泉秀樹の歴史を歩く

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鎌倉幕府 粛清の季節 畠山重忠と和田義盛【2022年11月】

【畠山重忠】
翌元久2年(1205)6月21日、北条時政は息子の義時と時房を館に呼び、畠山重忠・重保父子を殺すことを告げた。
義時も時房も驚いて、重忠の幕府創立に功績がきわめて大きいこと、重忠は妹婿であり、その子の重保は自分たちの妹の子だから「誅戮(ちゅうりく)は同意し難し」と言った。
しかし、牧の方は腹心の大岡時親を義時のもとへ行かせて重忠の謀反は既に発覚していることで、重忠の功績は功績であるが、陰謀は陰謀である、と言わせた。

が、時政は承知しなかった。稲毛重成に話し、三代将軍•実朝にも畠山重忠謀反を訴えた。
実朝はこの時まだ14歳で西も東もわからないから、畠山を討てといった。
義時は父のいうことに従わざるを得なかった。
6月22日早朝、三浦義村と佐久間太郎に命令が下され、由比ヶ浜(神奈川県鎌倉市由比ヶ浜)に続々と兵が集まった。
重保にも由比ヶ浜集合の連絡があったから、なにも知らないまま三人の郎党を連れて由比ヶ浜へ行った。
寅の刻(午後4時ごろ)だったが快晴の日で、浜辺はひどく暑かった。 
重保は警戒心はまったくないまま、三浦義村に近づいていった。
すると、兵たちが重保の馬を取り囲み、襲いかかって主従もろとも惨殺してしまった。

同じ日の午の刻(午前12時ごろ)北条義時は動員した大軍とともに武蔵・二俣川に到着した。
菅谷の館(埼玉県比企郡嵐山町大字菅谷)にいた畠山重忠は、鎌倉に異変があったという報せを受けて、とり急ぎ譜代の家臣である本田近恒、半沢成清以下一族郎党134騎を引き連れて、鎌倉に向かって出発した。
重忠は息子の重保が殺されたということを急報でわかっていたと思われ、本田、半沢は菅谷の館に立て籠って討手を待つほうがいい、と進言した。
しかし、重忠は鎌倉の一大事に駆けつけるのが武士というものだ、私自身を討つためであっても、後へは引けないといった。
我が子の重保が討たれたということなら、もはや思い残すことはない。
武士の意地を通して討ち死にするまでだ。生きたければ、引き取ってもさしつかえないと、眦を決した。

そして、鶴ヶ峰(神奈川県旭区本町•万騎ヶ原)に陣を敷くと、待ち伏せしていた義時の軍がこれを包囲した。
包囲の輪は夥しい矢を射掛け、その輪は次第に小さくなり、重忠軍の人数はどんどん減っていった。
申の刻(午後4時ごろ)愛甲季隆の射た矢が重忠の胸に突き刺さった。
「鎌倉武士の鑑」といわれた重忠はこうして42歳の生涯を閉じた。


【和田義盛】
建暦3年(1213)義盛は挙兵の刻限を変更して五月二日の申の刻(午前4時)にした。
予定からわずか半日早くしたのだが、このとき義盛軍はわずか150騎しかいなかった。
義盛はこの150を3手に分けた。 
幕府御所南門に50、義時の小町邸(宝戒寺)に50、幕府御所西門に50で攻撃を仕掛けた。
義時は攻められる前に二の鳥居の前にあった義盛邸を攻め、故意に負け、退却を装って幕府御所へ逃げ込み、義盛に幕府御所を攻めるように仕向けた、ともいわれる。
義時としてはそれが、義盛を将軍に向かって弓引く逆賊に仕立てあげなければならなかった。
ということで、義盛はこの策にまんまと嵌められたというのだが、充分有り得ることである。

とにかく幕府御所を攻めた義盛軍の最も強豪だといわれた朝比奈義秀が惣門を破り、御所の南の庭へ乱入し、御所に火を放って1部屋も残さず焼亡させた。
当然、その前に将軍・実朝は北門から外へ逃げ、すぐ裏手にある法華堂へ移っていた。義時も大江広元も一緒である。とにかく義盛は強かった。

戦いは夜まで続いたが、150騎ではどうすることもできず、その数は減っていくばかりだった。義時は兵を由比ガ浜へ撤収させた。
義時側の軍はこれを追わず、夜が明けるのを待った。
翌日は雨が降っていた。
義盛軍の食糧は尽き、馬も疲れ果てていた。

しかし、稲村ガ崎のほうから横山軍3千が到着した。
続いて義盛に味方する武士団が続々と到着してきたから、義盛軍は、一気に活気を取りもどした。
化粧坂切通しから別の味方も入ってきているということで、義盛軍の士気はあがった。
義盛は横山軍とともに再度幕府御所への突入を決行した。
若宮大路の守備についていた北条泰時の軍を蹴散らした。
が、それだけで、勝ち取った場所を戦勝地として維持する力がなかった。
酉の刻(午前6時ごろ)義盛が最も可愛がっていた四男・義直が、泰時の家来の伊具馬盛重に討たれた。

これを知った義盛は「今は戦う甲斐もなし」と号泣し、叫びながら馬を走らせ、戦意を喪失してやがて由比ヶ浜で江戸能範の家臣の一人に討たれた。
この時代の67歳にしては実によく戦ったと言えるだろう。
そのあと義盛の子供たちは次々と討死にし、軍は総崩れしていった。

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