スペシャルインタビュー 北野武 第2弾

舞台挨拶レポート[1]

映画「龍三と七人の子分たち」が4月25日に劇場公開初日を迎え、
都内映画館で初日舞台挨拶が行なわれた。

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壇上には、北野武監督をはじめ、藤竜也、近藤正臣、中尾彬、安田顕が登壇。
映画を鑑賞した観客の大きな拍手を浴びた。

サングラスをかけて登場した"龍三親分"こと、藤は、劇中のイメージに合わせてサングラスをかけて登場。「特に目が悪くなった訳ではないので、この映画の気分で出てきました」とサングラスを外すと、その渋いしぐさに会場から拍手が上がった。

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「映画は見られてナンボ。こうして満席のお客様の前でご挨拶をするのは大変幸せでございます」と、感謝を述べ「お客様が入れば、俳優にボーナスが出るかもしれませんので、ぜひお仲間にも推薦を」と会場を笑わせながら作品をアピールした。

撮影から公開までは1年あったので「来年の公開まで頑張ろうな、とお互い言い合いました」と藤が話すと、「ほんとですよ。生きてますよ」と近藤も同調。とはいえ、近藤は「俺は自信があったよ。平均年齢72歳? そりゃ1年前だろ。もう俺らも平均73歳になってらぁな」と、笑い飛ばした。

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映画はそんなジジイたちが大暴れするコミカルなエンタテインメント作品。今は寂しく隠居生活を送る元ヤクザが、再び組を立ち上げてガキどもと対決していくというストーリーだ。

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インタビュー

以前、北野監督はインタビューで「ギャング映画のほうが楽なんだよ。笑いのほうでセンスないとか言われたくないし(笑)。笑いをやるほうが断然難しい」と、はにかみながら話したが、真剣なまなざしは笑いを撮ることの難しさを訴える。
近年では、「アウトレイジ」シリーズ2作のヒットも記憶に新しく、バイオレンスな作風のイメージが強い。今回の映画は、いわばその真逆にあるコメディ系の作品だ。

"監督"としての北野武は、平成元年に公開した「その男、凶暴につき」が処女作。深作欣二監督の降板により、急遽メガホンを握ることになったのが始まりだ。
その後、平成の歩みとともに「HANA-BI」や「菊次郎の夏」など、話題作やヒット作を連発。カンヌ国際映画祭やベネチア国際映画祭など国内のみならず海外でも高い評価を集め、「世界のキタノ」として活躍し続けている。アート系から娯楽作品まで、その懐は実に広い。

「振り子の玉を高く上げて手を離したらゼロで止まるなんてことはありえないわけで、反対側も同じくらいの高さまで上がる。同じように、暴力だけってことはあり得なくて、お笑いだとか、愛だとかに行くに決まってる。何かに偏って振りあがれば、同じくらい別の方向にも振りあがるもんなんだよ。位置エネルギーの問題って考えれば、暴力映画が好きなら、お笑い映画も好きなのはあたりまえ」と、その多彩な振れ幅を北野監督は事も無げに話す。

振れ幅で言えば北野作品には、「座頭市」のような大衆向けの作品以外にも、「TAKESHI'S」や「監督・ばんざい!」など"これがそのままキタノの頭の中"と言わんばかりの、ともすれば難解な映画もある。

そんな中で今回の映画は、北野監督が以前に手がけた短編小説が基となっているがストーリーは非常に分かりやすい。「映画ってのは、絶対にベタなほうがウケる。だから今回は、編集で役者のセリフを漫才の間にして、きっちり作り込んだ。でもベタをやっているからって"映画で新しいことやってない"って言われるのも腹立たしいだろ? そういう意味では、ベテランの役者さんたちの起用も正解だったし、ギャグもうまくいったと思うよ」

しかし、"分かりやすいコメディ"で終わらせてないのが北野監督の手腕だ。ひとしきり笑ったあとの、ひと匙のせつなさ。時代に取り残されながらも立ち上がろうとするジジイの姿は、笑えてくると同時に昭和に置き忘れそうになっているものを尊ぶような寂寥感と哀愁が感じられる。だが、その思いに浸り切る前に、次の笑いがやってくる。

「シリアスな場面にこそ、笑いは顔を出す。お葬式や結婚式みたいに絶対笑っちゃいけない場面で、悪魔のように滑り込んでくるのが"笑い"なんだよ。不謹慎な場面にこそ、悪魔のように笑いは貼り付いて来る。そういう意味じゃ、お笑いもヘタすると"暴力"。妙な生き物だね、お笑いってのは」。ニヤリと笑ったその表情に、作品への自信を覗かせた。

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舞台挨拶レポート[2]

そんな北野監督ならではのセンスが光る本作の撮影現場は和気藹々としたもので「藤くんとか近ちゃんは昔から知ってるから昔話しかしなくってね。あとは……、年金の話とか、病気の話とか、そんなのばっかりだったねぇ」と、舞台挨拶で中尾は振り返った。
すると近藤は「芝居の話なんて一切しない。だって、監督も出てこないんだもの」と、撮影中にほとんど北野監督と顔を合わさなかったことを明かした。

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北野監督は別室のモニターをチェックするのみで俳優への指示はスタッフを通じて行なうので、ほぼ撮影中に俳優と顔を合わせないという。「ベテランの役者ばかりなので、私が演技をつける必要もない。端っこでモニターを見てれば十分」と話して、会場を驚かせた。
中尾は「だって、用意スタートも無いんだよ? カットもOKも言わない」と、監督に視線を送りながらも「(北野監督には)感謝している。今、ジジイには演技の仕事がなかなか無いからね」と感謝を述べた。 近藤も「俺は嬉しかったね。1人ジジイ役で出る、これじゃ嬉しくもなんともない。ジジイばっかりがズラリと並ぶ映画なんて、この時期、こんなにジジイを大切にしてくれるのかと」と喜びをあらわにコメントした。

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ジジイたちの相手となる暴走族上がりのボスを演じた安田は、そんなベテランたちの話を聞きながら頷くばかり。MCに話を振られてやっと「今は、借りてきたなんとやらの状態です。大先輩を横にしていると、なかなか言葉も出てこないもの」と緊張しきり。 ジジイのお手本を横に、どんなジジイになりたいかと質問され「今、不摂生していますので"健康のためなら死んでもいい"くらい、健康を気遣うジジイになれれば」と控えめに答えた。

北野監督は「この映画の台本自体はかなり前、漫談をやってたころに"若い暴走族よりも老人の暴走族が居たら本当に怖い"、警察の説得を一切聞かずに、おまえたちには未来がある!、ねぇよバカヤロウっていうようなネタをやっていて、やっと実現するようになった」と、本作の経緯を明かした。
劇中には藤がハイヒールを履いて走り「足を挫きかねない、今思えば危険でしたね(藤)」と語ったシーンなど、これまでに観たことのない俳優陣の演技も見られる。
北野監督は最後に、「日本の俳優は上手いです。普段はこんな笑いをとる人じゃないのに、こんなに笑いの取れる演技ができるのはたいしたもの。本当に感謝しています、ありがとうございました」と、俳優への感謝と、観客への感謝を述べて、舞台挨拶を終えた。

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撮影:渡部孝弘<北野武>、中川有紀子<舞台挨拶>
取材・文:宮崎新之

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映画情報

北野武監督作品
「龍三と七人の子分たち」

4月25日(土)全国公開

STORY

70歳の高橋龍三は、かつて“鬼の龍三”と畏れ慕われた元ヤクザ。だが、現在は息子家族にも邪険にされ社会からも相手にされず、世知辛い世の中を嘆くばかりだった。そんなある日、オレオレ詐欺に引っかかり詐欺集団・京浜連合と因縁めいた関係になった龍三は、勢いで昔の仲間を集めて「一龍会」を立ち上げる。

監督・脚本・編集:北野 武
音楽:鈴木慶一
出演:藤竜也、近藤正臣、中尾 彬、品川 徹、樋浦 勉、伊藤幸純、吉澤 健、小野寺昭、他
配給:ワーナー・ブラザース映画、オフィス北野
公式サイト://www.ryuzo7.jp/
龍三と七人の子分たち

©2015「龍三と七人の子分たち」製作委員会

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