文=毎日放送『情熱大陸』プロデューサー 福岡元啓
2014/11/21掲載
2年以上もの逡巡、そして彼らが起こした社会現象
©毎日放送
A4サイズの紙2?3枚に書かれた企画書には、取り上げる人の写真とプロフィールそして今後の予定などが書き連ねられている。こうした企画書を何枚も毎日のように目を通し番組化するかどうか判断していく????。そんな日常の繰り返しの中で、2年以上前、同じ人物の企画書が複数枚、舞い込み始めた。それが、ゴールデンボンバー・鬼龍院翔だった。
いつ、誰を取り上げるか????というのは、『情熱大陸』の番組づくりの根っこである。
だが僕は、「鬼龍院翔」の企画書を、誰もいなくなった深夜の会社のデスクでひとり見つめながら、なかなか決断できずにいた。なぜなら、鬼龍院翔がホンモノであるとは思えなかったからだ。いまとなっては、失礼な話かもしれないし、プロデューサーとしての目利き不足だったのかもしれない。初めての紅白出場の会見で下品な発言をして物議を醸したり、なにより、ミュージシャンなのに演奏しない!“エアバンド”ということにどうしてもついていけない自分がいた。
そんなプロデューサーをさておき、紅白に初出場した彼らは、年が明けてからもその人気にかげりが見えないどころか、ますます勢いを増すばかりだった。
番組制作会社から、絶え間なく寄せられる“鬼龍院”企画書…。ホンモノでなければ、消費されてすぐに消えていく。どこまでも続く、サバイバルゲームの様相を呈する芸能界。そんな熾烈な環境の中で、“キワモノ”という言葉だけでは片付けられない社会現象を、彼ら自身が作り出していた。
いまだ続く彼らの人気と、その先鋭的な(というと言い過ぎか?)活動に、腰の重いプロデューサーもついに番組化の決断を下さざるを得なくなった。
“想像通りが一番嫌い”??。苦悩と、決意と、憧憬と
ただ、僕は単に、彼らの人気が続いていたから取り上げようと決めたわけではなかった。
他人と違ったことをすれば、何をやったとしても世間の半分は賞賛、半分は批判だ。当然、批判にはやっかみも含まれる。さらに限られたイスの奪い合いともなれば、批判に晒されることのほうが圧倒的に多くなる。
しかしながら、いや、だからこそ、どんなバッシングを浴びようとも、彼らは現状をとても楽しんでいた。いつかは終わる人生。ならば誰に何と言われようとも、自分の好きなように生きるのがベスト、そんな覚悟が彼らにはあったのだろう。
誰もが憧れる生き方、それを出来ないもどかしさ。何かを吹っ切ったようにそうやっていることへの憧憬を、僕は遅ればせながら鬼龍院に感じてしまったのだ。
インタビューで彼はこう答えている。
「同じ事をやっても意味がないし、想像通りが僕一番大嫌いなんです」
でも、自分の思うような生き方を、勇気を持って実行できるほど世の中は容易くない。
コラム作者プロフィール
福岡元啓
1974年 東京都出身
1998年 毎日放送入社
毎日放送『情熱大陸』(TBS系列で毎週日曜よる11時~11時30分に放送中)プロデューサー。
報道局時代に街頭募金の詐欺集団を追った「追跡! 謎の募金集団」や、日本百貨店協会が物産展の基準作りをするきっかけとなった「北海道物産展の偽業者を暴く」特集がギャラクシー賞に選出。2010年秋より『情熱大陸』5代目プロデューサーに就任し、東日本大震災直後のラジオパーソナリティを追った「小島慶子篇」、番組初の生放送に挑戦した「石巻日日新聞篇」でギャラクシー月間賞。水中表現家の「二木あい篇」でドイツ・ワールドメディアフェスティバル金賞受賞。「猪子寿之篇」でニューヨークフェスティバル2014入賞。著書に「情熱の伝え方」(双葉社)。
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ドキュメンタリー番組『情熱大陸』は、スポーツ、演劇、音楽、学術など様々な分野の第一線で活躍する人物にスポットを当て、密着取材により魅力・素顔に迫る番組です。1998年に開始してから放送は800回を超え、今や国民的ドキュメンタリー番組になっています。
毎日放送『情熱大陸』
毎週日曜、よる11時~TBS系列にて放送中!!
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