松平健 J:COMスペシャルフォト・インタビュー

 2010年よりこだわりのオリジナル時代劇を世に送り続ける時代劇専門チャンネルとJ:COMがタッグを組み、新たな本格時代劇「池波正太郎時代劇スペシャル 顔」を制作した。京都・松竹撮影所が誇る時代劇の技術と、4K撮影による映像美、闇の殺し屋を主人公とした池波正太郎作品ならではの緊張感あふれるストーリー展開など、見どころは満載。時代劇の新たな可能性を示す新作の魅力を、主演の松平健に聞いた。

正義の味方とは気持ちが違いますね

――健さん演じる木村十蔵は、綺麗な女房と幼い娘と幸せに暮らす浪人ですが、彼は金で殺しを請け負う「仕掛人」という別の顔を持っています。十蔵は、次の仕掛の標的・和助が、裏の元締が言うような「極悪の盗賊」には見えず違和感を覚えます。闇社会から抜けたい気持ちと和助を殺していいのかという苦悩。先が読めないサスペンスがあります。台本をお読みになったときの感想はいかがでしたか?

「この物語の面白さは、主な登場人物みんなが表裏2つの顔を持っていることだと思いました。十蔵は家庭人と仕掛人、和助は商人と盗賊。さらにほかの登場人物にも意外な一面が秘められている。あとからああそうだったのかと分かってきます。池波正太郎先生の世界観の原点ともいえる作品ですね。少ないセリフと回想シーンで人物の背景や十蔵の葛藤を見せる金子成人さんの脚本は素晴らしかった。金子さんは池波作品を多数手掛けている方ですし、僕も大河ドラマ『義経』など何度か出ています。俳優個人のことをよく知ったうえで、あて書きのように書かれているので、すごく表現がしやすいです」

――映像化が多い池波作品の中でも「顔」は傑作短篇と言われ、今回が初の映像化です。出演は十蔵の絵の師匠役の中村嘉葎雄さん、元締の火野正平さん、時代劇初挑戦の劇団EXILEの小野塚勇人さんなど豪華な顔ぶれです。

「嘉葎雄さん、石黒賢さん、ともに初共演できたのはうれしかったです。撮影は京都で大雪が降った1月だったのですが、嘉葎雄さんは防寒も兼ねて自分で手に布を巻いたり、襟巻したり衣装に工夫して、放浪の絵師らしい、いい雰囲気を出していました。髪も嘉葎雄さんだけカツラではなくて地毛に付け加えることで自然に見せていた。さすがだと思いました。石黒さんは好青年の印象そのままの方で、殺陣のシーンも熱心にリハーサルされていた。作品に対する姿勢が伝わりました。火野さんは、かつて『鞍馬天狗』や『運命峠』では、僕の手下の役だったのに、今度は悪の親分だから、僕が言うことを聞かないと(笑)。火野さんは安心して芝居ができる方ですね。残念ながら小野塚さんとは共演シーンが少なかったですが、若い方が積極的に時代劇に出演されるのはうれしいし、また共演できる日が来るのを楽しみにしたいですね」

――十蔵が絵を描くことも物語のカギになりますね。

「絵を通して十蔵が仕掛人になる前、放浪していたいきさつや、絵の師匠と出会って旅をした過去が語られます。そのことが事件と大きく関わってくる。絵筆が不思議な縁を結んでくれる。それが十蔵の心を揺らす。絵を描くシーンもセリフはほとんどないのに、心情がしっかり伝わっていい場面になったと思います」

――十蔵一家が実家のみんなと正月を祝うシーンもあります。子役さん相手の健さんの優しい表情も時代劇では新鮮ですね。

「家庭でくつろぐところは明るく楽しく。それが闇の世界とのギャップになる。十蔵の表裏が物語の軸ですからね。子役の松田苺さんは、現場ではみんなに“苺ちゃん”と親しまれていましたが、関西の名子役といわれるだけに、どんな場面にも動じない演技力はすごい。子役さんの名演技にはかなわない(笑)、と驚かされました」

――一方で、仕掛の瞬間、刀を構えた十蔵のきりっとした表情は強い印象を残します。

「刀を持つときりっとするのは、職業病かなあ(笑)。ただ、十蔵の場合は刀を抜くときは、人を殺すときですからね。光もほとんど当たりませんし、正義の味方とは気持ちが違いますね」

2つの顔の演じ分けを自由にやらせてくれた

――健さんにとっては、初のダークヒーロー役。仕掛人・松平健の殺陣も見どころですね。

「大勢に取り囲まれて次々襲いかかる敵の剣を受けて立つ『暴れん坊将軍』の受けの殺陣とは違い、十蔵は一太刀で相手を仕留める攻めの殺陣です。十蔵の最初のシーンで仕掛ける相手は、長年、大立ち回りで相手をしてくれているベテランの峰蘭太郎さん。一太刀で終わってしまったので動きは楽でしたけど(笑)、お互い『もうちょっと殺陣をやりたかったね』と話しました。ただ、原作とは違い、十蔵が自ら決着をつけるシーンが出てきます。これは演じて納得できたというか、気持ちよかった。原作を読んでいる方も『こうきたか』と楽しんでいただける場面になっているので、注目してください」

――江戸の風情や夜の闇を映す4K映像美も話題です。暗い川で黒い頭巾をかぶった十蔵が血で汚れた刀を洗うシーンなど、暗闇の中なのにくっきりと人物が浮かび上がってきます。現場でこれまでの撮影との違いを感じましたか。

「最近のドラマは複数のカメラを同時に回して撮ることが多く、俳優はどの角度の映像が使われるか分からないんですね。この作品では監督が1台のカメラでじっくりと撮る。2つの顔の演じ分けを自由にやらせてくれた。このやり方だと集中できていいですね、と火野さんとも話しました。山下智彦監督は、若いころから斎藤光正監督(映画『戦国自衛隊』、ドラマ『水戸黄門』などで活躍)について、時代劇を知り尽くした演出家です。スタッフも丁寧な作品作りで知られる松竹のメンバーがそろっていた。中村嘉葎雄さんとの旅や石黒賢さんとのススキの原での対決は緊張感があっていいシーンになりました。昔の時代劇が帰ってきた!と思えるような現場でしたね。ただ、鮮明に映るからカツラの境目の調整は大変でした。しばしば『調整します~』と床山さんが入って(笑)」

――時代劇の撮影といえば京都と言われて久しいですが、ススキの原はロケ現場としては貴重な場所ですね。

「あそこは普段はススキの原を見物する観光地で、みなさん船でいらっしゃるんですね。ロケ中も観光客の方から手を振られながら僕らは撮影していましたよ(笑)」

――この作品でさらに時代劇を楽しむ人が増えそうですね。

「最近はいろいろなところで時代劇の再放送も増えて、僕は小学生から手紙をもらったりします。『顔』を見た方にはできるだけ、みなさんに面白かった、また見たい、もっと見たいと広めていただきたいですね」

取材・文/ペリー荻野
撮影/広岡雅樹

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J:COM×時代劇専門チャンネル オリジナル時代劇 池波正太郎時代劇スペシャル『顔』 6/4(土)独占先行放送

INTRODUCTION
J:COM×時代劇専門チャンネル オリジナル時代劇 池波正太郎時代劇スペシャル『顔』

J:COMと時代劇専門チャンネルが協力し、京都・松竹撮影所が誇る伝統技術と、4Kという最新撮影技術を組み合わせた、オリジナル時代劇を制作。
時代小説の大家・池波正太郎原作、時代劇スター・松平健主演という最高のキャスト、スタッフでおくる本格サスペンス時代劇だ。

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