森川智之 J:COMスペシャルフォト・インタビュー

人気声優にスポットを当てたムービープラスの特別企画「吹替王国」第8弾に森川智之が登場!実はオファーがくるかも知れないと思っていたんです(笑)、とチャーミングに心境を明かし始めた森川。テレビで吹き替え放送が始まった60年前に思いを馳せながら、現在、トム・クルーズやブラッド・ピット、キアヌ・リーヴスなど名立たるトップスターの声をどのような思いを込めて表現しているのか、じっくりと語る。

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「みなさんの期待を裏切るような役は楽しい」

―『吹替王国』出演のオファーがきたときの感想からお願いいたします。

「『吹替王国』のオファーがきたときは“うわっ、ついにきたか!”って思いましたね(笑)。というのは、以前、『吹替王国』のCMに出ていた小山力也さんがアツく語っている姿を見て、こんな番組があるんだなぁと知っていたんですよ。もしかしたら、そのうち僕のところにもオファーがくるかもしれないから覚悟しておかないといけないなって。だから実際にオファーがきたときは、うれしさ反面、僕は小山さんほどはじけられないと不安に感じました。ただ、これまで特集された方を見ると、ベテランの方たちも多いので、その中で僕が招かれたことは本当に光栄なことだと思います」

――CMのナレーション収録では「ミッション:インポッシブル」シリーズのテーマソングを歌ったとか?

「曲に歌詞はついてないんですけどね(笑)。このようなことは初めてだったので、トム・クルーズがこのCMを見て怒らないことを願っています(笑)」

――声優としてとても幅広い演技を見せる森川さんですが、演じていて楽しいのはどんなキャラクターですか?

「みなさんの期待を裏切るような役ですね。アニメだと『トリコ』の次郎や『しろくまカフェ』ではパンダママってお母さんの役も演じましたから。最近ではテレビドラマシリーズの『ゲーム・オブ・スローンズ』という作品で、ティリオンという役を演じたんですけど、キャスティングされたときは“この役がキャスティングされたのか!”って思ったんです。でも、驚きと同時にふつふつとやりがいが出てきて“よし、やってやろう!”って。キャスティングしてくれた方も僕に遊ばせてくれる余裕をみせてくれたというか。そういうところに吹き替えの面白さがあるのかなって思いますね。自分が担当している俳優さん以外にも、これからは自分では想像もできないような新たな役にチャレンジしていきたいです」

――森川さんはこれまで数多くの吹き替えをしてきましたが、どのように声を使いわけているのでしょうか?

「吹き替えって大きく2つに分かれると思うんです。ひとつは、同じしゃべり方を通す人。そういう方もたくさんいらっしゃいますが、僕はいろいろな声に化けられるほうがいいかなって。だから基本的に声色を作るって作業はしません。基本的には台本を読んで、作品を観て、その俳優さんがゼロベースから作り上げた役作りを一緒にたどっていく感じ。そこで出た声が、その役の声だと思っているんで。だから、この声色にしようっていうのはないんです。聞き比べたら同じ音色かもしれませんが、映像と合わせてみたとき違う人がしゃべっているようにしたいんです。声色を使い分けていたら、パターンが決まってしまうし、引き出しも足りなくなっちゃうような気がして。それよりは毎回、キャラクターの内面から声を作っていけば、被ることは絶対にありませんからね」

――吹き替えをしていて難しいと感じるときは、どのようなときでしょうか?

「やっぱり僕らの仕事って声だけなので、サービスし過ぎちゃうことがあるんです。特に声優さんって、みなさん声が大きいので声を張りすぎちゃったり。でも実際は力を抜いて、少しひいた芝居が必要なことも多くて。昔はゴールデンで映画を放送する場合、お茶の間でお母さんは洗い物をしていたり、お父さんは寝転がって、子供がワーワー言っていたりするので、セリフがはっきり聞こえないとダメだったんです。でも、今は変わりましたね。例えばトム・クルーズは、ディレクターに“そんなに声を張らないで”って注意されたこともありました。ブラッド・ピットは心情心理を体で表現するので、激情系でしたし。ユアン・マクレガーはイギリスの俳優で正統派。どちらかというと、声は張っていますが、あまり吹き替え調にならないように。コリン・ファレルは肉体派で、ごりごりのハリウッド・スターというイメージで演じてますね」

――では「ミッション:インポッシブル」シリーズのイーサン・ハント(トム・クルーズ)は実際に声を作るとき、どのようなキャラクターとしてとらえていますか?

「やっぱり1作目のときのイーサンがベースになっています。1作目での彼は、我が強くてパワフルでチームプレイを軽視しているところがあって。それがシリーズを重ねるごとにキャリアも積んで成長していくじゃないですか。でも、根本にあるのは1作目のイーサン。だからこそ『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』では、チームプレイを飛び越えて突っ走って我を忘れちゃうイーサンがいたりしたんだと思います」

――声に感情を乗せるときに気を付けていることってあるんですか?

「決して断片的にはならないよう、全体の流れに合わせて声を乗せることを心がけています。最初のオープニングから、エンディングテロップが流れるまでがひとつの作品。その中で、どんな役でもひとつの線にしなくちゃならないんです。自分が出ているシーンだけを考えて演じることはありません。そういう意味では映画監督さんの感覚に似ているかも。僕は役をもらったとき、その役が作品の中で何のためにあるのか。そしてそれを表現するために、自分はどういう歯車のひとつになればいいのかを考えます」

――ほかにも吹き替えをするとき、心がけていることはありますか?

「世界のトップスターの方たちの吹き替えをやらせていただいていると、彼らはもはや役者として“いい芝居をしてるな”って次元ではないんですよ。しゃべらなくても説得力のある方たちばかり。そこに言葉を乗せたときに負けちゃいけないとは思いますね。トム・クルーズの場合、飛んでいる飛行機の屋根に乗ってることもあるじゃないですか。それを体現できるのか?って聞かれれば無理ですとしか言いようがありません。水に潜って息継ぎをしないで撮影をしたって聞くと、その気概にはホレちゃいますね(笑)」

――そんな撮影の裏話を聞いて、そこに近づけようって努力することは?

「トムのように飛行機に飛び乗ることはできませんが、何分も水に潜るため、特別な呼吸法を身につけたという話を聞いたんです。だから、お風呂に入って洗面器に顔をつけてみたんですけど、同じ気持ちにはなれませんでした(笑)。それだけで苦しくなっちゃったんで(笑)。そういうスゴさを聞くと頭が下がるばかり。特にトムはスクリーンに出ているまま紳士だったりするんで。翻訳家の戸田奈津子さんの誕生日に花を贈っているというエピソードを聞いて、そういう気の使い方もカッコイイなと思います」

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「スポットライトを浴びることもある職業ですがすべては諸先輩方が築き上げてきたものがあるおかげです」

――吹き替え声優として大切にしていることは?

「バラエティー番組にも出演させていただいていますが、本業の声優がやれているからこそ、できるんだって初心は忘れないようにしています。それと声優は今、タレント的に扱われたり、歌を歌わせてもらったり、スポットライトを浴びることも多い職業。でも、すべては諸先輩方が今まで築き上げてきたものがあるおかげなんですよね。一概に自分たちが頑張っているからだけではなく、テレビで吹き替え放送が始まった60年前から脈々と声優という仕事が積み重なって、今の状態にあるんじゃないかって。それを忘れると一瞬で、今まで築き上げたものはなくなっちゃうんじゃないでしょうか。だから声優という仕事に誇りを持ち、これからの時代を担う声優さんたちにバトンタッチしていきたいと思います」

――吹き替えをしたとき、日本人とは違って大げさな話し方をするときもあると思います。そこで戸惑ったりすることはありますか?

「僕は逆にワクワクします。洋画では、やたら“クソ!”といったりしますよね。日本の実生活ではそんな言葉づかいをすることはほとんどありません。でも、それがハマったとき、吹き替えならではの面白さと文化があるのかなって。今年は吹き替え60周年。諸先輩方が培ってきた吹き替え文化ならではの魅力がDNAとして僕にも受け継がれていると思うと、その心は大切にしていきたいなって思います」

――同じ役者が違う役を演じたとき、前の役にひっぱられることはありますか?

「それはないですね。以前、『コラテラル』という映画でトム・クルーズが主演だったんですが、オーディションを受けたことがあります。今までトムを演じてきたのに、なんでオーディションするのか?って聞いたら“今回のトム・クルーズは殺人鬼の役だから一応、オーディションを受けてください”と言われて。『宇宙戦争』のときもダメ親父の役柄だったんで、オーディションを受けました。でも、僕はゼロベースから声を作っていくので、結局、僕になっちゃったんですけどね。まぁ、ただの自慢です(笑)」

――その役作りには、どのぐらい時間をかけているんですか?

「いやぁ、それは企業秘密です(笑)。冗談はさておき、作品によって違います。心情心理が難しいものもあるし、逆にフランクに観られるラブストーリーでしたら、リハーサル準備が早いものもあります。鬼才と呼ばれた(スタンリー・)キューブリックの作品を1回観ただけで、できたって言っても嘘になっちゃうじゃないですか。だから作品によっては10時間以上かけることもありますし、下手をすると寝ないで、そのまま収録の現場に行くこともあります」

――そのとき役はがっちりと作っていくんですか?

「ある程度、役を作り込んで、それを演出家さんにジャッジしてもらってる感じですね。そこで軌道修正してもらったり、周りとバランスを取ったり。“いや、違います。この役はこうなんです”って自分の意見を押し通しちゃうとイタい声優さんになっちゃうんで(笑)。自分がスタジオに行くときは、かなりニュートラルな状態ともいえるかもしれません」

「昔のような吹き替えもやれたらなって思います」

――最近では劇場で日本語吹替版を上映することも多くなっていますが…。

「アメリカと日本で公開日にあまり差がなかったりすると、声を入れるときの映像がファイナルバージョンじゃないときもあるんですよ。そういうときは、まだ代役の人がしゃべっていたり、CGができていなくて、ブルーバックの映像ということもあります」

――ちなみに昔の吹き替えは今と傾向が違うこともあるんですか?

「昔、広川太一郎さんは、役者さんが口を閉じているのにしゃべっていることもありました(笑)。広川さんとはいくつかの作品でご一緒させていただいたことがあって。最後の作品がロバート・レッドフォードとブラッド・ピットが共演した『スパイ・ゲーム』。シリアスな作品なのに広川さんの台本にはダジャレがいくつか書いてあって。それを見たとき、うわぁ、スゴイなぁって思いました。僕らの世代はそういった諸先輩方の作品を観て育っているんですよ。でも、いざ自分がこの世界に身を置いたときは吹き替えの時流が原音に近いリアルなものに代わってきて。でも、昔のような吹き替えもやれたらなって思いますね」

――アニメ作品でも活躍されていますが、吹き替えとアニメのアフレコはやはり違うものですか?

「極論を言えば、吹き替えは出来上がった作品に声を当てる作業で、アニメはゼロから作っていくもの。だから吹き替えでは出来上がった作品に、どうすれば声だけで体現できるか。吹き替えされてない映画を観たときの感動を、日本語に置き換えても同じように与えられるかって作業なんです。一方、アニメーションの場合は何もないところからキャラクターを作っていくので、必要なのは想像力。あと、平面的な絵に実生活と同じリアルな言葉でしゃべっても、ときには溝が深まってしまう場合があります。説得力を出すために少しデフォルメしたお芝居をすると、うまくキャラクターに声が乗ったりするときもあって。実写では眉間にちょっとシワが寄ると、この人は腹にいち物あるキャラクターだとわかったりするじゃないですか。でもアニメではそれができません。だから、余計に想像力をふくらませて演じることが大切なこともありますね」

――元々、森川さんはアニメと映画の吹き替え、どちらを志望されていたんですか?

「僕は声優学校に通っていたんですが、吹き替え志望でした。でも、アニメの声優になりたい人たちがほとんどで、学校では吹き替えの実習をやっていないんです。やらないまま吹き替えの仕事がきたときは、やり方がわからなくて。確か『キャノンボール3 新しき挑戦者たち』って作品で僕はランボールギーニ・カウンタックに乗っているイケメンさんの役だったんですが、吹き替えの練習方法もわからない状態。そこで当時、仲良くしていただいてたマコさん(野沢雅子)の家に台本を持っていって“教えてください”って伺いました。今は亡くなってしまった旦那さんの塚田正昭さんのお2人が“じゃぁ、リハーサルしようか”って言ってくださって練習したことが今でも記憶に残っています」

――最後に『吹替王国』を楽しみにしているファンの方にメッセージを!

「『吹替王国』は吹き替えを楽しんでくださる方たちにとって、とても素敵な企画だと思います。一人の声優さんにスポットを当て、インタビューもあり、その作品を楽しむことができるってスゴイこと。僕らが声優を目指していた時代に、こんな企画があったら良かったのになとも思います。『吹替王国』が続くことによって、もしかしたら吹き替えの中でも脇を固める縁の下の力持ち的な方たちにもスポットライトが当たることがあるかもしれません。ぜひ、『吹替王国』をみなさんで盛り上げていただき、そうなるよう応援してくださると僕もうれしいですね」

Photo=尾崎篤志
Interview=今井敏行

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吹替王国#8 森川智之登場!<ムービープラス>

2016年10月30日(日)16:15~翌1:15
4作品連続放送!

INTRODUCTION

CS映画専門チャンネル「ムービープラス」では、8月から5ヶ月連続で特集をお送りする吹替60周年企画のひとつとして、昨年よりスタートした人気企画「吹替王国」の第8弾を10月に実施。
「吹替王国」とは、もっと吹替で映画を観たい!という視聴者からのリクエストに応えるため、特定の声優にスポットを当て、その声優が吹き替えた作品を集めて特集放送するという人気企画だ。
第8弾は、洋画の吹替のほか、アニメやゲームの分野でも活躍している森川智之をフィーチャー!

吹替王国#8 声優:森川智之
ブラッド・ピット 『ザ・メキシカン』編

ムービープラス 吹替王国特別ページ

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