石原奈央子 J:COMスペシャルフォト・インタビュー

縁があってクレー射撃を始めた石原奈央子選手が、リオデジャネイロで初めてオリンピックの舞台に立つ。一般の人にはあまりなじみのない射撃の世界を語ってもらいつつ、オリンピックを目指したきっかけ、かける思いが明らかに! 気さくで明るいキャラクターで周りを和ませる石原選手に迫る。

ビリになって“絶対に上手くなってやる。絶対にオリンピックに行ってやる”と思いました

――射撃を始めたきっかけを教えてください。

「実家の神社の隣が射撃場だったんです。小さい頃の記憶では、クレーが飛んでいるとかは覚えていないですけど、おじさんたちが鉄砲を持っていて、その鉄砲を触ろうとするとすごく怒られたのを覚えています。おじさんたちだけが触れるものというイメージがすごく強くて、いつか自分も触れるようになりたいとずっと思っていました。なので、小さい頃は“射撃をやりたい”ではなく“鉄砲に触りたい”でしたね」

――銃刀法で銃が取り扱えるようになる20歳ですぐに免許を取りに行ったんですか?

「20歳の頃は忙しくて、なかなか銃の免許を取るまでの余裕がなかったんです。講習を受けて、試験の勉強をして、試験を受けてと何度も警察に足を運ばないといけないので、結構時間がかかるんですよ。ちょっと時間に余裕ができた23歳くらいで免許を取りました。ただ、射撃をやりたいという思いはずっとありましたね。実際にやってみたら、銃が重いな、簡単そうに見えていたけど、難しいなって思いました」

――その後、日本クレー射撃協会の選手発掘プログラムに参加して、’07年から本格的に競技を始めるんですね。

「そうですね。初めての全国大会では、ビリでした。スコアが1ラウンド25点満点中の10点とか、12点でしたから、半分もクレーを撃ててなかったですね。私は勝つ気満々で行ったので、結構ショックでした。まあ、最初の大会で勝つ気満々だった私が悪いんですけど(笑)。そのビリの成績を実感した時に、絶対に上手くなってやる。絶対にオリンピックに行ってやると思いました」

――石原選手は、クレー射撃のどのようなところに魅力を感じているのですか?

「撃つ瞬間の集中力と、射撃をしていない時のリラックスした雰囲気のギャップの激しさが見ていてカッコイイなと思います。普段触ることのできない銃を手に取って、その重みだったり、火薬の匂いだったり、撃った衝撃だったり、その感覚が合わさって、クレーを粉砕できた瞬間は楽しいですね」

――銃を撃つ感覚というのを、一般の方に伝えるのは難しいのでは?

「法律があるので、銃を持っていただくのはなかなか難しいです。ただ、畑などを荒らす動物に対するハンターの方たちも少なくなっている現状もあるので、クレー射撃だけでなく、正しい知識を持って銃を持っていただく機会が増えたらと思います」

――クレー射撃の中でもなぜスキート種目を選んだのですか?

「最初はトラップ種目がやりたかったんですけど、父の友人や家の射撃場に来る方たちに、『こんな近くにいい先生がいるんだから、スキートにしなさい』ってずっと言われ続けていくうちに、『そうかな』って思いました(笑)。いい先生というのは、父(石原敬士/メキシコ五輪、モスクワ五輪クレー射撃日本代表)のことなんですけど(笑)。父は厳しく教えてくれますが、親子なのでケンカになってしまうこともありました」

――スキート種目はどんな種目か教えてください。

「簡単にいうと、半円の曲線上に設定された7つの射台と、直線の真ん中に設定された1つの射台を回ってクレーを撃ちます。トラップ種目は横に直線上を動いて射撃を行いますが、曲線上を動くので、クレーが出るところの位置も違いますし、クレーの見え方はまったく違いますね。トラップは1ラウンドで1枚ずつ25枚ですが、スキートは1枚だけじゃなく、2枚出る時もあって25枚ですから、トラップよりも集中する回数が少なくてすみます(笑)。あんまり集中できないものですから、その点でも、スキートが私に合っていたのかもしれないですね(笑)」

――近年はイタリアにも留学して腕を磨いているそうですね。

「何かを変えないと進めないという感じがあって、海外の門を叩かないといけない時期になったと思っていきました」

――日本とイタリアの違いはどんな点ですか?

「どっちがいい悪いではなく、簡単に言うと、イタリアは褒めて伸ばす、日本は厳しくして伸ばす感じでしょうか。父が結構厳しいものですから、イタリアに行った時に褒められてビックリしましたね。新しいことを学んでいくのが楽しくて、もっと学びたい、もっと上手くなりたいという思いが強くなりました」

クレー射撃は自己との戦いなので、自分に打ち克ちたいです!

――オリンピック出場が決まった時のお気持ちはいかがでしたか?

「私に決まって良かったと、ホッとしました。アジア予選1位で国別の出場枠を取って、他に出場資格を満たす方がいらっしゃらないので、私に決まるとは思っていたんですけど、やはりホッとしました」

――ブラジルでのプレ大会に出場して、会場の印象はどうでしたか?

「背景というのか、後ろの景色の影響でクレーの角度が違うように見えました。本当はクレーの形が一緒ですから、違うわけはないんですが、背景によって遠く感じたり、近く感じたりするんです。それを意識して、クレーが遠く見える射撃場とか、いろんなところの射撃場に行って練習するようにしています」

――そのほかに、石原選手が課題として取り組んでいることはありますか?

「何の競技でも最初はドキドキすると思うんですけど、私は特に1発目は不得意というか、ドキドキしちゃうんですよね。最近はそれをセルフトークしながら、落ち着くようにしています。だんだん良くなっていると感じています」

――どんなことをセルフトークしているんですか?

「いろんなことを喋っていますね。『あの選手はお昼に何を食べたんだろう』とか、『あの選手の靴カッコイイな』とか(笑)。撃つ時はクレーを割ることだけを考えているんですけど、撃った後は全然違うことを考えるようにしているんです。というのも、撃ち終わって失敗した時に、何で失敗したんだろうと思ってしまうと、それを引きずってしまうんです。そうならないように射台から出た瞬間から、『今日は何を食べよう』とか、パッと違うことを考えるように心がけていて、それから『よし!次は』って切り替えています」

――切り替えが大事なんですね。石原選手は、切り替えは上手なほうですか?

「すごく下手なんです。だから、喋って、言葉にすることで切り替えるようにしています」

――競技中以外の場面では、どう切り替えをしていますか?

「トイレにこもります(笑)。その日に起こったことは、トイレにこもっていろいろ考えて、リセットするようにしていますね。時間は計ったことがないので、どれくらいこもっているのかはわからないですけど(笑)」

――クレー射撃では銃も大事な要素だと思うのですが、石原選手は銃にどんなこだわりがあるんですか?

「実は全然道具のこだわりがなくて、あまり詳しくないんです(笑)。私は、Perazzi(ペラッチ)というイタリアのメーカーの銃を使っているのですが、ずっとPerazziの銃しか使っていないので、他のメーカーの銃がどんな感じかわからないんです。有名な誰々選手が銃を替えたから、私も替えたという話を聞いたりするんですけど、弾が出て正確に当たってくれれば、それでいいものですから。ただ、弾の色はカワイイ方がいいですね。今年は緑を使っているんですけど、その前は黄色だったり、赤だったり、その年によって替えています」

――観戦初心者の方は、どんなところに注目すればクレー射撃を楽しめると思いますか?

「オリンピックの場合は、パウダークレーといって、割れるとパウダーがパーって散るものを使っています。パウダーが散るので、結構きれいですし、どこで当たっているのがわかるので、この選手はこの辺りで当てているとか、違いを見比べるのもいいと思います。あと、『石原はまた食べ物のこと考えているのかな』とか想像しながら見るのもいいかもしれません(笑)」

――世界ですごいと感じる選手はいらっしゃいますか?

「すごいのは、アメリカのキム・ロード。ちょっと体がブレて失敗したのかなと思っても、バシバシ当ててきますから、さすがだなって思います。他には、イギリスのアンバー・ヒルですね。すごくきれいな方ですし、日本では考えられないんですけど、まだ20歳になってないんです。アンバーさんみたいな若い方もオリンピックに出るので、日本の方にも『私にも射撃できるかも』って思ってもらえたらうれしいです」

――クレー射撃をやってみたいと思った人に、選手に必要なものをアドバイスするなら何ですか?

「情熱だと思います。やっぱり好きでないと続けられないですし、続けないと上手くなれないですから。情熱があって、続けていけば上手くなれると思います」

――石原選手にとっての初のオリンピックでの目標を教えてください。

「点数が悪い時は、自分のペースを崩してしまうのが原因なので、自分のペースをいかに保てるかを目標にしたいと思います。クレー射撃は、誰かと戦っているわけではなくて、自己との戦いなので、自分に打ち克ちたいですね」

Photo=中越春樹
Interview=山木敦

ページ上部に戻る ↑

リオデジャネイロオリンピック2016<J:COMテレビ>

8月6日(土)~8月22日(月)
合計85時間放送!
※録画放送含む。※放送内容は予告なく変更となる場合があります。

「射撃」競技概要

銃や的の違いで異なる魅力
一瞬の集中力が勝敗を分ける!

さまざまな銃で標的を撃ち、精度の高さを競う。
ライフルやピストルを使う種目は静止した的を撃ち得点を、散弾銃を使用するクレー射撃は動く的を撃ち的中数を競う。
いずれの種目も集中力、正確性の持続が勝敗を分ける。

J:COMテレビ「射撃」放送日時

※すべて録画放送

男子10mエアピストル 8/8(月) 20:30~21:30 男子クレー射撃 トラップ 8/13(土) 20:30~21:20
女子10mエアピストル 8/9(火) 20:30~21:30 女子クレー射撃 スキート 8/14(日) 20:30~21:30
男子10mエアライフル 8/10(水) 20:30~21:30 男子25m
ラピッドファイアーピストル
8/15(月) 20:30~21:20
女子25mピストル 8/11(木) 20:30~21:30 男子50mライフル3姿勢 8/16(火) 20:30~21:30
男子クレー射撃 ダブルトラップ 8/12(金) 20:30~21:30

※7/4時点の情報。 ※競技日程は日本時間。
※日時・内容は変更の場合があります。EPGまたはホームページでご確認ください。

リオ五輪の最新情報をチェック

J:COMの「リオ五輪特集」では、テレビ放送スケジュール、
競技日程、最新ニュースほか、リオ五輪の最新情報をお届けします。