久保田利伸 J:COMスペシャルフォト・インタビュー

2016年にデビュー30周年を迎えた久保田利伸が、アニバーサリーイヤーに相応しいメモリアルなベストアルバム「THE BADDEST ~Collaboration~」をリリース。KREVA、MISIA、EXILE ATSUSHI、JUJU、小泉今日子らのほか、海外アーティストなど豪華な面々とのコラボレーションナンバー全30曲が収録されている。日本におけるブラックミュージックのパイオニアとして常に第一線で活躍し続けてきた男は、30年の節目に何を思うのか。

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12月2日(金) 0:00~0:30 他

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「コラボレーション相手の存在が際立っているから、時代感なんかはもう飛び越えてしまっている」

―まずは30周年おめでとうございます。今回はこれまでのコラボレーション曲を集めた"THE BADDESTアルバム"ですが、改めてまとめて振り返ってみた印象はいかがですか?

「ありがとうございます。実際にまとめて並べて聴いてみると、それぞれの相手が特別な人ばかりだなと思いました。日米ともに適当にコラボレーションしているわけではなくて、考えてお願いしている人たちばかり。改めて並べてみていると、そういう気がしますね」

――1曲1曲を聞いてみるとその時々の時代の匂いもあるんですが、トータルで聞いてみると時代の新旧があまり感じられず、むしろ新鮮な印象もありました。

「時代感の古い新しいが関係ない、というのは僕も同じように感じていまして。割とその時代時代で音づくりにこだわってやっているので、普通のベスト盤だと時代の差は出てしまうものなんですね。でもコラボレーションの場合には、時代時代の音の違いはもちろんあるんですが、そこに登場するコラボレーション相手の存在が強く際立っているので、時代感なんかはもう飛び越えちゃってるんじゃないですかね。好きなことばかりやっているからでしょうね。あと、自分の好きなもの、影響を与えてくれたものっていうのはブレないであるので、それに基づいた曲たちだから、時代が離れた曲でもつながりがいいのかも知れません」

――コラボレーションの相手は、日米問わず錚々たる面々がそろっています。何かコラボするにあたって決め手はあるんですか?

「基本的にはその時に気の合いそうな人。同じような音楽の価値観を持っているような人を、その時々で選んでいます。とはいえ、例えば10年前にコラボレーションした相手がその時だけで終わっているかというと、そうじゃない。そこから付き合いが始まって、その後にまた出会ったり、音楽の話を語り合ったりするような人ばかりなので、コラボレーションは基本的に気の合う人がひとりずつ増えていくような感じですね。でも『いつでもコラボレーションしたい』っていう気持ちでもない。例えば、今年のコラボレーションは誰にしようか、とか、今年は何人とコラボしようとか、そういうのは一切無いんです。何にもしない数年もあるし、たまたま数年後にコイツと今やりたいなぁ、と思うこともあったり。何かしら、今だ、っていう必然的な理由でやっていますね」

――コラボレーションの時は、ご自身だけの曲の時とはやはり作り方も違いますか?

「自分だけで作るときは完成予想図があって、そこに近づけようというだけ。ですがコラボレーションは相手のあることなので、実際にやってみないと何が起こるかわからない。なので、最終的にフレキシブルにいくように、事前に作りすぎないようにしています。当たり前ですけど、相手は僕じゃないのでそれぞれ違う個性とスタイルがあるじゃないですか。それを殺したくない。"僕の個性にお付き合いしてくれる"っていうだけの人は誰も選んでないんです。何らかの理由でリスペクトしているから、そこは個性が目いっぱい出るように、ちょっと、少しプロデューサー気質が出てきちゃう。相手には最高の気分でやってほしいんですよ。相手が冷めた気持ちでやっているのか、あっという間に過ぎてしまうような時間の中でやれたのか、音楽なのでその気持ちが曲に出てしまうから。相手が最高の気分でやってくれていたら僕もそうなりますから、やっぱりいい相乗効果になりますよね」

――今回、初めて収録される曲が2曲あります。まずはAIさんとのコラボ曲ですが、なぜ彼女だったのでしょうか。

「記念の年なのでめでたいコラボレーションがしたくなって。どこまでも前向きなエネルギーとチャラい意味じゃない"お祭り感"はAIだけが持っているものなので、これは絶対にAIがいいなと思いました。例えば、これまで僕が誰ともコラボレーションしたことがなくて、この中から誰か1人を選んで30周年のコラボレーションをする、ってなったとしても、絶対にAIを選ぶでしょうし、お話を持って行ったときも『このタイミングでありがとうございます。全力を尽くします』と言ってくれて。曲を仕上げるまでの工程で何度も会ったりしたんですが、ずーっと変わらず、陰陽の陽のバイブスばかり出していました。たまたま家が近所で行きつけのカフェもたまたま一緒だったので、まず歌詞をどういう感じにしようかって打ち合わせを、そのカフェのオープンテラスでランチタイムにやりました。なので、開放感のある歌詞になったかも(笑)。今回、彼女のパートには歌っているところとラップっぽいところとがあって、非常にはじけやすい。ラップに関しては、AIは女性で日本一です。昔に聴いたとき、勢いも含めて上手いなぁと思っていて、今回は華のあるめでたい楽曲にしたかったので、ラップの勢いのある感じもいいなと。AIがラップでコラボレーションすることって、最近はやっていなかったですから」

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12月10日(土) 22:30~23:00 他

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「デビュー当時は、先のことを考えてもせいぜい次のアルバムのことくらいまでだった」

――確かに、AIさんのテクニック的な上手さはもちろん、明るいキャラクターが存分に出ていて、気持ちが弾む楽曲になっていました。そしてもう1曲のニューナンバーは海外アーティストMusiq Soulchildとのコラボレーションです。こちらは選曲にもこだわりを感じました。

「Musiq Soulchildという人は、ここ30年くらいのR&Bの歴史の中で僕的には一番うまいんですよ。ただでさえ、ソウルシンガーは歌がうまいんですけど、その中で一番。そういう歌の上手さと味がウリなので、彼のいいところを存分に出してほしかった。そうなると、メロディのしっかりした、シンプルなオケの歌ということになるんですね。僕もそういう曲が好きですし。オリジナルでそういう曲を作るのもいいんですが、オリジナルのスロウの曲を作って僕とMusiq Soulchildが素敵なR&Bを歌う、っていう程度じゃなく、もっとグッといきたいなと。そうなると、意味のある曲というか、特別な曲が必要なんです。今回、歌った坂本九さんの『上を向いて歩こう』という曲は、日本で唯一、あの当時にアメリカ人が全員知っているというような大ヒット曲です。それだけでも意味があるんですが、ソウルR&Bシンガーの間では、世代を超えてあの曲はとても有名なんですね。35年くらい前にA Taste of Honeyが『SUKIYAKI』というタイトルでカバーしていて、黒人たちの間ではよく知られている曲で歌いなれているんですね。なので今回、頼むときも『SUKIYAKIやりたいんだけど』って伝えたら『OK!』って即、話が通じました。今回はさらにシンプルに、ロマンチックに、現在のR&Bのスタイルの仕上げになっていて、ここ1~2年くらい、ああいう音づくりが好きなんです。『SUKIYAKI』を借りて、それをやってみようと思いました」

――日本人にとってはなじみ深いメロディですが、こんなにロマンチックな楽曲になるのかと驚かされました。ところでデビュー当時は、30年後の今の自分のビジョンは想像していましたか?

「まったく考えてなかったです。ゼロですね(笑)。デビューしたのは10代ではなく23歳とかそれくらい。デビュー前にソングライターとして楽曲提供をしていた期間が1年くらいあるんですが、もちろんずっとソングライターでやっていきたかったわけではなくて。自分で歌うことも予定はされていたんですが、それを待っている期間でした。今考えれば、待っていた1~2年なんて大した期間ではないんですが、20歳そこらの1~2年は長い。やっとデビュー出来て、それだけで嬉しくて。今やっていることにいっぱいいっぱいで、その先のことは全然考えていなかった。アルバムをたくさん出せればいいな、とかは考えていましたけど…。たくさん、というより次のアルバムが出せればって感じですかね。3枚、4枚、10枚なんてイメージはなかったです。せいぜい、次のアルバムくらいまでの範囲でしたね」

――それがもう少し長いビジョンで考えられるようになったのはいつごろでしょうか。

「2枚、3枚とアルバムを出せて行って、周りの身内が『10年くらいやれそうだね』っていう感じになってきて。レビューを書いてくださる方たちも、割と長い目でみているような書き方をしてくれるようになった。それで、続けられるようになったのかなと思うようになりました。3枚くらい作っていくと、音楽の作り方がわかってくる。そうすると、この曲は今じゃなくて次のアルバムに入れたら目立つかな、みたいなビジョンで考えられるようになりました。5年目くらいからニューヨークを行き来するようになって、そのあとニューヨークに体を持って行くんですが、その時も、今日明日じゃなくて、ちょっと長めのビジョンでアメリカ発で何か作りたいと考えられるようになっていましたね」

――ニューヨークでの音作りはやはり違いましたか?

「昔であれば、日本とアメリカの作り方でクオリティが違ったんですけど、今はほとんど同じです。機材やコンピューター文化を通じたものがあるので。でも、振り返れば"人"が理由として大きいですね。それは音を作る、実際に演奏する人たちだけじゃなくて、スタジオのいちエンジニアがとてもアーティスティックで、意見や感想を言ってくれることもあるんですよ。日本だとみんなで相談して意見をまとめる形なんですが、アメリカだと、真ん中に立っているアーティストがしっかりとした考えをもって、その考えを基にしっかり主張をしないと何も始まらない。演奏しに来る人、コラボレーションする人も、それぞれが意識することなく、自分のキャラを普通に持っている。発言や気持ちや態度がはっきりしていて、それは日本と大きな違いがあるなと。自分で主張する、意見を持つ、イコール自分が責任を持つことなんですね。うまくいくもいかないも。楽しいんですが、より気合の入ったものになりますよね、自然と。出来上がる音も、気合の度数で行くと1~2段階上になっちゃうっていうことは、当時あったんじゃないかな」

「割と自分勝手にやってきたけどこれからは後輩たちに経験を伝えられたら」

――今でこそ、R&Bやソウルなどのブラックなシンガーは日本人でも増えてきましたが、デビュー当時にはほぼいませんでした。そういう意味では、孤独感もあったんじゃないかと思うのですが。

「…そうですね、孤独でした。話が通じにくいんですよ。ミュージシャン同士でも話が通じる人がものすごく少なかったし、人とお話しする現場でも、言葉を選ばないとなかなか会話にならない。特に、ソウルとかR&Bとかの話になっていけばいくほど。日本ではそんな孤独感があったんですが、ニューヨークに行くと逆にそういう話や環境はどっさりある。でも、逆にひとりぼっちの日本人になる。R&Bの本場にきて、意気揚々とよりR&Bのサウンドと、R&B歌い、というのを意識しながらやりたいのに、ミュージックビジネスとしては、日本人、アジア人なんだからそれを個性にしようと言われてしまうんですね。言われてることはわかるんですが、ちっちゃい頃からのあこがれ、夢でそのまま来ちゃった人にとっては、本場のR&Bがやれるんだから、本場らしいことをやりたいって葛藤する。そうすると、自分のスタイルって何だろうって、迷っちゃいましたね」

――その迷いの“答え”はどのようなものだったんでしょうか。

「3年くらい迷いましたね。最終的な答えは、アメリカで育まれたR&Bスタイルが色濃く出ようが、日本で生まれ育った血がアメリカから見てポップスが強く出ようが、真ん中にある歌が気持ちよく歌えていれば、それでいいな、と。アメリカっぽくやる、日本っぽくやるっていうことも、僕が好きだったらなんでもいいやと。そうなってくると、ある種の自信というか、強い歌を歌いたくなる。黒いものばっかり聞いて育っているので、結局僕は、そういうものに影響された歌い方をしているんですけど、そもそも小さいころから音楽が好きで、歌っていると気持ちよくて、っていうことが、ビジネスになってくると忘れちゃうんですよ。何よりも音楽が好きで、支えられながら今の自分があると思うと、より素直に歌を歌っていかないと。そういう意味で、いろいろといっぱい考えました(笑)」

――久保田さんの歌を初めて聞いたとき、日本語でもブラックミュージックのメロディにこんなに自然に乗せられるんだと驚かされたのを思い出します。小さいころから歌や音楽はお好きだったんですか?

「今の音楽スタイルにつながるのは、中学1年生のときにラジオのスイッチを入れて、そこに急にソウルミュージックが流れたんです。黒い肌の人は、歌がうまいや!って思いました。そのさらに前だと……幼稚園の遠足で、バスガイドさんから『歌うまいね』ってほめてもらったりして。それが目覚めでしょうね(笑)」

――幼いころから歌を愛してこられた久保田さんですが、これから先、シンガーとしてどんなふうに活動していきたいですか?

「正直に言ってしまうと、この先の大きな目論見みたいなことは全く考えていないんです。ただ、この30年のタイミングで音楽と自分を振り返ることができました。31年目から先、あと何年続けるのかもわからないですが、一番でかいのは、こんなに好き勝手やってきて、30年変わらないスタイルでやれたことが、本当にラッキーでありがたいこと。なので31年目からは…感謝。感謝の気持ちががすごく出ると思います」

――前回のオリジナルアルバムの時にも感謝のお気持ちは強く表現されていました。

「そうなんです。今までもそうですが、一曲一曲、より意味を感じながら作っていくというか。ありがたみを感じながらね。あと、先ほど割と自分勝手にやってきたといいましたが、キャリアも10年、20年、30年と続けてくると後輩ができてきたりとか、特にこの音楽のジャンルでは、みんなに頼られたりすることもあるんです。でも、コラボレーションとして人と交わったりしてきたこと以外、それにあんまりお応えしてこなかったと言うか。人に経験を語って指導するとか、相談にのるとか、あんまりしてこなかったんですよ。遅いんですが(笑)、そろそろ自分を慕ってくれたりとか、迷ってるやつとか、そういう人のお手本になるような生き方をしようかと。そういうことを頭におきながら日々の言動と行動に気を付けないと、ね(笑)」

撮影:渡部孝弘
取材・文:宮崎新之

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初のコラボレーション・ベストアルバム

アルバム『THE BADDEST~Collaboration~』

2016年11月23日(水)発売

INFORMATION

デビュー30周年を迎えた久保田利伸が、選りすぐりの全30曲を収録した、初のコラボレーション・ベストアルバムをリリース。「日本語歌詞編」と「英語歌詞編」からなる、アルバムは、KREVA、MISIA、EXILE ATSUSHI、JUJU、小泉今日子などの国内アーティストをはじめ、海外からは、The Roots、Mos Def、Raphael Saadiq (Tony Toni Tone)、Nile Rodgers、Caron Wheelerらが参加。また、Soul Flower、AIとコラボした新曲「Soul 2 Soul feat. AI」や、Musiq Soulchildとの「SUKIYAKI ~Ue wo muite arukou~」なども収録。

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