2021.04.01
オリジナルインタビュー第12弾!藤井秀悟さんが登場!
打撃投手と広報を兼務!“最多勝”裏方が語るチームの今
(取材日:2021年2月21日)
今治西高-早大。左投左打。1999年、ドラフト2位逆指名でヤクルト入り。2001年、最多勝に輝きリーグ優勝に貢献。ベストナイン選出。その後2008〜2009年日本ハム、2010〜2011年巨人、2012〜2014年横浜DeNAベイスターズと渡り歩き、約15年間活躍。2014年に現役引退。
引退後の2015〜2019年は巨人の打撃投手。2020年からはベイスターズの球団スタッフとして、打撃投手と広報、二足のわらじでチームをサポート。打撃投手として活躍する2015年以降からの背番号は「221(フジイ)」。
現役時代の2006年にオフィシャルブログ「野球小僧」を開設し、球界NO.1ブロガーとしても知られる藤井秀悟さん。今回は、そんな多彩な面を持つ藤井さんを、奇しくも春季キャンプ中の“2月21日“(フジイの日!?)に直撃!バッティングピッチャーと広報、それぞれの仕事についてや、仕事を通して見えるチームの今を語っていただきました。
インタビュアーは今回もこの人、現役時代から藤井さんとの親交も厚い、ベイスターズOB荒波翔が務めます。
(※本取材は2021年2月21日にリモート取材にて行われました。)
Interview Movie
実際のインタビューの模様を
動画でもお届け!
広報の仕事を
野球以外の新たな“武器”に!
本当にね。
翔にインタビューしてもらうなんてね(笑)。
では、さっそくですが、質問させていただきます。
現在、バッティングピッチャーと広報を兼務されていますね。広報の業務に関しては、ご自身で志望されたのでしょうか?
昨シーズンから裏方としてベイスターズに入りましたが、その前はジャイアンツでバッティングピッチャーをしていました。その頃から、いつか投げられなくなった時のことを考えて、「自分の中でひとつ武器になるものがほしい」「何か新しいことにトライしたい」と思っていたんです。
そんな時にベイスターズから声をかけてもらって。バッティングピッチャーということで入ってきましたが、ベイスターズのスタッフは何かしらの業務と兼務をすることが普通なんですね。なので、バッティングピッチャーと何かを兼務する、となった時に希望したのが広報ということになります。
つまり、ご自分で広報になることを選んだんですね?
そうですね。いくつかの選択肢がある中で、広報を選びました。
広報の仕事というと、取材対応などのイメージがありますが、選手のスケジュール調整をはじめ、その他いろいろな細かいお仕事もたくさんされていますよね。さらにバッティングピッチャーとしての仕事もある。藤井さんの大まかな1日のスケジュールや普段の仕事の流れを教えてください。
試合前のある日を例にすると、バッティング練習が始まると、まずはバッティングピッチャーとしてバッターに対して20分ほど投げます。球数は100球くらいになります。投げた後はティーバッティングの手伝いをしたり外野でボール拾いをします。
その前後に取材依頼が来ている時などは、広報として選手にスケジュールを聞いて日程調整をしたり、という感じです。
そのほか、これまではパソコンを扱った経験もそんなになかったんですけど、取材依頼などのメール対応もしています。メールの中で使うビジネス用語など、知らないことも多いので一から勉強しています。
なるほど!
さらに、ベイスターズはSNSに力を入れているので、Twitterに載せる写真を撮影、編集、投稿するのも広報の大事な仕事のひとつです。
また、試合で活躍した選手の囲み取材の対応もします。今だと、新型コロナウイルス感染拡大の影響で囲み取材ができないので、リモート取材で選手とインタビュアーを繋げる、というのが主な仕事です。
先程の話の中で、「選手にスケジュールを聞いて日程調整をする…」と、さらっとおっしゃっていましたけど…。自分が選手だった時を思い出してみても、選手のスケジュールを調整するのは大変なのではないかと思います。
そうですね。困ってしまうのは、やっぱりシーズン中の調整です。
選手にとっては、試合に出て活躍することが一番。邪魔にならない、影響しないタイミングを選手に聞いて調整するのですが、やっと調整できたと思ったらファームに落ちてしまったり…。けっこう難しいですね。
共に過ごす選手たちの活躍を
自分で紹介できる喜び
広報の仕事をしてみて、良かったこと、しんどかったこと…昨シーズンからの経験の中で気づいたことなどを教えてください!
しんどいというのとは少し違うのですが、始めたばかりの頃は、こなしていくだけでとにかく精一杯でした。でも少しずつ、自分なりのやりがいを見つけられるようになってきました。
バッティングピッチャーとして、練習で投げた時に打ってくれた選手が試合で活躍してくれると、本当に嬉しいものなんです。広報をやっていると、自分でその選手たちの活躍をファンの方々に紹介できる。選手たちが試合以外で見せる、いろいろな面を知ることもできますし、そういうところにやりがいを感じられるようになりました。
なるほど。
あと…大変なのはやはり、何をするにも「選手には絶対迷惑をかけてはいけない」という気持ちが常にあって、細かいところにまで気を配らなければならないことですかね。
ですよね〜(笑)。
ちなみに荒波さんは現役時代、取材はたくさん受けてこられたと思いますが…。
逆質問ですか!?
荒波さんの場合は、広報泣かせなことはなかったと思うのですが…(笑)。
なかったですよ!協力的でした(笑)。
Twitterの映像を
ファンと選手を繋げる架け橋に
広報の業務として、TwitterなどSNSの発信も担当しているということですが、藤井さんは現役時代からブログを活用していて、撮影も上手ですよね。
Twitter用の写真や動画は、どんなことを意識して撮影していますか?
ベイスターズの公式Twitterでは、動画をアップすることが多いんです。選手たちが野球をしているところを見てほしいのはもちろん、やっぱりロッカールームとかの試合の裏側って面白いじゃないですか。
そうですね。ロッカールームとなると、見せられないことも多いかもしれないですけどね(笑)。
見てほしいけど、見せられない…確かにそういう部分はありますね(笑)。
Twitterの動画は、そういうところをうまく編集して(笑)、ベイスターズファンや野球ファンの方々に見てもらうのはもちろん、野球にそれほど興味のない人にとっても、ベイスターズを知る窓口として見てもらえたらベスト、という思いで発信しています。
今は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、キャンプも無観客。ファンの方々が選手を直接見られる機会がなかなかありません。SNSで選手とファンが繋がれるっていうのは、僕自身にはとっても新鮮です。ファンのみなさんにも、直接会うことが難しくなってしまった選手たちの姿が見られるのは、すごく嬉しいことだと思います。
そうですね。反響があると、やりがいも大きいです。
選手にとっても、ファンの方々に見てもらいながら試合をするのが一番。それができない現状の中、広報としては、Twitterなどを通してファンと選手が繋がれるよう、色々カバーしていきたいと思っています。
ちなみに“撮れ高”の高い選手はいたりしますか?
「この選手を載せるといっぱい見てもらえるから、この選手を載せよう」というのではなく、この選手の「○○なところ」を載せたからたくさん見てもらえる、というのを目指しています。
例えば近々で言うと、三嶋一輝投手がブルペン入りした時の映像。事前に三嶋投手とコーチの許可を得た上で、キャッチャーの後ろ、審判が立つところにカメラを構えて、三嶋投手にボールを投げてもらいました。あの豪速球を撮るのは命がけでしたけど、反響はすごく大きかったです。
プロ野球選手にならない限り、三嶋投手の球をその位置から見ることはまずできない。打席に立たないとわからない感覚を体感してもらえる貴重な映像ですね。ファンの方にはめちゃくちゃ嬉しい映像ですよね。でも撮るのはめちゃくちゃ怖そうです!
怖かったですね。
キャッチャーに「ちゃんと捕ってね」とお願いしてしまいました(笑)。ちゃんと捕ってくれるに決まってるんですけどね。それでも怖くて。
音だけでも怖いですもんね!
そうですね。
それから、こうした映像を通して、野球少年・少女たちに、プロ野球選手のすごさを知ってもらいたいという思いもあります。このキャンプ中には、伊藤光捕手のブロッキング技術の高さがよく分かる映像をアップしました。プロの技術をしっかり映像で見せることができて反響も大きく、自分としても満足しています。
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勢いがダントツ!
ベイスターズと他球団との違い
現役時代を含め、藤井さんはこれまで様々な球団に所属してきました。そんな藤井さんから見て、ベイスターズが他の球団と違うところはどんなところでしょうか?
良い意味で、若い選手とベテラン選手の間に遠慮がない。チームワークがしっかり取れているところですね。他の球団に行けばベテランと呼ばれるような年齢ではないけれども、大和選手や宮崎敏郎選手など、中心となるベテラン選手を若手が盛り上げていて、勢いのあるチームだなと感じさせる。
相手チームのピッチャーという現役時代の立場から見ると、打線に勢いが付くと一気に点を取られるという印象が強いです。当時のミーティングでもやっぱりね、「1番、2番の荒波をまずはどうするか…」という対策に一番時間を割いていたりしたので(笑)。
いやいやそんな!さすが、お上手ですね(笑)。
バッティングピッチャーから見た
“すごい”バッターとは
バッティングピッチャーとしての立場から、今のベイスターズで特にすごいと思う打者はいますか?
昨シーズンは誰に投げることが多かったのですか?
昨シーズンは、誰に投げるっていうのはそこまで固定していなくて。
ただ、タイラー・オースティン選手とホセ・ロペス選手にはよく投げましたね。オースティン選手はやっぱりパワーがすごい。打つポイントが決まっているので、まずはそこに向かって投げる。オースティン選手が打ち始めると、少しずつ打つポイントをずらしていって…という練習スタイルなのですが、投げる位置に細かい調整が必要で、単にストライクを投げたら良いっていうのとは違う難しさがありますね。
そうですよね。外国人選手は特に、「逆方向から打ちたい」というような、色々なオーダーがあるイメージです。
選手によってストライクゾーンが違うので、投げ分けるのに少し苦労したりすることも。オースティン選手の後に柴田竜拓選手に投げる時なんかは、一気にストライクゾーンが狭くなる感覚になったり(笑)。
ちなみに、一番バットコントロールが上手いと思ったのは宮崎選手ですかね。
なるほど。打ち損じが少ないというか、球をしっかり芯で捉えられる確率が高いという感じですよね。
はい。リストの柔らかさだったり、ヘッドの走りだったり、タイミングの合わせ方だったり。すごく他とは違うものを感じますね。若手には、ぜひ見習ってほしいなと思いますね。
打撃投手になったきっかけは
まさかの…!?
今のお話の中で、バッティングピッチャーならではの苦労についても触れていらっしゃいましたが、バッティングピッチャーとして、他にも難しさを感じることはありますか?
一年間投げ抜くということですかね。一年間バッターが打ちやすい球を維持して、コンスタントに投げ続ける。それが一番難しいですね。僕が休んだら選手は、左ピッチャーの球を打つ練習が出来なくなってしまう。まずはそこが一番大変で一番難しいです。その上で、バッターの希望する球を投げる。低めが好きな選手、高めが好きな選手、それぞれの要望に答えていくという感じですね。で、その中で難しいのがバッターが調子を落とした時です。
あぁ…なるほど。
今まで打っていた強い球が返ってこなくなると、そこからはメンタル勝負というか…。そこで「あぁダメだ」とこちらも思ってしまうと、ボールばかりになって、どんどんマイナスの方へマイナスの方へいってしまう。なので、とにかく一定のリズムで投げることを心がけています。そして自分の投げたボールを打つことで調子を取り戻してほしいな、と。最終的にはそこまでいけたらいいなと思いますね。
さすがですね。
そういえば僕も現役時代、藤井さんに投げてもらったことがありましたね。
そうそうお互いが現役の時にね、投げさせてもらったことがあったね。
自主練習の時でしたね。藤井さんはポンポンポンポン、本当に軽〜くストライクを投げ込んでくれるので、休む暇がなかったという印象です(笑)。
いやいや!あの時は、バッターが良かったから良いリズムで投げれた。
あの時に荒波選手に打ってもらえたことが、バッティングピッチャーになったきっかけと言っても過言ではない(笑)。
さすがに、それはないはずです(笑)。
いやいや本当に。あの時は確か、翔とあと何人かいて投げさせてもらった。
そうそう、そうでしたね!
あの時は本当にありがとうございました!
第二の上茶谷選手を探せ!
選手の意外な一面を発掘
広報として、「今後、こんな映像を撮ってみたい」というのはありますか?
現実的に進めようとしているものでも、「無理かもしれないけど、いつかは」という漠然としたものでも。
新人や若い選手の人となりや魅力を紹介する映像を撮りたいと思っているのですが、彼らは野球でまだ結果を出せていないので、実はちょっと難しさがあったりします。
例えば、野球以外での彼らの素の部分を引き出し過ぎると、「そんなことしている暇があったら練習した方が良い」という意見があることも予想されたり…。
でも、そういう中でも、やっぱりできるだけ選手の素の部分を見せていきたいですね。野球でのすごいところはもちろんのこと、試合中、試合後、みんなが1勝に対して全力で勝ちに行っているその裏の姿だったり。その上で素の姿を見てもらいたいな、と。
ちょっと今、上茶谷選手のものまねに頼り過ぎている部分もあるしね(笑)。
上茶谷選手、面白いですからね(笑)。
多彩ですよね。本当にね。
ファンのみなさんも、上茶谷選手のものまねシリーズは楽しみに待っていると思うので、ぜひそれは続けていただきながら、新たな選手の魅力も発掘してもらえたら。
そうですね。一芸というか、「こんなこともできるんだ!」っていう選手の意外な一面を紹介していきたいですね。
僕も一人のファンとして楽しみにしています!
選手もファンも裏方も!
目指すは優勝そして日本一
最後にファンのみなさんに一言お願いします!
バッティングピッチャーと広報、チームの裏方ではありますが、横浜DeNAベイスターズの優勝は、選手、ファンのみなさん、そして私たち裏方、みんなの一つの目標であり、目指すところだと思います。優勝して日本一になるまでを、広報としてみなさんに見てもらうことが出来たら嬉しいなと思います。このような状況下ではありますが、応援よろしくお願いします!
ありがとうございました。
翔だから緊張しなかった!
翔のことも紹介したかったな〜。
そうですね。自分が現役のときにも、藤井さんが広報だったら良かったな〜。
うん、こんな風に現役時代の繋がりもあるし、みんなすごく協力してくれる。ベイスターズのスタンスとして、基本的に取材を断らないっていうのもあるけど、選手が本当に協力的。広報だけの役割だと、選手にお願いするだけの立場になってしまうけど、バッティングピッチャーをしていることもあって、選手からは「ありがとうございます」と言ってもらえる関係性でもある。
そこが現役選手だったことと、兼務をしていることの強みかな。
普段のコミュニケーションも含めて、僕も藤井さんだったらやりやすかっただろうな。自分から色んな提案もできそうじゃないですか。選手たちもそうなんでしょうね。それこそが藤井さんのキャラクター、人間性ですよね。現役の選手たちをよろしくお願いします。また今度直接会って話せるのを楽しみにしています。
本当はね、みんな翔がキャンプに来てくれるのを楽しみにしていたんだけどね。今はやっぱりなかなか難しいよね。
次はぜひ、ハマスタでよろしくお願いします!
ありがとうございました。
ありがとうございました。
©YDB
次回は、横浜DeNAベイスターズ 京山選手のインタビューを公開予定です。
是非、お楽しみに!
こういう風にあらためて話をするのは、なんだかちょっと恥ずかしいですね(笑)。