シリーズ決断 トップランナーたちの哲学 高橋大輔
シリーズ決断 トップランナーたちの哲学 高橋大輔

20年間続けてきて誇れるものは何もない?謙虚すぎる男の引き際の美学?20年間続けてきて誇れるものは何もない?謙虚すぎる男の引き際の美学?

文=TBSテレビ『バース・デイ』プロデューサー菊野浩樹

「今はゴールデンタイムでフィギュアが見られる。夢のようじゃないですか」
フィギュアへの熱い想い。そして引退の真相とは?

高橋は男子フィギュアが不遇だった頃を知っている。だからこそ、今の人気も冷静に謙虚に見ているのではないか。

---みんなで頑張った結果、男子もすごい人気になったわけですが、達成感はあるんですか?

高橋「ないですね。これからのことのほうが不安ですね。さいたまスーパーアリーナで競技ができるなんて思ってもいなかったし。実際に満員のお客さんを見た時は、ありがたいな、というか、感慨深いというか。あ、まだスケートって見てくれてるんだ、っていうのを毎回感じながら思いますね。
(今の男子フィギュア人気は)夢のような、って感じですよ。だって自分が小さい頃スケートを始めたときに、全日本選手権を見ようとしたら、夜中にしかテレビ(中継)やってないから夜中に起きて見るしかなかったし、しかも男子はほとんど放送されないっていうのが、あったじゃないですか。
今は、ゴールデンタイムで見られるんですよ。夢のようですよね。想像もしていなかったというか。でも今の状況に満足するんじゃなくて、今がリアルじゃないぞ、という風にも感じている。いつまで続くか保証がないじゃないですか。もし人気がなくなったら、どんどん会場のお客さんの入りが減ってくるじゃないですか。
でも今の状況しか知らない選手、昔を知らない選手って、そのときのモチベーションの下がりようって半端ないと思うんですよ。だから、いろんな華のある選手が出てきて一時的な人気じゃなくて定着してくれたらいのにな、って思う」

子供の頃も、世界選手権で優勝しても、男子フィギュアの人気が過熱しても、高橋は常に謙虚であり、自分の実力やその人気を含め、ことさら、低く自己評価しているようにも思える。
しかし、そこが高橋大輔という男の魅力なのかもしれない。

“引退”の決断に関して、高橋は、番組の中で、こんなことを言っている。
「気持ちとしては続けたいんじゃないですかね。ただ、どんどん惨めになっていくのが耐えられるか、耐えられないか。第一線の戦いの中で勝ち負けはあったとしても・・・第一線の中に入れないのは嫌なので」

もう少し、現役としての高橋大輔のスケートを見たかった・・・、多くのファンがそう思っているだろう。しかし、高橋は決断したのだ。自らの実力を“謙虚に”、評価して・・・。
それはそれで、高橋らしい引き際だったのかもしれない。
たとえ、世界中が、その決断を残念だと感じたとしても。

---20年続けてきたことで一番、誇れるものは?

高橋「ないです、本当にないんです。何も出来ないし、と思っちゃうんで。スケート取ったら何も出来ないなと思って」

---今後の競技の世界と離れた、新しい生活に対しては?

高橋「今は、不安しかないですけど。 僕はこういう風にやっていきたい、というものをちゃんと持ってやらなきゃダメだと思うんで。そういうものを探すというか、そういうものを見つけてからがスタートだなと思ってるので。まだ、プロ・フィギュアスケーターって言われた時に自分の中で違和感があるんですよ。まだ、ただの高橋大輔でいいみたいな感じで」

彼の口からは、何かを断言するような、そして例えば自分の実績を誇るような、いわゆる我々が想像するスポーツ選手らしい、いかにもな感じの言葉は出てこない。しかし、彼ほど、スポーツは結果なのだという厳しい現実を自分に課し、かつ実践してきた男はいない。
その自分に課したハードルは高すぎたようにも見える。
だが、高すぎるハードルだからその進化が止まる事なく、大大大大大・・・・・偉業を成し遂げることができたのだと私は思う。
(敬称・略)

高橋大輔も出演するスターズ・オン・アイスジャパンツアー2015の情報はこちら!!
https://www.tbs.co.jp/tbs-figureskate/soi/

コラム作者プロフィール

菊野浩樹

1968年 5月14日 生まれ
1992年 TBS 入社
「バース・デイ」(TBS系にて毎週土曜夕方5時~5時30分に放送中)企画・プロデューサー。 
これまで「プロ野球戦力外通告」「石橋貴明のスポーツ伝説」「SASUKE」「モニタリング」「サワコの朝」などを担当。2012年には「劇場版 ライバル伝説~光と影」の総監督を務める。現在はTBSテレビ編成局編成部 長期戦略担当部長。
12月30日、夜10時~「プロ野球戦力外通告 クビを宣告された男たち」
2015年1月3日、夜9時~「独占!長嶋茂雄の真実」
をTBS系列にて放送。

番組タイトルの『バース・デイ』とは、毎年、巡ってくる誕生日のことではありません。
夢を抱き、戦いに挑み、過酷な現実に直面した者たちに
訪れる、"人生に刻まれた、忘れられない大切な一日"その忘れられない一日を番組では『バース・デイ』と呼び、毎回、番組で取り上げる主人公が新しい自分に生まれ変わる瞬間を紹介していく番組です。

TBSテレビ『バース・デイ』
毎週土曜、夕方5時~TBSにて放送中!!
//www.tbs.co.jp/birth-day/

J:COMへのお申し込み

Copyright (c) JCOM Co., Ltd. All Rights Reserved.

J:COM

Copyright (c) JCOM Co., Ltd. All Rights Reserved.
ケーブルインターネットZAQのキャラクター「ざっくぅ」

トップへ戻る