4年に1度、波乱と革命の31日。
欧州No.1を決めるサッカーの祭典、UEFA EURO 2016™ サッカー欧州選手権が2016年6月10日に幕を上げます。 フランスでの開催となる今大会は、参加国が8か国増え過去最多の24か国が出場。WOWOWでは、開幕戦から決勝まで全51試合を生中継でお届けします。
6月10日に開幕した「UEFA EURO 2016™」は、日々熱戦が繰り広げられている。悲喜こもごものグループステージが終わり、ノックアウトステージに突入しているが、ここからがいよいよ大会の“本番”だ。今回は日本代表として他国との対戦経験が豊富で、またヨーロッパでも長きにわたってプレーした横浜F・マリノスの中村俊輔選手に、世界最高峰とも言われるEUROの見どころ、注目国、注目選手を聞いた。
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「UEFA EURO 2016™ サッカー欧州選手権」ベイル(ウェールズ代表)、ノイアー(ドイツ代表) 写真:ロイター/アフロ、C・ロナウド(ポルトガル代表)、イブラヒモヴィッチ(スウェーデン代表)、アザール(ベルギー代表)、イニエスタ(スペイン代表) 写真:アフロ、ポグバ(フランス代表) Getty Images
――中村選手の「UEFA EURO 2016™」の観戦方法を教えていただけますか?
「時差があるので生放送で視聴するのはさすがに難しいけど、時間を見つけて必ず見ます。これはEUROに限らずW杯でもそうだけど、自分はその大会を見始めたら集中的に見ないと気がすまないタイプ。途中で違う大会や試合をなるべく挟みたくない。自分にとってはハイライトで見るのは、ルール違反です。グループリーグから決勝戦まで全試合をしっかり見る。それが自分の観戦スタンスですね」
――インターネット全盛の時代ですし、生放送でなければ結果を知ってしまうと思います。それは観戦のモチベーションに影響しませんか?
「結果はどうしても耳に入ってしまうけど、それはまったく関係ないです。試合の内容と選手のプレーとフォーメーションは結果速報やハイライトでは絶対に分からない。例えば、同じ選手でもクラブと代表でポジションや役割が違ったりする。そういう違いを発見したりするのが最高に楽しい。『違うポジションでプレーしているけど、この選手と組むとクラブの時よりも輝いている』と感じることもある。指導者目線というか、一歩引いたところからイメージして楽しんでいます」
――では、子どもたちの目線になった時、どのような見方をしたらより楽しめると思いますか?
「今の時代、普段から海外リーグを視聴することができます。動画サイトを活用すれば移動中でも世界の最高峰のサッカーが簡単に見られる時代ですよね。だから子どもたちの目も肥えてきていると思います。でも難しく考える必要はなくて、単純にビッグクラブにいる選手が代表のユニフォームを着てプレーする姿を見て楽しんで欲しい。自分が子どものときはオランダ代表のフリット、ライカールト、ファン・バステンのトリオが大好きで、オランダの試合をたくさん見ていた記憶があります」
――中村選手が思うEUROの魅力は何でしょう?
「本当は自分のような立場の人間が何か言うのはおこがましい。すごすぎるから…」
――まさしく世界のトップクラスの戦いというわけですね??
「W杯もそうだけど、EUROとその予選は本気中の本気ですよね。昔は南米とヨーロッパの国はまったく違うサッカーをやっていましたが、今は南米の選手たちの多くがヨーロッパでプレーしているので、だんだんサッカーの質が近づいてきたように感じる。国レベルではブラジルやアルゼンチンも強いけど、リーグ単位だとヨーロッパが最先端。だからEUROはレベルの高いゲームが多くなる」
――南米もヨーロッパから技術や戦術を吸収しているわけですね?
「そう言えるかもしれない。ブラジル代表はどの時代も[4-4-2]が基本フォーメーションだけど、それだけでは世界から置いていかれてしまう。でも逆のことも当てはまって、ヨーロッパサッカーも南米色を採り入れて、個人技のレベルが上がってきている。ドイツ代表やオランダ代表も、最近はいろいろなシステムをうまく活用して戦っている印象があります」
――現代サッカーのトレンドというものはありますか?
「ただボールを持っていればいいわけではないし、ずっと守って堅いサッカーをやっているだけでもファンには受け入れられない。でもバルセロナをベースとするスペイン代表のように『ボールを動かして相手を動かす』というような理念を持っている国は、戦う前から勝ちに一歩近づいていると感じます。それに今は、個の能力が非常に高い。だから細かな戦術はいらない時代になっているのかもしれない。昔で言うとジダンのようなクラスの選手がたくさんいる」
――それは例えば誰のことを指していますか?
「雑誌でフォーカスされるような選手は全員すごい(笑)。ポルトガルのクリスティアーノ・ロナウドはポジションに関係なくとにかく点を取れる。ウェールズのベイルは、ウイングの選手だけどストライカーにもなれる。スウェーデンのイブラヒモビッチは一番前の選手なのに下がった時のプレーもうまい。現代サッカーに合わせた能力を持ちつつ、それぞれが試合を決めるスペシャルな能力も持っています。だからその選手目当てで見るだけで楽しめますよ」
――スペシャルな選手が増えたことで、楽しみが減った部分もあるのでは?
「どの国もスペシャルな選手をどう生かすか必死に考えています。個の力だけで何かを生み出せる能力がある選手を、周りの選手がどうサポートするか。またスペシャルな選手側にも視点を置き『なぜイブラヒモビッチはストライカーなのにこんなに下がった位置でボールを受けるのか』という見方もできる。そこには何か理由や狙いがあるはずだから」
――選手のほかでは、監督を見るという視点もあるのでは?
「もちろんあります。実績のある監督は、常にニーズがあり、いつもビッグクラブや各国の協会が優秀な監督を引き抜き合っている。カリスマ性を持った監督の下に力のある選手が集まった時、短い期間の大会で驚異的なパワーを発揮することがある。選手の能力を生かすためにも威厳のある監督の存在は大きい」
――では、中村選手が気になっている国を教えてください。
「まずは、やっぱりスペインを挙げないわけにはいかない。前回と前々回のチャンピオンチームだし、ほとんど同じ選手で長い時間をかけて作り上げてきたサッカーが今回どこまで通用するのか。全体的に見ると、やっぱりバルセロナというベースがあって[4-3-3]が浸透しているスペインは、チームとして一番出来上がっている印象はあります」
――そのほかでは?
「個人的にはイングランドかな。この国は不思議なチーム。個々に能力があるのは間違いないけど、なぜかチャンピオンになれない。[4-4-2]の伝統的な形を持っているし、若くて能力の高い選手も出てきている。でも勝負の“際”の部分でスマート過ぎてしまうのか、勝ち切れない。そこを打ち破れるかどうか。対照的なのはイタリアで、勝負の“肝”を知っている。内容が悪くてもしっかり守れるし、どの時代も前線に力のあるストライカーがいる。それがイタリアの強さですよね」
――開催国フランスはいかがでしょうか?
「もちろん注目しています。ジダンがいた時代はとにかく強くて、そのあとも素晴らしい選手はたくさんいたけど、あまり勝てていない。この自国開催のEUROをきっかけにもう一度強いフランスが復活するかもしれない。でもドイツも注目ですね。2014年のW杯で優勝して世界の頂点に立ったけど、そのあと横ばいの状態な気がする。クローゼがいなくなって絶対的なストライカーがいないからかもしれない。そこはドイツが勝ち上がれるかどうかのポイントになるのかなと」
――個人レベルで気になるプレーヤーはいますか?
「フランス代表のポグバとグリーズマンですね。特に(アトレティコ・マドリーに所属する)グリーズマンはクラブレベルでも追いかけてきた選手だから、そのシーズンの最後に今度は国を背負ってどんなプレーを見せるか注目したい」
――サポーターの盛り上がりもすごい大会です。
「選手の立場からすると、おそらくクラブのほうがプレッシャーは大きいと思う。スペイン代表はバルセロナの選手が中心だけど、もちろんレアル・マドリードの選手もいる。そんな時、サポーターはどう応援するのか気になります。バルセロナのサポーターは昨日までバルセロナを応援していたけど、今日からスペイン代表のカシージャスを応援するのか。バルセロナとレアル・マドリードのサポーター同士はどうやって混じり合うのか。クラブがあってこその代表選手だと思うけど、また違った顔を見せるから魅力的なのかもしれない」
――真剣勝負だからこそ激しい試合になりますね。
「親善試合に臨むモチベーションとはまったく違う。別のプレーヤーがいると言って過言ではないくらい。クラブレベルではいろいろなタイプのチームが出てきたと思います。バルセロナのように伝統的なスタイルを貫くチームもあれば、それに対抗してアトレティコ・マドリードのようなチームも出てきた。もちろんレアル・マドリードはスーパースターがたくさんいるチーム。それは国レベルでも同じことが当てはまって、個性的なチームは魅力的です。そして繰り返しになるけど、個で何でもできる選手がたくさんいる。だから絶対的な戦術というものは存在しない。とにかく“エグイ選手”が多すぎる(笑)。そうした選手たちのプレーを楽しむのもいいですね」
中村俊輔プロフィール
1978年6月24日生まれ、38歳。神奈川県出身。日産FC.JY→桐光学園高を経て、1997年に横浜M(元・横浜FM)に加入。その後イタリアのレッジーナ、スコットランドのセルティック、スペインのエスパニョールでプレーし、2010年に横浜FMに復帰した。2006年ドイツW杯、2010年南アフリカW杯の日本代表メンバー。
Photo=岩田 陽一
Text=藤井 雅彦
「UEFA EURO 2016™ サッカー欧州選手権」ベイル(ウェールズ代表)、ノイアー(ドイツ代表) 写真:ロイター/アフロ、C・ロナウド(ポルトガル代表)、イブラヒモヴィッチ(スウェーデン代表)、アザール(ベルギー代表)、イニエスタ(スペイン代表) 写真:アフロ、ポグバ(フランス代表) Getty Images
4年に1度、波乱と革命の31日。
欧州No.1を決めるサッカーの祭典、UEFA EURO 2016™ サッカー欧州選手権が2016年6月10日に幕を上げます。 フランスでの開催となる今大会は、参加国が8か国増え過去最多の24か国が出場。WOWOWでは、開幕戦から決勝まで全51試合を生中継でお届けします。
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