早霧せいな J:COMスペシャルフォト・インタビュー

2017年7月で宝塚歌劇団を退団する雪組トップスター、早霧せいな。2014年にトップスターに就任して以来、型にはまらない男役像で観客を魅了し、人気と実力を兼ね備えたトップスターとして人気を博した。そんな彼女の退団公演となるミュージカル・コメディ「幕末太陽傳」、Show Spirit「Dramatic “S”!」が4月より上演される。タカラジェンヌとしての最後のステージを目前にした彼女に、その胸の内を語ってもらった。

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『ルパン三世 —王妃の首飾りを追え!—』('15年雪組・宝塚)

『ルパン三世 —王妃の首飾りを追え!—』('15年雪組・宝塚) 原作/モンキー・パンチ ©宝塚歌劇団 ©宝塚クリエイティブアーツ

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『ファンシー・ガイ!』('15年雪組・宝塚)

『ファンシー・ガイ!』('15年雪組・宝塚) ©宝塚歌劇団 ©宝塚クリエイティブアーツ

「培ってきた男役をあえて崩す そこが粋だと感じてもらえたら」

――初日までもう間もなくですが、最後だという実感は湧いてきましたか?

「実感は…ありますね。『無い』と言ってきたんですが、いろんな方に『最後ですね』と言われすぎて、実感せざるを得なくなってきました(笑)。作品に携わってくださっている先生方や周りの方々もそういう想いでいてくださるので、いつも通りにと思っていても、そのようにはいかないですね。作品への想いとは裏腹に、日々の感情は騒がしくて、なんだかザワザワ、ソワソワする感じ。でも、その気持ちも受け入れていけばいいんだと思えるようになりました。ですから、『最後だな』と言うよりも『いつもと違う』という感じです」

――「幕末太陽傳」は、幕末の品川宿を舞台にざまざまな人間模様を描いたコミカルなミュージカル作品です。古典落語を組み合わせて撮られた名作映画が基になっているということで、落語も学ばれたそうですね。

「大阪府池田市に『落語みゅーじあむ』があることを知り、出演者全員で伺いました。上方でなく東京の、古今亭文菊師匠の『居残り佐平次』と『お見立て』を観させていただきましたが、やっぱり生で観るのは違いますね。面白かったですし、勉強させていただきました」

――今回「幕末太陽傳」で演じられる佐平次は、品川宿に一文無しで現れて遊びに興じた挙句居残りを決め込み、番頭まがいの仕事で宿の問題を解決しつつちゃっかりと稼ぐという気風の良いキャラクターです。最後に演じる役として、どのように感じていらっしゃいますか?

「自分としては、最後の男役として納得してやっていますが、宝塚や私のファンでいてくださる方々がどう思われるのか、やはり気になります。ご覧になる方の気持ちを考えると、どこまでやるべきか悩んでいるところです。私が演じる佐平次と男役・早霧せいなを融合させないと、宝塚の舞台としては成り立たない、でも『幕末太陽傳』という作品としても成立させなければいけない。バランスがすごく難しいと感じます」

――佐平次を演じる難しさを感じていらっしゃるとのことですが、具体的にはどんなところでしょうか?

「宝塚といえばやっぱりスーツとか燕尾とか、立っていてもかっこいい姿ってあるじゃないですか。佐平次は“着流し”姿ですが、ビジュアル面で言えばいわゆる宝塚らしさとは違うところにいると思います。キャラクター的にも二枚目ではないので、生き方のかっこよさで魅せていくしかないな、と。この作品において、かっこいいところをみせるのは、一筋縄ではいかないですね。今だからこそできる役でもあるので、今まで培ってきた男役のしぐさを経た上であえて崩していく、あえてふざけていく、そこが粋なんだと感じてもらえるように、役作りを深めていきたいです」

「自分に正直にやってこられた 宝塚に感謝、みんなに感謝ですね」

――トップ娘役の咲妃みゆさんとは同時退団となります。退団に向けて、どのようなお話をされていますか

「や、今はそれどころじゃないです(笑)。今回も頑張るしかないね、と。お互い口にしていませんが、考えていることは同じだと思います。“最後の役がお互いこういう役だね”と笑い合ったりはしましたけど(笑)。だからこそ、また新しいチャレンジができるんだと思っています」

――「Dramatic“S”!」は、“S”をキーワードに繰り広げるショーとのことですが、こちらについてもお聞かせください

「全場面がわりと、スピーディーで大勢が出てきて踊るところが魅力のショーです。その中で、私としては今の雪組だけでなく、未来の雪組を予感させるようなショーにしていければ。私はこれで退団ですが、雪組の皆にはこれからも頑張ってほしいですし、103期生のお披露目公演でもあります。それぞれの持ち場で、みんなが輝けるショーになっていると思います」

――最後のステージに臨むにあたり、何かやりたいことなどのリクエストはしましたか?

「実は私、リクエストするのが好きじゃないんです。リクエストを言い過ぎてしまうと、そこが限界というか、そこが終わりになってしまう感じがするので。あくまでも私は演出してもらう側で、私のために用意してもらったものを、料理して出すのが役目だと思っているので、これまでリクエストはせずにやってきました。ですから、最後の公演でリクエストをするのも何か違うな、と思うんです」

――今までのご自身を振り返ってきて、早霧せいなはどんなスターだったと思いますか

「その瞬間、そのときで最善を尽くしてきたつもりなので、まったく悔いはありません。でも、もうちょっと今思えば、楽しめたんじゃないかな?とは思います。必死だった時代、もちろん今も必死なんですけど…だから多分、何年後かの私は『最後なんだから、もっと楽しめばよかったのに』って思うんじゃないかと(笑)。でも、もう一方の私は『むしろ苦しんでいたからこそ、楽しんでいたんだよ』とも言うので、それが私の楽しみ方だったのかもしれませんね。自分に正直にやってこられたので、宝塚に感謝、みんなに感謝という気持ちです」

「人生の半分は“早霧せいな” そこを外すことはできない」

――宝塚の中で目指してきた男役像とはどのようなものですか?

「下級生のころから“どんな男役になりたいか”とよく質問されましたが、あまりイメージを決められたくないと思っていました。私はあまり背が高くないのでフェアリー系とも言われていましたが、私は“男性に見える男役”になりたかったんです。いろんな色に染められるような、ひとつのカラーに収まらないような男役になりたいと思っていました。今の自分があるのは、その想いを貫けたからだと思います。1年ほどお芝居で女役が続いた時期があり、自分の中では男役としてここからというときだったので複雑な気持ちもありましたが、そこでやっぱり男役が好きだと再認識できました。今はどんなことも意味があるんだと実感しています」

――宝塚でのご経験の中で、ひとつターニングポイントを挙げるとしたらどこですか

「いっぱいあるので、ひとつ選ぶのは難しいですが、新人公演で初主演をさせていただいた『NEVER SAY GOODBYE』(2006年)だと思います。本公演でも初めて大きい役をさせていただいたので、この作品で自分の気持ちが引き締まった想いがあります」

――退団後、やってみたいことは?

「今は、宝塚生活を全うすることに集中していますので、何も考えられないのですが…。そうですね…。まったく料理をしていないので、お料理教室に通おうかな(笑)。あと、宝塚に入ってからやっていないスキーをまたやりたいですね。それに急流を下ったりするラフティング!やってみたかったんですけど、怪我をするかも、冬だと風邪をひくかも、とセーブしてきたので初挑戦したいです」

――これまでのような表現のお仕事も続けていかれますか?

「私は演じることよりも“宝塚の男役”に惹かれて入った世界なので、男役から離れてしまうと何かを演じたいという想いは今のところありません。でも、自分の人生においてほぼ半分は早霧せいなとして生きてきたので、そこを外すことはできないとも感じていますし、うまく表現を考えていきたいです」

撮影:田浦ボン
取材・文:宮崎新之

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幕末太陽傳』/Show Spirit『Dramatic “S”!

宝塚大劇場 2017年4月21日~5月29日
東京宝塚劇場 2017年6月16日~7月23日

INFORMATION

『幕末太陽傳』
幕末の品川宿。一文無しで相模屋に現れた佐平次は、女郎おそめを揚げて大尽遊びに興じた挙句に飄々と居残りを決め込み、さらに番頭まがいの仕事まで始めてしまう。そして騒ぎを次々と解決してはお礼の金を手にし、次第に人気者となっていくが…。1957年の同名映画を基にした人情喜劇。

Show Spirit『Dramatic “S”!』
“S”をキーワードに展開する「Song & dancing Show」。宝塚大劇場公演は第103期初舞台生のお披露目公演。

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