辰吉丈一郎 スペシャルインタビュー

ボクサー・辰吉丈一郎。"浪速のジョー"と呼ばれ、
3度、WBC世界バンダム級チャンピオンに輝いた。
現在45歳。今なお現役にこだわり続けている。
なぜリングに上がるのか、なぜ戦うのか。
映画監督の阪本順治が20年もの間密着し、
フィルムに納めてきた彼の半生が映画として公開される。
映画にしたためた監督と辰吉の想いを聞いた。

インタビュー

もう一人の自分が出てきて「甘ったれるな~!!」っていうてくる

――長年、ボクシングを続けてこられて、万年筋肉痛とお聞きましたが、今はどういった状態なのでしょうか?

辰吉

筋肉痛が無い日を合計すると1年のうちに1ヵ月もないですね。あとの11ヵ月は筋肉痛。筋肉痛は経験したことある? あれが毎日です。人間の体って不思議でね、例えばパンチを打つと腕が筋肉痛になる。でも練習やから、それでも毎日打つわけ。そうすると体は、違うところの筋肉を使い出すの。腕を使い続けて腕が筋肉痛になると、胸を使い出して、胸が筋肉痛になると腰が痛くなって、最後は脚が筋肉痛になる。それでも筋肉痛でも練習だから毎日やる。だから結果的に全身が筋肉痛になるの。

――それが何十年も続いていると…。

辰吉

30年。辞めるまでこれは続くやろうね。でも、好きでやっていることなので、責めることもできない(笑)。だから、辰吉しかできません、これは。もう一人の自分がいるんですよ。痛いから今日は練習を止めてしまおうかって、普通は考えるじゃないですか。そうすると、もう一人の自分が出てきて「甘ったれるな~!!」って(笑)。筋肉痛でサボろうと思ってもサボれない。結局、ずっと筋肉痛は取れないわけ。悪循環。だから、日曜日なんかのオフの日には完全に休養して痛みを取るしかないんですけど、到底1日じゃ痛みが取れるわけない(笑)。

――オフの日の辰吉さんはあまり想像できませんね。

辰吉

まぁまぁ、喫茶店でコーヒー飲んだり、いろんな人と会ってしゃべったり。あとは晩飯の食材買いに行ったりとかしてるよ(笑)。そういうぐらいなもんで、生活は昔とそんなに変わらんね。

――僕自身、ちょうど辰吉さんの試合をダイレクトに観ていた世代で。試合の次の日とか、友達同士でいつも辰吉さんの試合の話をしていました。1回だけ生で観戦したこともあって。大阪ドームでウィラポンとの試合を生で観させていただきました。

辰吉

なんで負けた試合を観てんねん(笑)。ウィラポンとは2回やったけど、どちらも覚えてない。記憶がないの。試合の入場するところから覚えてない、控室も覚えてない。他の試合は覚えてますよ。でもウィラポンとの試合は2回とも失神なんで、何も分からない。どうやって試合したのかとか。誰に言うても信じてくれないけど、まったく記憶に無いんです。

――僕はあの時の試合を唯一生で観たので、思い出深い試合です。

辰吉

辰吉=負けるって印象がついてません?(笑)見た試合がそれだったら、印象づきますやん。僕の場合、強いとか弱いとかよりも、負けているってイメージがあるみたいなんですよ。じゃあ、どうやってチャンピオンになったんやって話なんですけどね(笑)。

――やはり勝った試合が多いからこそ負けた試合が印象深いということもあると思いますが。阪本監督はその辺いかがですか?

阪本

ボクシングってリングにあがってみないとどうなるか分からないところはあるから。でも僕はカメラを回していたから、他の人よりも試合を客観的に観ていたと思います。一方で、付き合いも長いので身内の気分もある。辰吉くんが倒れるところはスローモーションになりますから。でも、そんな様も含めて、“色香”を感じるんですよ。本人を目の前に失礼ですけど、そういう倒れるシーンも魅力的。

普通はせえへんぞって。でも普通はせえへんことをやるのが辰吉やねん

――敗れた相手に対して、「彼は強かったよ」など、リスペクトを忘れないのも辰吉さんの魅力というか。

辰吉

当たり前だけど、理由はどうあれ相手は自分に勝ったわけじゃないですか。万全の体制で試合に臨んだ僕に勝つということは、優れているとしか言いようがない。

――普通の人はどこかで妬みなどが出てきてしまい、素直に祝福できないと思うのですが。

辰吉

「お前と試合するために減量せなあかんねんぞ」「お前と試合するために練習せなあかんねん」と思いながら、フラフラになりながら軽量をパスして飯を食って、万全の状態で試合に挑む。でも万全な状態で挑んだ僕に勝つわけじゃないですか。相手も同じく辛い減量や練習をしてきた上で。そりゃ褒めるしかないでしょ。お前、あの辛い減量や練習して俺によく勝ったな、と。讃え合いますよ。

阪本

結局試合ごとにインタビューをして、勝った後のインタビューは当然、意気揚々とした語気だったりするんですけど、じゃあ敗戦の後にそれが変わるかというと、変わらないんですよ、辰吉くんは。普通だったら「今撮りに来るなよ」といった憮然とした態度でもおかしくないのに、客観視して冷静に答えることができるんです。その辺は映画を観てもらえれば分かると思います。

辰吉

僕自身は試合で勝つことが大事なんで、過ぎたことを言われてもどうでもいい。結果は出てしまっているんで。しょうがない。だから、何でもどうぞ~って感じ(笑)。今度は成功するから、今回は失敗!って。だからいくらでも取材して~って。

――監督は20年以上、辰吉さんを取材し続けていますね。

阪本

20年以上カメラを回してますけど、辰吉くんじゃなければ、こんなに回さないですよ。

辰吉

この映画も阪本監督だから許せたところもあるし、折り入った話もできた。撮り方が上手いんだよね。夕暮れ時の小腹がすいてきたときに「飯行こうか!」って。こっちも腹が減ってるから「じゃあ行こうか」って行くとカメラがおる(笑)。

阪本

俳優さんをノセるのとは違うけどね。辰吉くんの取材に行くといつもスポーツ関係の記者とかもいるんですよ。そこで見せる辰吉くんじゃない姿を撮りたいから、いろんな手練手管を使うわけです。気を許してもらうというかね。公園でも自宅でもどこでもカメラの存在を感じさせないために、飯でも食いながら、となるわけですよ。

――その数々の手を使って取材をした20年間の辰吉さんの歴史が映画になりました。

阪本

本来、ドキュメンタリーって撮り手は映らないんですけど、映画のタイトルにもある通り、「辰吉丈一郎との20年」というふうにまとめるとしたら、恥ずかしながら自分も出演しようかなと思いましたね。

辰吉

最初ね、21歳でチャンピオンになったわけ。そんで結婚して息子ができて、その息子がもう24歳になるんですよ。うちの息子のほうが大きいんやもん。びっくりだよ(笑)。下の子は19歳やからね。もっとびっくりなのはね、その息子が4回戦やってるんやけど、親父はまだ現役でやっとんねん。あほやろ(笑)。すごいうんぬんやなくて、ええかげんにせえて(笑)。普通はせえへんぞって。でも普通せえへんことをやるのが辰吉やねん。

――ボクシングに対してとことん貪欲な姿勢であり続けるところがすごいなと思います。

辰吉

僕自身はボクサーとして現役なんで、これからのことも考えるわけ。そういう意味では映画のタイトルが現状と面白いくらいマッチしている。今、“辰吉”っていったらボクサーでしょ。訳の分からない型破りなボクサーっていうことを日本中の人が知ってくれている。僕はそこに価値を見出しているし、自分のやることを見とけ!って思っているわけです。

――最後に、なぜこのタイミングで映画化されたんですか?

阪本

辰吉くんが引退したら発表しようと思っていて、月日が経ち、試合ごとにインタビューし、それがかなわなくなってからも定期的に撮り、どこで納めるかと考えたときに、自分が20年撮ってきたものを一回観たかったというのがあります。方向性も含め。要するに辰吉くん次第で撮ってきたので、20年という節目と、次男がボクサーとしてデビューしてリングの下から身内を仰ぎ見ることになった辰吉くんの姿を一回まとめておくかなと思いました。辰吉くんは「俺が終わってへんのになんで映画が先に終わるねん」といってたけど(笑)。たしかにその通りで引退までと決めてたんだけど。次どういう展開で彼と向き合うかというのはこの映画で決めようと。それに、映画ファン、ボクシングファン、そしてそれ以外の人にどう映画が波及していくかが見たいというのがありました。この映画で今の辰吉くんの正直な姿を観てもらえると思います。

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「ジョーのあした-辰吉丈一郎との20年-」2月20日(土)シネ・リーブル梅田ほか大阪先行公開 2月27日(土)テアトル新宿ほか全国順次ロードショー

STORY

阪本順治監督が1995年~2014年の20年間、インタビューを続けた渾身作。撮影当初から同じスタッフで撮り続け、辰吉の信頼を得て、彼の真実の姿を記録。天才ボクサーのありのままの姿がここに。

企画・監督:阪本順治
出演:辰吉丈一郎
ナレーション:豊川悦司

公式サイト:http://www.joe-tomorrow.com/

「ジョーのあした-辰吉丈一郎との20年-」

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