シリーズ決断 トップランナーたちの哲学
シリーズ決断 トップランナーたちの哲学

どんな状況でも 勝ち方は絶対にある 敗北という屈辱を味わった男のリーダー論

文=TBSテレビ『バース・デイ』プロデューサー菊野浩樹

もうひとつ、リーダー・原辰徳を象徴するシーンが、今年の優勝会見だった。

原監督の横には、エース・菅野智之選手に加え、ある男の姿があった。
代走・守備固めの控え、鈴木尚弘選手だった。

優勝会見の場には、通常、監督以外にはエースや4番打者だったりと、シーズンでもっとも活躍した選手が同席する。菅野はエースであるから当然、同席する。
しかし、もうひとりの鈴木尚弘選手はレギュラー選手ですらない。
そんな選手が、優勝会見という晴れがましい場に登場する。
そこに、監督の意図がないはずがない。

原監督は現役時代、若大将と呼ばれ巨人の4番打者としてスター街道を走った。
一方で、晩年は苦しんだ。
先発をはずされベンチを温める日々も経験していた。
代打を出されたこともある。
それはスター選手として生きてきた原にとって屈辱的なことだったに違いない。

しかし、こうした経験が、原辰徳という監督を名将にしたのではないか。
選手としての"勝利"と"敗北"の味を知っているからこその選手起用。
その期待にこたえた選手に対する監督ならではの、粋な計らい。
それが、鈴木尚弘のような控え選手を、晴れ舞台に同席させた理由だった。

実際、今シーズンの鈴木尚弘の活躍は誰もが認めるものだった。
鈴木の走塁のおかげで勝った試合が何試合もあった。そんな鈴木の活躍を原監督は・・・"見ていた"。

どんな社会でも通じるやり方がそこにはある。
リーダーは苦しいときほど、前を向く。
そして地味な役割で地道にがんばっている部下に目を配る。

"勝利"と"敗北"を幾度となく経験して、さらなる高みへ。

今年のクライマックスシリーズは屈辱的な敗戦だったが、来年のジャイアンツはさらに手強くなってくるに違いない。原辰徳というリーダーがいる限り・・・。

(敬称・略)

コラム作者プロフィール

菊野浩樹

1968年 5月14日 生まれ
1992年 TBS 入社
「バース・デイ」(TBS系にて毎週土曜夕方5時~5時30分に放送中)企画・プロデューサー。 
これまで「プロ野球戦力外通告」「石橋貴明のスポーツ伝説」「SASUKE」「モニタリング」「サワコの朝」などを担当。2012年には「劇場版 ライバル伝説~光と影」の総監督を務める。現在はTBSテレビ編成局編成部 長期戦略担当部長。
12月30日、夜10時~「プロ野球戦力外通告 クビを宣告された男たち」
2015年1月3日、夜9時~「独占!長嶋茂雄の真実」
をTBS系列にて放送。

番組タイトルの『バース・デイ』とは、毎年、巡ってくる誕生日のことではありません。
夢を抱き、戦いに挑み、過酷な現実に直面した者たちに
訪れる、"人生に刻まれた、忘れられない大切な一日"その忘れられない一日を番組では『バース・デイ』と呼び、毎回、番組で取り上げる主人公が新しい自分に生まれ変わる瞬間を紹介していく番組です。

TBSテレビ『バース・デイ』
毎週土曜、夕方5時~TBSにて放送中!!
//www.tbs.co.jp/birth-day/

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