文=TBSテレビ『バース・デイ』プロデューサー菊野浩樹
2014/12/5掲載
男子フィギュアは閑古鳥が鳴いていた時代
「どこまでいっても(浅田)真央には勝てないですからね、注目で言うと」
トリノ五輪の直前、浅田真央が代表入りするかどうかで大騒ぎがあったことは、今も記憶に新しい。GPファイナルで優勝していた浅田は「五輪前年の6月30日までに15歳」という年齢制限にわずか87日足りず、オリンピック出場が叶わなかった。その浅田真央に荒川静香、村主章枝、安藤美姫など、日本の女子フィギュア界は実力者・人気者がそろい、空前のブームの中にあった。
そんな中、高橋は日本の男子フィギュアの道を先頭に立って切り拓いてきた。
そんな孤高の戦いを続けていた高橋は女子フィギュアのことを、どう思っていたのだろう。
---当時の女子と男子の違いを感じたのはどんな時ですか?
高橋「同じ成績をとった時の記事の大きさとか。あとお客さんの入りとか。全日本選手権が一番わかりやすいんですけど、女子のショート終わった日に男子のフリーなんですよ。そして男子になると、女子のときは一杯だった客席が空いているんですよ。(観客が)帰るんですよ。
ああ、お客さんがいないなって。クソって思ってて。何で同じフィギュアなのにアレなんだよっていう感じで。やっぱり近くに華やかなものがあると、自分もそうなりたいって思うじゃないですか。そういうモチベーションはあったと思いますけどね。
やっぱり、どこまでいっても真央には勝てないですからね、注目で言うと。だから彼女の存在は大きかったと思いますけど」
---女子に負けたくないっていう気持ちでやってきた中で、どういう風に注目をひきつけようと?
高橋「注目は結果しかないって思いますから。やっぱりメディアに出るには、結果を残していくしかないじゃないですか。もしね、ものすごいかっこいい、かわいい選手がいたとしても、やっぱり結果が伴わなければ、引いていくじゃないですか。結果を出してのアスリートなので。しかも1回じゃなくて続けなければ、人は絶対に離れていくと思うので。どれだけ人気があったとしてもね」
今、テレビ関係者の間では、浅田真央、安藤美姫らが引退した女子より、男子のほうがゴールデンタイムのソフトとしてキラーコンテンツだと考えられている。1年前とは、全く状況が変わりつつあるのだ。世界で戦えるのか、どうか。大衆は残酷にその事実を察知し、世界で戦える者だけに、より多くの声援を送るのだ。実際、今、バレーボールという競技は、メダル争いをする女子はゴールデンで放送されるが、そうではない男子は放送が深夜になることも多い。
コラム作者プロフィール
菊野浩樹
1968年 5月14日 生まれ
1992年 TBS 入社
「バース・デイ」(TBS系にて毎週土曜夕方5時~5時30分に放送中)企画・プロデューサー。
これまで「プロ野球戦力外通告」「石橋貴明のスポーツ伝説」「SASUKE」「モニタリング」「サワコの朝」などを担当。2012年には「劇場版 ライバル伝説~光と影」の総監督を務める。現在はTBSテレビ編成局編成部 長期戦略担当部長。
12月30日、夜10時~「プロ野球戦力外通告 クビを宣告された男たち」
2015年1月3日、夜9時~「独占!長嶋茂雄の真実」
をTBS系列にて放送。
番組タイトルの『バース・デイ』とは、毎年、巡ってくる誕生日のことではありません。
夢を抱き、戦いに挑み、過酷な現実に直面した者たちに
訪れる、"人生に刻まれた、忘れられない大切な一日"その忘れられない一日を番組では『バース・デイ』と呼び、毎回、番組で取り上げる主人公が新しい自分に生まれ変わる瞬間を紹介していく番組です。
TBSテレビ『バース・デイ』
毎週土曜、夕方5時~TBSにて放送中!!
//www.tbs.co.jp/birth-day/