泉秀樹の歴史を歩く

泉秀樹の歴史を歩く

大坂城と豊臣家・その滅びへの道【2019年6月】

西の丸から見た大坂城天守 撮影:泉秀樹

西の丸から見た大坂城天守
撮影:泉秀樹

日本最大の要塞・大坂城を家康はどう攻略したか?秀吉と淀君の子・秀頼はなぜ滅んでいったのか?その戦国の悲劇の核を見つめ、解析する。遠い昔と今を結ぶ線を辿る。作家・泉秀樹が歴史の現場を取材し独自の視線で人と事件をプロファイルする!

登場人物プロフィール

豊臣秀頼公銅像

豊臣秀頼

豊臣秀頼

文禄2年(1593)8月3日、大坂城・二の丸で生まれた。秀頼は信長の妹・お市の娘・淀君の子供。浅井長政の孫で、秀吉の息子であった。拾った子は良く育つといわれていることから、名を「拾」(ひろい)といった。

第1章 秀頼の誕生

豊臣秀頼公肖像画 撮影:泉秀樹

豊臣秀頼公肖像画 撮影:泉秀樹

秀吉が朝鮮出兵中、淀君は秀吉がいた肥前・名護屋城(佐賀県唐津市鎮西町)へよばれており、この城の山里丸で懐妊し、正式には秀吉の第二子として文禄2年(1593)8月3日に大坂城・二の丸で男児を産んだ。これが秀頼(拾)であり、すでに兄・鶴松がいたが、3歳でこの世を去っていた。秀吉は鶴松供養のために京都・東山の祥雲寺(現在の智積院)を創建した。もともと正室の北政所に子がなく、鶴松の死の2年後に誕生した秀頼に、57歳の秀吉はあられもなく狂喜した。長子・鶴松の死に遭遇したとき、秀吉はもはや世継ぎに恵まれることはなかろうと、関白の座を甥の秀次に譲ってしまっていた。そして、朝鮮征伐と明国平定を企てて30万を越える将兵を動員し、すでに侵攻を開始していた。そこに思いもよらず淀君が妊娠し、秀頼が生まれた。

第2章 豊臣対徳川

関ヶ原開戦地 撮影:泉秀樹

関ヶ原開戦地 撮影:泉秀樹

慶長5年(1600)家康は会津(福島県)の上杉景勝に謀反の意思ありとして、これを討つために東上した。
「秀頼様のために」という大義名分をかかげて、である。これを千載一遇の好機だと判断した石田三成が、隙を衝くように挙兵した。「(家康は)太閤様御置目にそむかれ、秀頼様を見捨てられ、出馬候間」と三成は考えた。三成は心から秀頼のために、と思って行動に出たのでした。が、家康はほくそえんだ。三成を戦場へ引っ張り出すことに成功したのだ。上杉討伐は撒き餌であり、これを受けて全国の武将たちが家康の東軍と、三成の西軍に分かれた。結局、小早川秀秋の東軍への寝返りによってあっけなく一日で東軍の勝利に終わった。家康の大義名分は秀頼のために戦う、ということであったが、同時にその最終目的は秀頼を亡き者にし、豊臣家をつぶすことであった。

第3章 大坂の陣

方広寺の鐘銘と鐘楼 撮影:泉秀樹

方広寺の鐘銘と鐘楼 撮影:泉秀樹

右が備前島から見た大坂城天守 撮影:泉秀樹

右が備前島から見た大坂城天守 撮影:泉秀樹

地震で倒壊したり火災で焼失していた京都・方広寺(京都市東山区)の大仏殿が建ちあがり、鐘が完成したのは慶長19年(1614)4月のことである。これは、関ヶ原の合戦のあと秀吉を供養するため、豊臣家の威勢復権を示すための、秀頼の一大事業だった。この巨大な鐘の銘文は文英清韓が書いたものだったが、家康のブレーンだった金地院崇伝や京都所司代の板倉重勝、御用学者の林羅山らが鐘に彫られた銘文に問題の言葉があると難癖をつけた。
「国家安康」とあるが、これは家康という諱(いみな)を2つに切り、「君臣豊楽」は豊臣家だけが栄えるという調伏・呪詛の意味ではないかといういいがかりである。この「方広寺鐘銘事件」がきっかけとなり、大坂の陣が引き起こされることになる。

第4章 豊臣家の滅亡

大坂城山里丸・淀君秀頼死亡地 撮影:泉秀樹

大坂城山里丸・淀君秀頼死亡地 撮影:泉秀樹

元和元年(1615)丸裸同然となった大坂城を攻めるのはたやすかった。5月7日、最後の決戦で秀頼は梨子地鎧緋縅(なしじよろいひおどし)の甲冑をつけ、父・太閤・秀吉の金瓢の馬印をつけて「太平楽」と名付けた黒馬に乗って桜御門まで出た。秀頼は天王寺表へ出陣するつもりであったが、連絡係である大野治長や真田幸昌(幸村の子)が城を出入りするのを見た大坂方の将兵が、もはや負けたに違いないと感じとって動揺することになった。とかくするうちに大坂勢は総崩れすることになり、結局、秀頼は出馬することなく本丸へ、天守へと引き返した。千姫を脱出させて助命を乞うたが、家康は容赦しなかった。家康は十万の兵で迫り、激戦の末に大坂城は炎上した。そして、山里丸に移り、秀頼は家臣に淀君の首を斬らせ、秀頼自身は左脇から右上に向かって割腹し、ほかの者もそれぞれ自害した。腹を切った秀頼は21歳9か月、淀君は享年49であった。

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