一見、どこにでもあるような幸せな一家。だが、父・和彦は泥棒、母は結婚詐欺師、長男は偽造職人で、まだ幼い長女も次男も犯罪でこの家が成り立っていることを知っていた。そんなリスキーな日々をおくる中、母親が騙していた男に誘拐され…。
本多孝好の短編小説を映画化した「at Home アットホーム」。
どこにでもありそうな、仲のよい幸せそうなファミリー森山家は
ある秘密を抱えていた。
それは、この一家が空き巣、結婚詐欺、偽造と
犯罪によって生計を立てているということ。
そして、全員が父親に「盗まれた」、
血の繋がらない家族ということ……。
そんな、複雑な事情を抱える家族の大黒柱である父親を熱演した
竹野内豊は、「家族」をどう捉えたのだろうか。
「家族」の核心には、
言葉を超えたものがある
――今回は父親の役でしたが、何かモデルにした人などはいますか?
「撮影前は、いろいろ考えたりとかもしました。家族の話ですから、そのあたりをリアルに成立させられたらいいと思っていましたね。ですが、どんなに考えてきていても、実際に撮影に入ってからそれぞれの役者さんと向き合ったときに、自分のイメージからは変わってきたりするんです。そうなるのが当たり前なんですよね。そういう意味では、あまり考えてはいない……というとちょっとおかしな言い方かもしれないですけど、具体的なモデルとかはいませんでした」
――この家族は、それぞれが家族であり続けるために懸命になっていました。この役を演じられて"家族でありつづける"には、何が一番大切だと感じましたか?
「実際、森山家を撮影しているときは限りなく自然でしたね。たとえ、台本に書かれていない何かが起こったとしても、感じた気持ちのままそのシーンを進められるような印象がありました。ちゃんとそれぞれ家族としての役割分担が、自然とできていたような気がします。でもあの和気藹々とした空気感は、最初からそうだったわけじゃないんですよね。だんだんと一緒に過ごすうちに信頼感が生まれたんじゃないかと思います。
今って、時代が凄まじいほど速く流れていって、感謝の気持ちだったりとか、人を思いやる気持とか、そういうあたりまえのことを見失っていると思うんです。見えてるんだけど、見えていない。けれど、こういうことって、「意識しなさい」と言ったところでできるものでもない。この作品を通して考える機会はたくさんあったんですが、「家族」についての核心を言葉にできない。難しいですよね。「家族」って、そういうひと言で表すような言葉を超えたものがあるように思います。僕はまだ自分で「家族」を作ったことはないですが、もしこれから僕が「家族」を作ったとしても、そこはよくわからないかもしれないですね」
自分の中のつまらないこだわりが、
どうでもよくなってきた
――今回の父親役もそうですが、最近は演技の幅がグッと広がって肩の力が抜けたような印象があります。何かご自身の中でターニングポイントがあったんでしょうか?
「あんまり意識しているつもりはありませんが、何か新しいものを取り入れたい、チャレンジしたいという気持ちはありますね。今まで、自分の中にあった、つまらないようなこだわりが、どうでも良くなってきている。自分の信念を1本持つことは大切だと思っていますが、自分自身で新しい自分を発見するって、限界があると思うんですよ。時には、自分としては『どうかな?』って思うことも、その流れに乗っかってみて、全力でやってみる。それで、面白いな、と思ったらもうちょっとやってみようかな、と受け入れられるようになったかも知れないですね」
――いつごろから、そんな風に思えるようになったんでしょうか?
「いつからだろう……年齢とともに?(笑)。少しずつ、ですね。これは俳優って仕事に限らず、どんな世界もそうだと思うんですが、近道は絶対に無いですからね。近道なんて、絶対にない世界だと思っています。もし道が目の前に現れたとしても、きっと多分そこに行っちゃいけないのかな、と。そういう部分でのどうにもならない孤独感や苦しさは避けられないことがあるんですよね。目標とする地点にいかに早く辿り付くか、というのも合理的だとは思うんですが、もがいてももがいてもなかなか着けない場所にどうやって行くか、というのを辿っていくプロセスに、何か人生の重要なものがある」
――近道をしてしまったことで、得られない経験があるはず、と。
「そうやってずっとそんなことを続けていって『これでよかったのかな』と思っているうちに人生が終わるんじゃないかな。でも、それは諦めとかじゃないんですよ。例えば、もっと世界に胸を張って日本映画が成長していくように願っていて、それを例え自分の力でできなかったとしても、思い続けていくことが大切だ、と。実はこれ、緒形拳さんから教えていただきました。これを聞いた当時は、漠然と『すごいなぁ』と思ったくらいでよく分からなかったんですが、自分も40代の半ばを迎えて、だんだんと自分の将来が見えてきて。今、やっと、噛み締めるように分かって来たような気がします」
撮影:渡部孝弘
取材・文:宮崎新之
BOSS
アメリカ研修帰りの訳あり女性キャリアのBOSSと、その下に就く各部署から不要と言われた個性的な「精鋭」達の活躍を描く大人気刑事ドラマ。アメリカ帰りの元キャリア・大澤絵里子は、新設された「特別犯罪対策室」の室長に抜擢される。
©2014「ニシノユキヒコの恋と冒険」製作委員会
ニシノユキヒコの恋と冒険
9月18日(金) 2:00~4:15
「犬猫」「人のセックスを笑うな」で高い評価を受けた井口奈己監督が、川上弘美原作の同名連作短編集を軽妙洒脱に映画化。魅力的でハンサム、女性たちに優しいのに、なぜか相手にフラレてしまうモテ男を竹野内豊が軽やかに好演した。
©NTV
瑠璃の島
10月4日(日)15:00~18:00 他
※以降 毎(日)14:00~ 放送
成海璃子・竹野内豊など豪華俳優陣で描くヒューマンドラマ!沖縄県八重山諸島・鳩海島では小学校廃校の危機を迎えていた。勇造は、育児放棄されて児童養護施設にいる瑠璃と出会い、島へ来て欲しいと頼み、鳩海島に迎え入れたが…。