橋爪功 J:COMスペシャルフォト・インタビュー

ドイツ人作家、フェルディナント・フォン・シーラッハ初の戯曲「Terror」が、俳優・橋爪功の朗読と、ジャズピアニスト・小曽根真の演奏で表現される。2人のコラボレーションで作り上げられる珠玉の舞台。その想いについて、橋爪に聞いた。

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朗読者としてお客さんに必要以上のものは与えたくない

――今回は、普段のお芝居とは違う「朗読」がメインの舞台です。

「朗読劇は、そんなにやってないんですけど、『三国志』をはじめとする“朗読”の仕事は結構多いんですよ。ラジオドラマもそうですよね」

――芝居と朗読で演じ方は変わりますか?

「お芝居の場合は相手役がいたりして、舞台という空間の中で“板の上”に乗ってるわけだから。そこに存在しているんです。でも、朗読の場合は、存在していないわけでしょ。結局、いろいろなことを言葉で説明することで、お客さんの気持ちは舞台上ではなく自分の頭の中だったり、心の中に存在しているんです。だから、大きな違いはありますよね。そういう意味では、必要以上のものをお客さんに与えてはいけないなと思っています」

――橋爪さんの動き次第で、受け止め方も変わってくる?

「言ってしまえば中途半端な位置にいるんですよ、演者としては。いわゆる疑似体験の中で程良いポジショニングに立っていられるような感覚があるので、朗読は意外と好みではあるんですよね。そこが、お芝居と違っていて面白いのかもしれません」

――今回の裁判劇では何十人もキャラクターが登場しますが、どんな風に感情を切り替えていくんですか?

「往々にして役者が陥りやすいのは、登場人物の感情の中に入ってしまうということ。入りすぎちゃうことがあると思うんですよ。それは、すごく危険なことですよね。感情が入りすぎている俳優の芝居を観ているとイライラするんですよ(笑)。演じているあなたは気持ちがいいかもしれないけど、観ている側からするとそんなにドップリ浸られちゃってもなぁって思っちゃう。僕の中には、そういう意地悪な目があるんですよ(笑)」

――そういう芝居は、観ていて分かるものですか?

「それは、絶対分かりますよ。いい気持ちになってるなって(笑)。そういう芝居は、あんまり好きじゃないですね。演じる時は感情に引きずられることなく、客観的な目をいつも持っていたい。そういう風にありたいなとは思っています」

――どのキャラクターに対してもフラットな感情で向き合うことが大切だと。

「そうは言っても、ある種このキャラクターはこんな感じって自分で決めちゃっているわけですからね。『三国志』の朗読なんて何百人も出てくるんだから。収録の時間が空いちゃうと『あれ、この登場人物はどの声でやったんだっけ?』って忘れちゃったりする(笑)。そういう時は、後で聴き返して録り直したりするんですよ。だから、その『三国志』にはどうしても僕の解釈が出てくるんです。登場人物に対してね。今回も裁判長、検事、弁護人、被告人etc…、いっぱいいるんですよ。あくまでも、自分の解釈を一つの取っ掛りにして、いかに朗読として成立させるか。観ている人たちに飽きられても困ってしまうから。語り手の話術も試されるんですよ。これは大変だけど、楽しみでもありますね」

――朗読では、演出家からどんなことを求められるんですか?

「僕自身は演出をやらないから分からないけど、今回の演出家である(深作)健太くんが思い描いているイメージをどんどん言ってもらったほうがいいですね。『ここは、こんな風にしてください』とか。まぁ、必ずしも言うことを聞くとは限らないけど(笑)。一応、聞くことは聞くよって。僕一人でやるわけじゃないから、いろいろな解釈があっていいと思うんですよ。そうやって一緒に作り上げていければ面白いんじゃないかな。朗読の場合は演出家も生身の人間を動かすわけじゃないから。楽しめると思いますよ」

真くんとの舞台上での

――今回は裁判劇ですけど、朗読する上で心掛けることは?

「裁判劇だからということではなく、一本のお芝居を朗読するとどうなるのかなと。登場人物が多くても語りの部分、いわゆる地の文があればいろいろ調整できるんだけど、今回はキャラクターたちが次から次へとセリフをしゃべっていくんですよ」

――語りの部分がないんですね?

「そうなんです。そこは怖いところであり、面白くなりそうだという期待もある。そんな思いも含めて、今は『どうするんだい、橋爪?』って感じですね(笑)」

――しかも「有罪」「無罪」を観客が決めるという面白い試みが。

「そうそう、僕の芝居によって答えが変わるかもしれないんです。日によっては、検事だったり弁護人だったり、ついつい肩入れしてしまうことがあるかもしれない。もちろん、客観的でなければいけないんだけどね。この裁判劇のテーマは重いんです。命を扱ってますからね。どっちの命が大切なのかと天秤にかけているわけですから、僕が結論を出すことではない。原作を手掛けたシーラッハさんも答えを提示してませんからね。皆さんも考えてくださいというスタンス。だからこそ、やりすぎないことが大切なんです」

――朗読の時は、事前にセリフを覚えたりするんですか?

「セリフは頭に入れませんよ。入るわけないじゃない(笑)。覚えなくていいように、朗読しているんだから。例えば、大体1、2行先までのセリフが目に入りますから、目線を外して動いたりすることはよくありますよ。ただ、一回外した後に続きを読もうとすると、どこまで読んだか分からなくなることがある。これが、怖いんですよ(笑)。変な間が空いちゃったりしてね」

――でも、観ている側は芝居の間かなと思いますよね。

「そうなんです。これは芝居の間ですって、ごまかすわけ(笑)。あれは、ちょっと焦るよね。丸暗記しちゃうと、どうしても“橋爪功”になっちゃうんですよ。客観性がなくなってしまうと言いますか、余計な情報をお客さんに与えてしまうような気がして。あくまでも、朗読者の橋爪功を通して内容を知ってもらいたいんです。まぁ、これは言い訳で半分サボってるんだろうって言われるかもしれないけど(笑)、そこは大事にしたいところですね」

――ジャズピアニスト・小曽根真さんとのコラボも見どころの一つです。

「真くんは勘が鋭くて頭の良い人。当然、台本を読み込んでくるんです。そういう意味では彼との“ファイティング”もあるような気がしますね」

――読んでいる途中で演奏が始まることもあるんですか?

「稽古はこれからだから、どういう形で音が入ってくるのかは分からないけど、そういうこともあるでしょうね。『ここ、僕は何もしませんから橋爪さんにお任せします』なんて場面も出てくるかもしれない。それに対して『ダメだ!』って言うかもしれないけど(笑)、真くんとのコラボも楽しみの一つですね」

――では、これからご覧になる方へ向けてメッセージをお願いします。

「今回の裁判劇は、お客さんにお任せ。おんぶにだっこです(笑)。演者として、そういう楽しみ方をさせてもらおうかなと。高い入場料を払って、なおかついろいろなものを感じなければいけないのかって言われたら『すみません』と言うしかないんですけど、一つの小屋(劇場)の中で互いに何かを交歓できる面白さはあるのかなと思っています。皆さんに、参加していただけたらうれしいです。東京と兵庫で公演があるので、それぞれの反応の違いも楽しみたいですね」

撮影:渡部孝弘
取材・文:小池貴之

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J:COM×AXNミステリーPresent 橋爪功 (朗読) x 小曽根真 (ピアノ演奏) 「裁判劇 Terror」

「Terror」は、世界各国で文学賞を受賞し、日本でも本屋大賞を受賞するなど話題のドイツ人作家であるフェルディナント・フォン・シーラッハ初の戯曲。ドイツ30都市で上演されている話題の「Terror」の日本初演は、朗読の名手・橋爪功による朗読と国内外で活躍を続けるジャズピアニスト・小曽根真の演奏で表現する珠玉の音楽朗読劇です。
多くの人間を救うために犠牲が生じることは仕方がなかったのか…人間の善悪について、 正義について、法廷という舞台を通じて観客に訴えかけます。テレビ、映画、舞台と幅広く活躍する橋爪功が、一人で複数のキャ ラクターを演じ、そこに絶妙のタイミングではさまれる小曽根真のピアノ演奏によって、観客は、まるで場景が目の前に広がっていくような錯覚に陥ります。

2016年8月13日(土)

《昼公演》 14:00開演
《夜公演》 18:00開演

※夜公演終了後、出演者によるアフタートークあり

日経ホール

(東京都千代田区大手町1-3-7)

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