高橋みなみ スペシャルインタビュー

AKB48第一期生として結成時から10年間、中心メンバーの一人として活躍。
2012年からは初代総監督としてAKB48グループをまとめてきた彼女が、ついにAKB48を卒業する。
メンバーたちの精神的支柱として存在し続けた彼女をプロデューサーの秋元康は「AKB48とは高橋みなみのことである」とまで公言。
そんな高橋みなみが、リーダーとして大事にしてきたもの、そして、卒業後の在り方などについて語ってもらった。

総監督は“AKBへの恩返し”という気持ちが大きかった

――高橋さんは2012年から3年間、AKBグループの総監督を務めてきましたが、指名を受けた時はどんな気持ちでしたか?

「東京ドームの3Days(8月に行われた「AKB48 in TOKYO DOME~1830mの夢~」)の初日に発表されたんですが、総監督という名前がキャッチーだったので、面白いなあと思いました。拒否権はないので、与えられた事をやるしかないなと。2日目にはソロデビューの発表もありましたし、私の中では“AKBへの恩返しとしてやっていきたい”という感じでした。ただ、いざフタを開けてみると義務になってしまうこともたくさんありましたし、その名前のためにいろいろと求められることもあったので、葛藤した部分も多かったですね。大変なことのほうが多かったかなぁと思います(笑)」

――その“大変だった”と事とは何ですか?

「それまでずっと(チームAの)キャプテンをやっていたし、その前から“チームを良くすればグループとして認められるかもしれない”という原動力の中で『みんなやろうか!』と声掛けしていたんですが、時にそれが義務になってしまいそうになったことが一番ですね。あとはメンバーのスキャンダルや、そういう事でのファンのはけ口に自分がならなければならなかったこと。握手会とかで批判を言われることもありましたから」

――総監督として“これだけはしっかりと持ち続けていこう”と思われていたことはあったんですか?

「私の中では総監督をやろうという事よりも、ただ単純にAKBというグループが好きだったので、そのグループのために何かできたらいいなという気持ちだけでした。それは総監督をする前から、グループに入って最初の頃からですね。まずは人から認められたい、アキバ系と言われたくないというところからだったと思います」

――高橋さんの中で“認められた”と実感したのは?

「やっぱり数字なんじゃないかなと思います。オリコンで1位になること、この時代にミリオンになること、そういう風に誰もが納得するくらいの数字を出さないと認めてもらえなかったんだろうなと思いますね。実際に結果を出してからは皆さんの対応も変わっていったんです(笑)」

――ちなみに、メンバーを引っ張っていく上で参考にされた方とか、書籍や言葉とかはあったんですか?

「人を引っ張ることに関しては特に何もなかったですね。ただ理想としてはマンガが大好きなので──。『ONE PIECE』のルフィは何であんなに仲間たちが付いていきたくなるんだろうっていうことは考えました。どんどんメンバーが増えていくところだったり、何かを決意してみんなで真っ直ぐ突き進んでいく姿勢だったりとか、AKBって当初は少年マンガの世界に近い部分があったと思うんです。それもあって、自分の中では『ONE PIECE』から感じることはたくさんあります。また、話すという部分ではスティーブ・ジョブズさんなどを、どうしてあんなに話すのがうまいんだろうというのは見たりしていました。」

――昨年12月に横山由依さんに総監督を継承しましたが、総監督の座から離れてみて改めてAKBというグループはどう見えますか?

「面白いです。ただ可愛いというだけじゃないんです。変わった子もたくさんいて面白いなと思うんですけど、まだ世間の方に知られていないというのも事実で。今のAKBを見ていただいて、指原(莉乃)とかまゆゆ(渡辺麻友)とか小嶋陽菜とか、そういった名前が知られているメンバーしか分からないというのが世間一般の声だと思います。でも、他のメンバーもすごく個性的な子が多いので、もっと知って頂けたらいいなと思いますし、彼女たちが自分の意思でどうもがき、どう立っていくのか今後もサポートしていきたいと思います」

――改めて、自分にとってAKB48という存在は?

「この24年間の自分の人生のすべてでした。AKBでやってみたいことはもうありません。もうやり切ったからこその卒業なんです。あとは自分がいないAKBを見てみたいという気持ちです」

これからも求められたことにはキチンと応えていきたい

――世間には高橋さんのように若い子たちを引っ張っていく立場にいる方もたくさんいると思いますが、リーダーとして大切にすべきことは何だと思いますか?

「自分を上だと思わないことです。自分がまとめているんだ、自分が偉いんだとかではなく、自分が一番へりくだるべきだと思います。年上の人には可愛がられればいいし、下の子にはイジられるべきだし──変なプライドを持ちすぎると良くないと思います。AKBでも若いメンバーたちの中には私たちを見て入ってきている子もいると思うので。『たかみなだぁ』という感じで、ある意味芸能人という目で見ているんです。あとAKBのドキュメンタリーなどを観て“怖い”と思っていたりとか、そういう事が先行してしまっている以上、自分が話し掛けていったりすることで、それを崩していく必要があるんです。その扉を開くのは後輩ではなく先輩なんだと思います」

――時にはメンバーを叱ることもあったと思うんですが、その時に大事にしていたことは?

「距離ですね。やっぱり近い存在でないと届かない言葉ってたくさんあるんです。もちろん、すべての言葉はその子のことを思って言いますけど、人間って“自分のためにどのくらいしてくれた”とか、“自分に関心をもっていてくれる”とか、すごく気にするものだと思うんです。私と近い存在の子なら『たかみなさんが言うんだったら』と思うだろうけど、私と全然関わりのない子に『ちゃんとして』と言っても、『たかみなさん、私のこと知らないじゃないですか』となってしまうので、キチンと距離を詰めてから言うようにしています。あまり情報を知らない状況だと、その子に対して言える言葉も少なくなってしまうんですよね。自分が関心を持って接していけば、自然とその子の情報も分かってきますし、特に女の子は“自分のために何をしてくれたか”を感じる生き物だと思うので(笑)。やっぱり、リアルをどう還元していくか、だと思います」

――ただ座っていて命令するだけじゃダメだと。

「全然ダメだと思います。しゃべったりとか一緒に食事に行ったりとか大事だと思いますし、“動けよ!”って思いますね(笑)。2月に行われた「テレビ東京ビジネスフォーラム2016」に出させていただいたんですが、いい空気の会社は社長さんが壁を作って偉そうにしているんじゃなくて、社員のみんなと同じ空間にいて、みんなの仕事ぶりを見ているということを聞いて、確かにそうだなって。私自身違う部屋にいるんじゃなくてみんなと同じ楽屋にいて、しゃべっていくことで場の空気も良くなっていったので、それはすごく大事だなと思います」

――さて、高橋さんのAKB48卒業も間近になりましたが。

「今はもうすっきりしています。悔いはまったくないです」

―卒業後のビジョンなどはあったりするんですか?

「私は歌がやりたくて卒業をするので、まず歌でファンの方たちを楽しませていきたいというのが一番です。あとは周りの人たちが私に求めてくれることにキチンと応えていくべきだと思っています。自分の中では“これが得意でこれが苦手”というのはありますが、誰かから『いや、こういう事もやってみましょうよ』と声を掛けていただいたら、それにもしっかりと乗れる人でありたいなと。こんな事をやってみたいというよりも、誰かがそういう風に言ってくれたらという感じです。秋元(康)さんからはずっと『まな板の上の鯉になれ』と言われているんです。自分から『私はこの調理しかおいしくない』と言ってしまうと、調理する側は面白くない。ただの魚のほうがいいんだと。ホントにリアルに考えると、これからいただくお仕事というのは、ある意味“試し”だと思うんです。使う側もまずはお試し、という気持ちだろうし、それはAKBにいた10年の貯金があるからだと思うので。2回目のお仕事をいただいた時に、自分のことが認められたんだと感じると思います」

撮影:松本健太郎
取材・文:斉藤俊彦

「星ガ丘ワンダーランド」2016年3月5日(土)全国ロードショー

高橋みなみのグループ卒業コンサートは3月26日(土)・27日(日)の2日間にわたり、横浜スタジアムでAKB48単独コンサートとして、3公演が開催。そして彼女の25歳の誕生日である4月8日(金)にAKB48劇場で行われる「高橋みなみ卒業公演」が最終ステージとなる。

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