プロ野球を愛する男たち

8月21日(金)にマツダスタジアムで行われる
広島東洋カープ対読売ジャイアンツの公式戦を、
J:COMで独占生中継!
放送を記念し、プロ野球に熱い思いを抱く
著名人のインタビューをお届けします。
野球中継の楽しみ方から、チームの注目ポイントまで、
プロ野球を愛する人々ならではの目線で迫る!

大友康平(おおとも・こうへい)/56年1月1日、宮城県出身。76年、東北学院大学在学中に学校の仲間とHOUND DOGを結成し、80年にメジャー・デビュー。以後、歌手としてはもちろん、俳優やタレントとしても活躍。今年の3月でメジャー・デビュー35周年を迎えた。また大の巨人ファンとしても知られる。

――大友さんが巨人ファンになったきっかけは?

「僕は宮城県の塩釜で生まれたんですけど、親の仕事の関係で小さい頃、埼玉県に引っ越したんですよ。単純に考えて関東だし、当時のナイター中継は巨人戦オンリーでしたから自然な形で巨人ファンになっていきましたよね」

――その頃の巨人の印象は?

「ちょうど、僕の小2から予備校生時代までが巨人の“V9”なんですよ。そりゃぁもう強かったですよね。長嶋茂雄、王貞治が中心にいて、堀内恒夫がエース。土井正三、黒江透修、末次民夫、柴田勲etc…、とにかく素晴らしい選手ばかりでしたから大変なチームでしたね。僕らの世代は、身体能力が優れている子どもは男子だったら野球、女子はバレーボールって決まってましたからね。間違っても、サッカーやテニスにはいかなかった(笑)。野球をやっている子たちは長嶋の背番号『3』と王の『1』が大好きで。だから、同じクラスに『3』と『1』をつけている子どもが、やたらと多い(笑)。それだけ、みんな熱狂的でしたよね。
とにかく、川上哲治監督の采配がすごいんですよ。変な話、長いペナントレースの中で“負け試合”や“捨て試合”を作りながらも最終的には70~75勝ラインを目指す戦い方。そして、必ず9月まで阪神と優勝争いをして、大体最後に阪神が息切れして巨人がペナントを制する。本当にあの頃の巨人は強かったですよね」

――当時、好きだった巨人の選手は?

「高田繁選手が大好きでした。浪商から明治大学に行って巨人に入団。1年目からレフトのレギュラーとして活躍したんですよ。シュアなバッティングがよかったんですよね。結構いい当たりがフェアゾーンに入らず、ファールになるイメージもありましたけど(笑)。長嶋さんが監督になられた時は、レフトからサードにコンバートされて。内野から外野へというケースはよくあるんですけど、逆のパターンというのは当時でも珍しかった。かなり過酷な特訓を受けたという話を聞いたことがあります。
僕はよく『週刊ベースボール』を読んでいたので、昔は全選手の出身校を全部覚えていました。高田さんは女性にも人気があったので、特集記事が多かったですね。高田さんは浪商時代に付き合っていた女性と結婚されたんですけど、奥さんとの最初のデートでオムライスを食べたらしいんですよ。その後も、デートのたびにオムライスを食べていたという記事を読んだ記憶があります(笑)」

――今は、CSなどでほぼ全カードが観られるようになりましたけど、大友さん流の野球 中継の楽しみ方はありますか?

「昔は、夜の7時から放送が始まって9時に終わる。時々、スポンサーのご好意で中継が延長されたりして。あの頃の凝縮された2時間に醍醐味を感じますね。当時のゴールデンタイムに『プロ野球中継』は必須事項。仕事から帰ってきた親父が風呂に入った後、食卓でビールを飲みながら野球を観る。テレビが一家に1台の時代ですから。家族みんなで楽しむ最高の大衆娯楽でしたよね。
日本人に野球が根付いているのは、どこか“間”が大事なスポーツだからかもしれません。武士道に通じるものがありますよね。ピッチャーとバッターの駆け引きにキャッチャーも加わって。他の野手たちは、いつ飛んでくるか分からないボールをひたすら待ち続ける。制限時間がないから、じっくり勝負を楽しめますね」

――今回の「広島×巨人」戦は、CMが全く入らない完全中継が見どころの一つですけど、大友さんのおすすめポイントは?

「べったり1試合を存分に満喫できるのはうれしいですよね。後は、観ている方が自分なりに楽しめばいいと思います。試合前の練習も観られるのなら、今野球をやっている子どもたちはプロの選手たちのキャッチボールやノック、バッティングを見ると参考になるかもしれない。球場に行かないと観られない光景ですから、そこにも注目してほしいですね」

――試合当日の解説者は、江夏豊さんと元木大介さん。「広島OB」と「巨人OB」が顔を揃えますけど、お二人の印象は?

「江夏さんは、以前雑誌の企画で対談させていただいたことがあります。江夏さんは大阪学院高校から阪神に入団したんですけど、プロ入り2年目に25勝12敗、401奪三振という成績を残して。当時はまだ、19歳ですよ。しかも、ほとんど完投なんです。おそらく、あの奪三振記録は破られないでしょうね。とにかく、王さんを相手にした時の気迫がすごかった。何が何でも抑えてやるというピッチングでしたから。江夏が王から、そして村山実が長嶋から三振を取る。そういう素晴らしい図式がありましたよね。投手は先発完投で、打者から三振を奪う。球も速かったですし、江夏さんは投手の理想型だと思います。広島での江夏さんのイメージは、やっぱりあの『江夏の21球』。あれは本当にすごかったです。
元木さんは、あれほど野球の才能にあふれた選手が練習をしないと、あんな風になっちゃうんだなという…、ま、これは冗談ですけど(笑)、とにかく才能で野球をやっていた選手というイメージ。巨人の中では、ああいう存在感がよかったのかもしれない。聞いた話によると、足が速かったから真剣に練習していたら盗塁王を獲れるぐらいの素質はあったらしいんですよ。それだけ、身体能力には恵まれていたんでしょうね。巨人時代のあだ名は『クセ者』ですから(笑)。そういう意味では、通り一遍じゃない、元木さんらしいセンスを生かした解説をしてほしいなと思います」

――今回、巨人が対戦する広島の印象は?

「毎年、1年に2回ぐらいコンサートツアーで広島に行っていたんですけど、昔の広島市民球場は広島市のど真ん中にあって。なのに、当時はお客さんが少ないことが不思議だったんです。自分が住む街にプロ野球チームのホームスタジアムがあったら普通は行くでしょって思っていたんですけど、ケーブルテレビが発達しているからみんな球場まで行かなくても野球を楽しめていたらしいんですよね。
チームのイメージは、金銭的に余裕があるという感じの球団ではないから、どうしてもスター性があるような甲子園を湧かせる高校球児は、巨人や阪神に取られてしまう。だから、スカウトは全国を飛び回って。とにかく足が速くて肩が強い選手を探すらしいんです。ピッチングとバッティングは、地獄の猛特訓をすればある程度のところまで成長する。でも、足の速さと肩の強さは天性。その2点に注目して、ドラフトで獲得した後は、じっくり育てていく。育成という点では素晴らしい球団という印象。江藤智、金本知憲、新井貴浩と、主砲が次々と他球団にFA移籍しましたけど、それだけ大物を育てたという証拠。後に、ヤンキースで4番を打ったこともあるアルフォンソ・ソリアーノは、広島が所有するドミニカ共和国の野球スクール『カープアカデミー』出身。広島時代はベンチでヘッドロックされたりして、からかわれたりするみんなの人気者でしたよね。だから、広島カープ出身の選手は“本物”というイメージが強いです。
選手で印象に残っているのが、バッターでは山本浩二、衣笠祥雄。オールスター戦で2本ずつホームランを打ったシーンは今でも記憶に残っています。確か、あの年は広島が優勝したんですよ。ピッチャーでは外木場義郎、北別府学、炎のストッパー・津田恒美。大野豊、川口和久という男前のサウスポーも良かったですよね」

――今年の広島の戦いぶりはいかがですか?

「メジャーから帰ってきた黒田(博樹)、前田(健太)はいいですけど、野村(祐輔)がねぇ、今ひとつピリッとしないですよね。大瀬良大地にも、もうちょっと頑張ってほしい。中継ぎで使われたりしているけど、個人的には先発完投タイプだと思っているのでゲームの頭から投げている姿を観たいですね。
打者では菊池(涼介)、丸(佳浩)の“菊丸コンビ”。キャッチャーの會澤(翼)は、バッティングが魅力的。あれだけ打つキャッチャーは最近、いないですよね。巨人の阿部(慎之介)ぐらいじゃないですか。広島市民球場からマツダスタジアムに変わりましたけど、アメリカンスタイルを随所に取り入れたあの球場は素敵ですね。バーベキューをしながら野球観戦できるなんて最高ですよ」

――ちなみに、番組内では最初にヒットを打つ広島の選手は誰なのかを当てるクイズ 企画があるんですけど、大友さんから見て気になるカープの選手は誰ですか?

「やっぱり、菊池でしょうね。ヒットを打つのが上手いし、一発の魅力もある。セカンドでのあの守備範囲の広さはすごいですよ。今、一番輝いている選手だと思います」

――では、大友さんのひいきのチームである巨人の今年は…。

「いやぁ~、全然よくないですよね(笑)。ピッチャーで頑張っているのはマイコラス、ポレダ、あとは高木勇人ぐらい。彼らがいなかったら、ダントツの最下位だったかも。4番打者も固定されていないし…。原(辰徳)監督には、もう少し我慢してほしいんですよね。ちょっと調子が悪くなると4番から8番に下げてみたりして。極端な話、4番は4打席4三振でも最後にホームランを打てばいいんですよ。勝利を決めるような場面でね。何となく投打の噛み合わせがうまくいかないまま、ここまで来ちゃったような印象です。もっと、橋本(到)や松本(哲也)、和田(恋)といったイキのいい選手を起用してほしいし、2軍にもルーキーの岡本(和真)をはじめ、いい選手がたくさんいますから。 いっそのこと、総入れ替えしてもいいんじゃないかな(笑)。それぐらいの刺激が必要かもしれません。先のことは分からないけど、今年のセリーグがこのままダンゴ状態が続くのかなぁ。最終的には選手層の厚さで巨人が抜け出す。ファンとしてはそれを期待しながら応援します!」

撮影:中川有紀子
取材・文:小池貴之

インフォメーション

詳しくはこちら

第2回 第2回
第3回 第4回