小塚崇彦 スペシャルフォト・インタビュー

フィギュアスケート選手として、バンクーバー五輪代表、日本選手権優勝、世界選手権2位など華々しい活躍の後、2016年に現役を引退した小塚崇彦。現在は自身のキャリアを活かしてフィギュアスケートをはじめとしたスポーツの普及活動に尽力している。そんな小塚がこれまでの人生の中で思い入れのある映画を5作品紹介する番組『この映画が観たい#53 ~小塚崇彦のオールタイム・ベスト~』がムービープラスにて放送される。彼がセレクトした作品(映画「ホーム・アローン(1990年)」「パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち(2003年)」「ロミオとジュリエット(1968年)」「風の谷のナウシカ(1984年)」「栄光への脱出(1960年)」)の大半は、彼が現役時代にプログラムで使用した映画音楽作品だ。どのような想いで、5作品を選んだのか。収録直後の彼に、話を聞いた。

「スケート人生の1ページとして映画と音楽はくっついているんです」

――今回、思い入れのある5作品を番組でご紹介いただきましたが、小塚さんは、普段は映画をどのようなタイミングで観ることが多いですか?

「やっぱり移動中に飛行機の中で観ることが多いですね。でも思い入れのある作品を、と考えるとやっぱりフィギュアスケートで滑ったことのある作品が最初に浮かんできました。どんな曲で滑ってきたかな、どんな転機があったかな、と考えていたらあまり迷わず、すんなり決めることができましたね。とはいえ、それだけでは…と思って、小さいときの思い出が詰まった作品も選びました(笑)。僕自身、今回映画を選んでいるときにフィギュアスケートと映画音楽がこんなに密接につながっているんだと改めて感じました。「この映画が観たい」の番組収録中も、自分で『そうなんだ』と確認するような、発見しながらお話しできたような気がします。懐かしさや悔しさなど、当時の気持ちを思い出しましたね。みなさんにも青春の1ページとともにある音楽や映画ってあると思うんですけど、そういったものの一つとして今回の映画があるんじゃないかな。僕の場合はフィギュアスケートが人生の大半を占めていたので、スケート人生の1ページとして、思い出と映画や映画音楽が、くっついた状態で残っているんだと再確認できました」

――先に音楽を聴いてから映画を観るようなこともあったそうですが、自分がフィギュアスケートで演技をするとなると、映画鑑賞の仕方やポイントが変わったりしますか?

「フィギュアスケートではクラシック音楽で滑ることが多いんですが、クラシック音楽の場合はそんなに固定のイメージが無いので自分の色に染めやすい。逆に映画音楽の場合は、すでに固定のイメージがあって、審判の人たちの中にもそのイメージがあるんです。それをいかに自分の色に染めていくかが非常に難しいんですよ。映画のマネをすれば、ある程度の雰囲気にはなると思うんです。でも、今回オールタイム・ベストに選んだ『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』の曲は、同じ大会で6~7人とかぶってしまって(笑)。結局、マネだとその中で埋もれてしまうんですよね。それを埋もれないように、自分の技術を詰め込んでやっていくのがスケートの練習なのかなと思いますね」

――映画を観ていても、マネにはならず個性を出していくという部分では、クラシックで滑るよりも難しいところがあるんですね。

「そうですね。個性を出していく、という部分では、そこから『ロミオとジュリエット』に繋がっていくと思っています。本当は最後に死んでしまうロミオを“死なないロミオ”にしてハッピーエンドで終えるというのは、ひとつの作品における自分の表現だったので。そういうところは、『パイレーツ~』での経験を経て、これだったらほかの人の『ロミオとジュリエット』に埋もれないな、と考えましたし、成長につながったかなと思います。」

――ストーリーありきで編曲をされることもあるんでしょうか。

「あっちの曲をこっちに持ってきて、などミックスしてぐちゃぐちゃになることもありますけど・・・というのもジャンプやスピン、ステップをやるにあたって曲の時間というのがすごく大切なんです。映画の時系列で考えると、ここにこの曲が入ってくるのはおかしい、と感じることもあるので、そのあたりはバランスよく、しっかり調整していたつもりです。クラシックを使う場合でも、例えば第3楽章から始まって、第2楽章に行って…とか順番がバラバラなことはあるんですよね。編曲によってどんどん生まれ変わっていくのかなと思います」

「次世代のスケーターたちが『風の谷のナウシカ』の曲を使ってくれたのは本当に良かったと思う」

――俳優のように役作りをされることもあるんですか?

「映画を観るというのが、ひとつの役作りではありますね。すでにその役の方が映画の中にいらっしゃいますから。その先は、滑っていて感じるものがあって、振付師さんの意図を汲みながら作り上げていく感じです。『ロミオとジュリエット』のときは、ハッピーエンドで終わらせたので、映画の途中までのロミオを演じていたような印象です。『栄光への脱出』については、特定の誰かではなく、壮大さや人の心が動く“何か”を引き出すことを目指して、音楽そのものを表現しました」

――フィギュアスケートと音楽は切っても切り離せないものだと思いますが、小塚さんにとって音楽はどのようなものでしょうか。

「音楽は自分と合っていれば、それだけで気持ちよく滑らせてくれる存在なんですけど、自分と合っていない音楽でも、それはそれで自分を成長させてくれる。自分の中にない感性をこれから生むわけですから。そうやって自分を成長させていくことが、音楽との付き合い方なのかなと思います。
僕の場合はジャズやクラシックは合うと言ってくださる方が多かったんですが、逆に映画音楽は成長させてくれるような音楽でしたね。ひとつ超えるべき壁を作ってくれる存在でした。同じジャンルばかり滑っていても器は広がっていかないし、スケートが試合だけかというとそんなことはなくて、アイスショーとかもあるし。そういうことを考えるといろんな曲を滑らなければいけないというのは、ずっと佐藤有香さんに言われてきました」

――ご自身のもの以外で、心に残っている映画音楽を使ったフィギュアスケートの演技はありますか?

「佐藤有香さんの演技に影響を受けてスケートを始めたんですが、それと同時期にずーっと映像で観ていたのがカート・ブラウニングさん。小さいころにずっとマネをしていたんですよ。僕の祖父の名前を冠した小塚杯というのがあって、そういうところでマネしたりしていましたね。「You Must Remember This」という番組の中で彼の『雨に唄えば』の演技を見たり。『雨に唄えば』では、リンクに建込みをして雨を降らせたんですよね。そういうのはよく見ていました」

――番組の収録の中で、『風の谷のナウシカ』のような日本の楽曲はあまりフィギュアに起用されないというお話しをされていましたが、やはり世界の反応としては不利になってしまうこともあるのでしょうか?

「前例のないものを取り入れることはなかなかないんです。もちろん、『座頭市』を織田(信成)くんが演じたようなケースはあるんですけど、ほとんどは西洋の音楽を使うことが多いです。日本人の繊細さがありつつも、大胆で雄大な部分も持ち合わせている『風の谷のナウシカ』の曲を知ってくれたらいいなとは思いました。もちろん、海外の方でも映画好きの方は知っている人もいるかもしれませんが、海外のスケートファンの方は知らない人が多いと思うんです。僕がこの曲で滑った後、曲を使ってくれるスケーターもいたので、「良い曲だと思ってもらえたんだな」、あるいは「映画を観て感銘を受けたんだな」と感じました。次の世代のスケーターが『風の谷のナウシカ』の曲を使ってくれたことは、本当に良かったなと思っています」

「友情を深めるには五輪は一瞬すぎる 楽しむためにも、今、経験や練習を詰め込んで」

――五輪などの世界大会で日本の楽曲を起用することは日本のPRになるという考え方もあるようです。

「もちろん、結果としてそういう部分はあるんだと思います。五輪の舞台を日本のPRとして使うこともアリだとは思います。ただ、何のために五輪に挑戦するかと言えば、最終的には自分の目標のためだと思うので、自分が心地よく滑ることができる曲を使ってもらいたいですね。その結果、日本の曲だったというのは良いと思うんですけど、日本の曲を使おうと思って使うというのは好ましくないかな」

――まずは自分ありきで選ぶことが大切ということですね。そのほかにも、五輪などの際に80%の力で滑るのが良いというお話しをされていました。

「人間って100%以上の力を出すと、力が入りすぎてどこかで綻びが出ると思っています。例えば120%の力でやりきると、ジャンプでもスピンでもすごく簡単なところでミスをしてしまうことが起こり得ると思っていて。だけど、自分の力を120%まで伸ばした状態にしておいて、本番では80%くらいの力で滑ったとすると、結局96%の力で滑ることができるわけです。かなり100%に近くなる。そういうふうに、自分の力を伸ばしておくことで、かつては100%の力でやっていたことが、80%くらいの力でできるようになる。自力を伸ばす、それこそが練習だと思います。80%の力であれば、心にも余裕が出てきて、細かいところにも気を配ることができますよね。そういうふうに考えを持っていく方がいいと思います」

――全力を尽くすことは大切だけれど、本番こそ心を配れるように余裕を持つ。芸術性などが求められる競技だからこそ、より必要な部分かもしれないですね。先日、全日本選手権が終わり平昌五輪の日本代表が決まりました。大会をどのようにご覧になりましたか?

「全日本に関してはいい大会でした。あそこまで彼らが気持ちの入った演技をするとは思っていなかったので、感動しました。個人的な名前を挙げてしまいますが、(本田)真凛ちゃんに関しては、これまで小さなミスで悔しい思いをしたことはたくさんあったと思うんですが、あれだけ大きな壁に跳ね返された瞬間というのは初めてのことで、本当に心から悔しかったんじゃないかなと思います。終わった瞬間から涙が溢れてきたあの悔しさを忘れないで、もう一段二段、登っていくと、もっと素晴らしい選手になれるんじゃないかと期待しています」

――五輪代表に決まったメンバーへ、メッセージをいただけますか。

「五輪に出場する人は、自分が思い描く演技をしていただきたいですし、それをすることがメダルに近づいていくことだと思っています。挑戦することを忘れず、ルールをしっかりと守ること。何よりも、五輪にはスケートだけじゃなく、スキーの選手や、色々な人がたくさんいます。そういった人たちと、ぜひ友情を深めてほしいですね。そのドキドキを楽しむためにも、今はしっかりと練習や経験を詰め込んで、五輪に臨んでもらいたいと思います」

「番組では、小塚が選んだ映画5作品の紹介をしながら、彼が歩んできたフィギュアスケート人生を振り返っている。また、ナビゲーターとして、フィギュアスケートで起用された映画音楽について、映画本編の放送前に解説も行っているのでぜひチェックしてみてほしい。」

撮影:渡部孝弘
取材・文:宮崎新之

特集:フィギュアスケート×映画音楽

放送日時 2月5日(月)~2月8日(木)13:30~

計5作品特集放送

根強い人気を誇るフィギュアスケート。実は映画音楽を採用し、映画の世界観を表現する演目も多く存在している。ムービープラスでは、スポーツの中でも芸術性が高いフィギュアスケートと映画の関係に着目し、浅田真央×『オズの魔法使』、村上佳菜子×『マスク・オブ・ゾロ』といったトップスケーターたちが演じた計5作品をピックアップ。各映画の放送直前に、フィギュアスケーター小塚崇彦によるミニ解説番組を放送する。

『この映画が観たい#53 ~小塚崇彦のオールタイム・ベスト~』

放送日時 2月5日(月)23:00~23:30 ほか

各界の著名人が、自身の人生に影響を与えた映画をアツく語るオリジナル番組。2月放送の回には、フィギュアスケーターの小塚崇彦が登場。彼がセレクトした映画「ホーム・アローン(1990年)」「パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち(2003年)」「ロミオとジュリエット(1968年)」「風の谷のナウシカ(1984年)」「栄光への脱出(1960年)」の5作品について、自身の人生に絡めて大いに語る。

※小塚崇彦さんのページは1/30公開予定となります

公式サイトはコチラ

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