)と、考えると色々当てはめられるけれど、全部の意味がこのシンには入っていると思っています。どれかひとつに限定するよりも、様々な意味を複合しての「シン・ゴジラ」なんじゃないだろうかと思っています。そういう意味でまさにこの映画は“ゴジラ映画”なんですよ。
――今までのゴジラと今回のゴジラで、ここは変化した、もしくは不変のものだと思われる部分とは何でしょうか?
- 長谷川
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最初の「ゴジラ」が作られた1954年当時は他にも大作映画、名作映画がたくさん生まれた時代。日本映画界が世界に進出できる作品を作ろうという意気込みを感じた時代だと思うんです。本作もそれに近い部分があるんじゃないかな、と思いますね。
- 石原
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最初のゴジラは、言葉の表現も含めてかなり直接的だと感じました。戦後そんなに時間が経ってなかったから(1945年の終戦から9年後)、あの当時にあの映画を作ることはかなり挑戦だったと思いますが、今回の新作もやはり世界に向けて様々な問題に対して意味を持っていると思います。
- 長谷川
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初代のゴジラから2014年まで(海外作品も含めて)に描かれてきたゴジラ像は今回なくなっているような気がします。それだけ初代に近いというか、というよりも全く新しいゴジラ像だと思いますね。
――今回の「シン・ゴジラ」を観る人たちに、この映画はこんな映画なのだと説明するとしたら、どんなことが言えるでしょうか?
- 石原
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2011年3月11日の東日本大震災を経験した今だからこそ、日本人が作るべき作品だと思いました。震災を経験し、乗り越えて生き、生活している人たちが観るから、胸に響くし、感情が入るものになっていると思うんです。ゴジラは怪獣であり、災害でもあるので、その恐怖を経験から感じることが出来る。客観ではない実感としての部分。恐怖を知ったからこそのリアリティ。それは経験しているかしていないかで全然違うと思いましたし、そこはしっかりと自分の中で感じながら現場にいました。それに日本だけではなく世界が抱える諸問題もしっかりと提起している物語だと思うので、そこも感じてもらえたら嬉しいです。
- 長谷川
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本当に上映時間があっという間の映画ですよ。個人的にはゴジラの東京上陸後の破壊行動を見て、爽快感を感じてしまったりもする。応援したくなってしまう部分もあり。ゴジラにある種のカタルシスやシンパシーさえ感じてしまうんです。それは僕の中に破壊衝動がある、ということではないんですが(笑)。
- 石原
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ゴジラが登場すると、それまでの人間ドラマを忘れてしまうくらい、ゴジラが暴れる姿が印象に強く残っていて。ゴジラにものすごくインパクトがあるんですよね。やはりゴジラが主役の映画なんだと思います。子供の頃に観ていたゴジラに対する印象と、年齢を重ねた今、改めて観るゴジラとはやはり感じ方が違いますし。人間が作り出したと言っていいゴジラに、人間自体が苦しめられることになる。そこには悲しみもあって。悲劇を繰り返してはいけない、という思いもある。観る人によって心に刺さる部分も違うんじゃないでしょうか。
Photo=言美歩
Interview=永田よしのり
Stylist=熊谷隆志(LAKE TAJO)/長谷川、 宮澤敬子(D-CORD)/石原
Hair&Make=宮田靖士(VaSO)/長谷川、菊地美香子(TRON)/石原
衣裳協力=シャツ\19,800、ベスト\79,000、パンツ\31,000、ベルト\21,000、
シューズ\58,000 すべて、フィグベル(問い合わせ先:プロッド 03-6427-8345)/長谷川