川井一仁 J:COMスペシャルフォト・インタビュー

1990年代はピットレポーターとして、2003年からはF1中継の解説者としてF1人気を支え、現在は「2016 F1グランプリ」(フジテレビNEXT)の解説を務めると共に、「F1GPニュース」(フジテレビNEXT)で各チームの最新情報やレースの詳細な解説を行っているモータージャーナリストの川井一仁。3月18日に開幕した2016年シーズンの注目チームや注目ドライバー、レースの見どころなどについて聞いた。

2016年シーズンは戦略のバラエティが豊富になる

――2016年シーズンで、川井さんが注目しているチームを教えてください。

「やはり、去年優勝したメルセデスは強いと思いますね。そこにフェラーリがどこまで食い込めるかというところがシーズン全体の面白さにつながってくると思います。それから、兄弟チームのトロ・ロッソとレッドブルにも注目しています。去年はマックス・フェルスタッペン(去年、17歳でデビュー)の"若さ"について批判的な意見もありましたが、十分に走れることを見せつけたので2年目の走りが楽しみですね。兄弟チーム対決に関しては、前半はトロ・ロッソの方が速いと思うんですが、トロ・ロッソのエンジンは開発できないので、徐々にレッドブルが速くなるかもしれないと予想しています。そして、日本人としては去年復活したマクラーレン・ホンダにも注目したいところですよね。去年は、ホンダのパワーユニットで少しもたついた部分もあったと思いますが、今年は、少なくともルノー並にはあるんじゃないかと分析しています。また、今年はレギュレーションの関係で、去年よりも下位チームとトップチームとの差がぐっと縮まっているような気がしていますので、去年以上の成績が期待できるんじゃないでしょうか」

――今年は"混戦"になるということでしょうか?

「全体のタイム差が縮まると『混戦になる』と言われがちですが、速さは相対的なもので、順位がすべてになります。1周あたり2~3秒は速くないと前の車を抜けないと考えると、これまではラップタイムが1分40秒、1分41秒、1分42秒という順番だったところが、1分40秒、1分40秒5、1分41秒に変わっても、抜けない可能性が高いんですよね。ただ、タイム差が縮まれば競り合いが増えますので、そういう意味では、混戦になると思っています」

――混戦になれば、観ている側としても楽しいですよね。

「期待して良いと思います(笑)。それから、今年からタイヤの使い方がある程度自由化されて、アグレッシブなタイヤの選び方ができるようになりました。たとえば、去年なら間違いなく1ストップだったコースが、今年は最低でも2ストップになるということもあります。ピットストップの回数が増えるということは、順位が変わる要素が増えますよね。それから、ピットストップの回数が増えれば、やわらかいタイヤを使うことになるので、限界を超えてタイヤを使う車も出てきて、抜きやすくなるかもしれない。さらに言えば、タイヤの使い方で"ギャンブル"をして、それがハマれば下位チームでも上位にいける可能性があります。ですから、今年は戦略のバラエティが豊富になって、観ている側としても楽しいと思います」

――今年、注目のドライバーは?

「まず、今年は新人が3人いるんですが、その中ではパスカル・ウェーレインがどういう走りをするのかが楽しみですね。それから、F1では"チームメイト"と言いますが、野球やラグビーなどのチームスポーツとは違って、実際にはレースで競い合うライバルなんですよ。だから、去年に引き続きハミルトンとロズベルグの同チーム対決にも期待しています。2人はチームメイトになって3年目、実質的には4年目なので、そろそろロズベルグもどうにかしてくれないとね(笑)。去年はメルセデスが圧倒的に速かったので、少しミスをしても順位が変わるほどまでにはならなかったんですが、今年は特にメルセデスとフェラーリ、ウィリアムズの差が縮まっているので、メルセデスの2人がミスをしたら、フェラーリ、ウィリアムズの4人が割って入ってくる可能性もある。そこにも期待したいですね」

ドライバーの能力が勝敗を分ける大きな要素になってくる

――チーム、ドライバー以外で注目しているポイントは?

「今年初開催のアゼルバイジャンのコースは楽しみですね。"アジアのドバイ"のようなバブリーな街でありながら、世界遺産の街でもあるんですが、コースの幅が7mくらいしかないんですよ。これはマカオ名物の"メルコ・ヘアピン"と同じくらいの幅です。それでいて、直線は2kmくらいあるので、街中を車が猛スピードで駆け抜ける。道幅が狭いので抜きにくいとは思うんですが、直線もあるので、面白いレースになるんじゃないかと思います。それから、今年はドライバーが自分で考える要素が非常に大きくなっているのも特徴です。今までは無線で指示されたことをそのままやっていればいい面もあったんですが、今年は、ある程度自分で考えなきゃいけない。頭に血が回るだけの体力的な余裕やクレバーさが勝敗を分ける大きな要素になるというのは面白いと思います」

――これからF1を見始める方にメッセージをお願いします。

「やっぱり"ドライバーの無線"や"タイヤのルール"と聞くと、難しく感じると思うんですよ。タイヤに関しては、予選から決勝まで持ち数13セットで、そのうち3セットが決められていて、その他の10セットは自由に選べます。各チームが選んだセットを見れば、どのように使っていくかというのはだいたい分かるんですが、レースが始まるとその戦略を変更せざるをえない場合がある。たとえば、タイヤをロックアップさせてしまって片減りしたとか、思ったようにタイムが出ないから予選で長く走らなきゃいけないとか、そうやって余計にタイヤを使ったつけが決勝レースに回ってくるんです。難しいですよね(笑)。だから、こういうことは解説者任せにして、『速いなぁ』くらい、単純に観た方が楽しめると思います。技術的にはF1以上に熱効率の良いエンジンは地球上になくて、車体重量が700kgくらいで900馬力以上ある、すごい車なんだということは知っておくと良いかもしれませんね」

――その他に、初心者が知っておくと良いことはありますか?

「レースに関していえば、今年はタイヤのルールが変わったので、競り合っている場合は先にピットインした方が有利です。それから、中継カメラがピットのガレージ内でセレブとかきれいなお姉さんを写すことが多いんですが、あれはドライバーの彼女だということを覚えておいてください(笑)。あれ、撮りすぎですよね(笑)。いつも『これ、いらないんじゃないかな?』って思うんですよ(笑)。あとは、ひょっとしたらF1が今の形で走る最後のシーズンになるかもしれないということですね。来年から車体にコックピットを保護するハロやキャノピーを付ける可能性が高いので、今のうちに観ておいた方が良いのかなと思います」

――最後に、あらためて2016年シーズンに対して期待を込めたメッセージをお願いします。

「個人的には『赤い車がんばれ!』なんですが(笑)、今年はハミルトンとロズベルグの対決、メルセデス、フェラーリ、ウィリアムズの対決が去年以上に熾烈になると思いますし、2シーズン目を迎えるマクラーレン・ホンダがどこまで順位を伸ばせるのかにも注目です。そして、レギュレーションの変更で上位チームと下位チームの差が縮まり、タイヤの使い方に関する戦略性も加わったので、去年以上に白熱したレースが増えるんじゃないかと期待しています」

撮影:渡部孝弘
取材・文:小林 聖

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フジテレビNEXTでは今年も、フリー走行から公式予選、決勝まで全セッションを完全生中継でお届け!2016年のF1グランプリは、F1史上最大の全21戦のカレンダーとなる予定(※2016年1月18日現在)だ。2年連続のドライバーズチャンピオンのハミルトンとロズベルグを擁するメルセデスが盤石の強さを見せるのか、また2年目のマクラーレン・ホンダの躍進が見られるのか。2016年も見逃せない。

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