中村憲剛 J:COMスペシャルフォト・インタビュー

 6月10日に開幕する「UEFA EURO 2016™」は、ヨーロッパのサッカー最強国を決める4年に一度の大会で、世界中から多くの注目を集める。現在のサッカー界の潮流や戦術的なトレンドも大会を通して浮かび上がってくるため、Jリーグでプレーするプロのサッカー選手たちも楽しみにしているという。今回は日本代表として海外の国との対戦経験も豊富で、Jリーガー随一の“海外サッカー通”としても知られる川崎フロンターレの中村憲剛選手に、大会の見どころを聞いた。

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UEFA EURO 2016™ サッカー欧州選手権 開幕戦 フランスvsルーマニア

「UEFA EURO 2016™ サッカー欧州選手権」ベイル(ウェールズ代表)、ノイアー(ドイツ代表) 写真:ロイター/アフロ、C・ロナウド(ポルトガル代表)、イブラヒモヴィッチ(スウェーデン代表)、アザール(ベルギー代表)、イニエスタ(スペイン代表) 写真:アフロ、ポグバ(フランス代表) Getty Images

「現代のサッカーの本流、発信地は欧州」

――6月10日に「UEFA EURO 2016™」が開幕します。日本ではWOWOWにて全試合生放送されますが、中村選手はどのように楽しみますか?

「僕はサッカーをやるのも好きですが、見るのも好きなので、できるだけたくさんの試合を見ようと思っています。時差の関係で日本時間では夜のキックオフになるので生放送でチェックするのは厳しいですが……基本的には録画して多くの試合を見たいと思っています。朝起きて、練習に行く前に1試合くらい見る余裕はあると思うので、まずはそこで1試合、あとは練習から戻ってきてからですかね。できれば全試合見たいくらいです。でも、練習に行くと、チームメートやスタッフから昨晩の結果が漏れ伝わってきてしまうので、そこには最大限気を付けたいと思います(笑)。いまはネットとかでも、気を抜くとうっかり試合結果が分かってしまったりしますが、やっぱり、結果を知らずにワクワクしながら見たい!!」

――過去のEUROもご覧になってきたかと思いますが、印象に残っている大会は?

「最初にリアルタイムで見たのは、1992年スウェーデン大会ですね。ユーゴスラビア代表の代わりに急きょ出場したデンマーク代表が番狂わせで優勝した大会で、自分は小学6年生くらいだったと思います。EUROはそのころから毎大会楽しんで見ています。4年に一度の開催で、W杯とはまた違った魅力がありますよね」

――W杯と違う魅力とは?

「ほかの大陸の国が混じっていないので、すっきりしているというか、スマートというか。試合内容は、南米特有の狡猾さとか、アフリカ特有の身体能力のすごさとか、そういった面白さはあまりないけれど、チームの戦術やベースが一番しっかりとしていて、ラフさがなく、試合も荒れないので、クリーンで見やすいです。コパ・アメリカ(南米選手権)なんかは、球際の戦いとか、どうやって相手の裏をかくか、最初から相手の選手をどうやって一人減らそうかと考えているかのような狡猾さとかがあって、それはそれで面白いんだけど……EUROのほうが戦術的な狙いとかが理論的で面白いですし、いまのサッカーのトレンドも見えてくる。やっぱり、現代のサッカーの本流、発信地は欧州だと思います」

――現代のサッカーの戦術的なトレンドはどういったものでしょうか?

「スペイン代表が2008年のEURO、2010年のW杯、そして2012年のEUROと主要大会を3連覇したことで、ポゼッションサッカーが主流となりました。相手にボールを持たせずに、自分たちがボールを持って試合を支配するという考え方ですよね。そして、ドイツ代表がその流れにフィジカル的な強さや速さを加えて、2014年のW杯を制しました。それを受けて、いまはフィジカル的な要素を重視する傾向が世界的にあると思います」

――それは日本でも同じことが言えますか?

「日本でもそうですね。日本代表監督のハリルホジッチ監督も、デュエル(球際の戦い、1対1の攻防)という言葉をよく使っています。球際の戦いが大事だというのはもともとみんな分かっていることですが、ああいうふうに代表監督が言葉にすることでみんながあらためて意識をするし、Jリーグでもレフェリーは以前よりファウルを取らなくなっている。そういう判定基準は選手にも通達されていますし、試合をやっていてもその変化は感じます。欧州に比べてそのあたりのレベルはまだ低いのが現状かもしれませんが、やろうとしていることは間違っていないと思います」

「個人的に注目している若手選手はハリー・ケイン、マルシャル、そしてダビド・アラバ」

――そうした戦術のトレンドも踏まえて、中村選手が考える今大会の優勝候補はどこでしょうか?

「まずパッと思い浮かぶのが、ドイツとスペインですね。ドイツは言わずもがな、スペインは2014年のW杯はグループステージで敗れてしまいましたが、メンバーを見るとやっぱり強そうです。その2カ国に続く第2勢力、第3勢力としては……開催国のフランス、イングランド、ベルギー、ポルトガル、クロアチアといった国々になると思います」

――特に気になる国はどこですか。

「イングランドが気になります。なぜかというと、若くて勢いのある選手が出てきているんですよ。今季のプレミアリーグで得点王になったハリー・ケインなんかはブレイク候補の一人だと思います。そのほかにもデル・アリ、ラヒーム・スターリング、マーカス・ラッシュフォードなど、若くて有望な選手がたくさんいるので、彼らがこの大舞台でどんな活躍を見せてくれるのか楽しみです」

――さきほど挙げてもらった第2勢力、第3勢力に伝統国のイタリアが入っていませんでしたが…

「今回は厳しいんじゃないかなと思います。登録メンバーの中にビッグネームがあまりにも少なすぎる。ただ、伝統的に、こういうふうに下馬評が低い時のほうがイタリアは奮起したりするんですよね(笑)。最後尾にブッフォンがいるというのはやはり心強いだろうし、アントニオ・コンテも素晴らしい監督なので、実際には大会が始まるまで分かりません。逆にメンバーがそろっていると言われるベルギーなんかはまだまだ経験値という意味では少ないので途中でもろさを見せてしまうかもしれないですし、ドイツなんかも意外と調子が上がっていないのかなという気がします。ゲッツェはバイエルン・ミュンヘンであまり試合に絡めませんでしたし、マルコ・ロイスも負傷でメンバーから外れている。最前線に“大砲”がいないというのも気になるところです」

――個人的に注目している選手は?

「さきほど挙げたイングランドのハリー・ケイン、それからフランスのアントニー・マルシャルも気になる選手の一人です。あとは……オーストリアのダビド・アラバにも注目しています。バイエルン・ミュンヘンでは後ろのポジションを任されることが多いですが、試合を見ていると前に出ていきたそうにしていることが多いんですよね。オーストリア代表では中盤で使われてある程度自由にやれると思うので、どんなプレーを見せてくれるのか。クラブチームと代表チームでこれだけ違う役割を任される選手もいないのではないでしょうか」

――こういった大会で勝ち上がるためのポイントになるのは?

「まずはコンディション。CL決勝まで勝ち上がったチームに所属していた選手なんかは疲れが抜けていないので大変だと思います。それに、優勝を目指す国はコンディションのピークを序盤には持ってこないので、グループの2番手、3番手が初戦にピークを持ってきてジャイアントキリングを起こせればその後の流れも変わってくる。どんなに強いチームでも初戦に負けたらきついですよ。流れが悪くなってしまいますからね」

――今大会はどんな大会になりそうですか?

「スペインが2連覇した過去2大会に比べて、若くていきのいい選手が多くいるというのが大会前の印象です。クリスティアーノ・ロナウドやルーニー、イブラヒモビッチといったビッグネームが軒並み30歳を過ぎて、彼らが活躍した時代から転換するきっかけとなる大会になるかもしれません。のちのビッグネームが出てくるような……そう考えるとやはり今大会は見逃せませんね。それから、優勝候補の国以外にも、必ず面白いサッカーをやる国が出てくるのもこういう大会の魅力です。べた引きで守るのではなく、勇気を持ったサッカーで強豪国にも挑んでいく。最終的には戦力の差で敗れてしまうことが多いのですが、そうしたグッドルーザーを今大会でも見たいですね」

――スタジアムでの生観戦ではなく、TVで見るときにはどんなところに注目したら面白く見ることができますか

「スタジアムにいないと分かりづらいようなことも頭に入れて、イメージしながら試合を見るといいと思います。例えば天気とか気温、芝に水を撒いているかどうかでも全然違ってきます。また、TVのほうが選手の表情やベンチの様子といった細かいところも見ることができますから、先発から外れた選手がどんな表情でベンチに座っているのかとか、そういうところからいろいろと想像を膨らませて試合を見るのも面白いです。解説や実況の方が試合に合わせていろいろな情報を入れてくれるので、スタジアムで見るよりも場合によっては分かりやすいところもあると思います。あとは最初に両チームのフォーメーションを確認したり、前節からのメンバー変更の意図を考えてみたり……僕の試合の見方はかなりマニアックなので、語り始めたらキリがないです(笑)」

――子どもたちにはどんなところに注目して見てほしいですか?

「そこはシンプルに、選手のスーパープレーに注目する。それでいいと思います。そして、自分が感動したプレーを、家の前やサッカースクールの練習で真似をしてみる。僕も小さいころはそうでした。マラドーナの5人抜きドリブルなんかは、ビデオテープが擦り切れるほど見ましたからね。結局真似できませんでしたけど(笑)。でもそうやってスター選手やスーパープレーに憧れることが、サッカーを好きになる一歩、うまくなるための一歩でもあると思うので、まずは難しいことは抜きにして、EUROというサッカーの素晴らしい舞台を楽しんで見てください」

中村憲剛なかむらけんごプロフィール

1980年10月31日生まれ、35歳。東京都出身。小金井第2中→久留米高→中央大を経て、2003年に川崎Fに加入。その後14年に渡って川崎F一筋でプレーしている。日本代表として2010年南アフリカW杯にも出場。

Photo=宇高 尚弘
Text=寺嶋 朋也(エルゴラッソ編集長)

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UEFA EURO 2016™ サッカー欧州選手権<WOWOW>6/10~7/10 WOWOWで全51試合生中継!

INTRODUCTION
UEFA EURO 2016™ サッカー欧州選手権

「UEFA EURO 2016™ サッカー欧州選手権」ベイル(ウェールズ代表)、ノイアー(ドイツ代表) 写真:ロイター/アフロ、C・ロナウド(ポルトガル代表)、イブラヒモヴィッチ(スウェーデン代表)、アザール(ベルギー代表)、イニエスタ(スペイン代表) 写真:アフロ、ポグバ(フランス代表) Getty Images

4年に1度、波乱と革命の31日。

欧州No.1を決めるサッカーの祭典、UEFA EURO 2016™ サッカー欧州選手権が2016年6月10日に幕を上げます。 フランスでの開催となる今大会は、参加国が8か国増え過去最多の24か国が出場。WOWOWでは、開幕戦から決勝まで全51試合を生中継でお届けします。

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