8月21日(金)にマツダスタジアムで行われる
広島東洋カープ対読売ジャイアンツの公式戦を、
J:COMで独占生中継!
放送を記念し、プロ野球に熱い思いを抱く
著名人のインタビューをお届けします。
野球中継の楽しみ方から、チームの注目ポイントまで、
プロ野球を愛する人々ならではの目線で迫る!
北別府学(きたべっぷまなぶ)/'57年7月12日、鹿児島県出身。高校時代は宮崎県立都城農業高校のエースとして活躍。76年に広島東洋カープへ入団。MVP、沢村賞、最優秀投手など数々の賞を獲得。200勝以上を記録して’12年には野球殿堂入りを果たす。現在は「勝ちぐせ。サンデー 恋すぽ」、「HOME Jステーション」(どちらも広島ホームテレビ)、「北別府学の裏ブログ」(広島FMラジオ)にレギュラー出演中。
――今シーズン、ここまでのカープの戦いぶりはいかがですか?
「先発ローテーション全員とは言えないけど、投手陣は予想通りの活躍をしているんじゃないかなと思います。黒田(博樹)がメジャーから帰ってきて、マエケン(前田健太)もエースらしい働きをしていますよね。福井(優也)も昨年と比べると、一回り成長したピッチングを見せてくれています。ジョンソンもいいし、大瀬良(大地)が後ろに回る形になって。
でも、なかなか勝ちきれないんですよ。やっぱり、打線がねぇ…。もうちょっと頑張ってもらわないと。上手く絡めば点がはいるんですけど、思うように機能していない。だから、5割が近くなると失速して、借金生活から抜け出せない。そこを突き抜けることができたら上位で上手く戦えると思うんですけど、あと一歩足りない印象ですね」
――黒田選手、新井(貴浩)選手の復帰は、チームにとっていい刺激になっていますか?
「15年近くずっとBクラスだったチームが、去年、一昨年とAクラス入り。クライマックスシリーズへの進出を果たして、人気が復活してきましたよね。『カープ女子』という現象まで起きて、新しい風が吹いた感じ。純粋に、カープファンが増えたことをうれしく思っています。
黒田の復帰も大きかったですよね。メジャーに行く前は、ストレートとフォークがメイン。他にも何か投げていたかな? でも、そんなに球種は多くなかったですよね。それが、メジャーで投げるようになって球種が豊富なほうがいいことに気付いて、ツーシームをはじめ、いろいろ覚えたのが良かったのかも。投球術も、日本にいる時は100%、120%で投げていたものを、80%ぐらいに抑えてかわすことを学んだ。その成果が、数字にも表れているような気がします。
新井の場合は、キャンプやオープン戦の時も、当然4番候補でしたし、緒方(孝市)監督も『スタメン起用は当然あります』と言ってました。ただ、サードのポジション争いに勝てなかったらゲームに出られない状況でもあったので、今のような常時4番でスタメンという形は、誰も考えてなかったんじゃないでしょうかね。新井自身、自分は広島に帰って来られないと思っていたでしょうから、球団やファンの方が受け入れてくれたことに意気を感じているだろうし、感謝の気持ちが強いと思います。どちらかと言えば“燃える男”ですから(笑)。責任感も強いし、今年は年齢を超えた若さが出ている。それが、きちんと結果につながっているんじゃないですかね」
――先ほど話に出てきた「カープ女子」をはじめ、ファン層が広がったような気がしますが?
「休日は別として、昔の広島市民球場の時は、平日に子どもや女性が球場に来るというイメージはあまりなかったですね。かなり、ひどい野次が飛び交うような雰囲気でしたし。それが、マツダスタジアムになってからは家族で野球を楽しむ球場に変わりましたね。『カープ女子』と言われる女性ファンはもちろん、リピーターもかなり増えているみたいです。広島駅の近くに移ったことも大きいでしょうね。
電車を利用して観に来るファンもたくさんいますから。以前は、広島駅まで電車で来て、さらに路面電車に乗って球場まで、という道のりでしたから。交通の便がよくなったことで足を運びやすくなったと思います。新幹線からも球場が見えるし、球場のレフト側を新幹線が走る風景も見ていて楽しいですよ」
――現役時代の巨人戦の思い出は?
「僕がプロ入りしたのは、巨人のV9時代が終わって、長嶋(茂雄)監督1年目の時。当時は広島をはじめ、巨人以外のチームも優勝するようになっていました。僕が30歳になる前ぐらいの『広島×巨人』戦は、お互いにピッチャーが揃っていたので、投手戦になることが多かったですかね。広島は大野(豊)さんや川口(和久)がいましたし、巨人は江川(卓)さん、西本(聖)さん、定岡(正二)さんが活躍していた頃ですから。1回や2回しかないチャンスをものにされたら終わってしまうような試合展開。1、2点の勝負になることが多かったから、試合時間も短かったですよね。下手したら夜の8時半頃には終わってたんじゃないかな(笑)。
巨人以外のセリーグのチームは、巨人に勝たないと全国区になれないという思いが強くあったし、巨人に勝つことで“箔がつく”ようなところがありましたからね。ただ、広島の場合は、90年代前半から長いトンネルが続いてしまうんですけど…。やっぱり、巨人との差がついたのは『FA制度』が導入されてからですよね。巨人は獲得する側ですけど、広島は戦力を出す側になってしまいましたから。じっくり育ててきた4番を何人獲られたことか(笑)。
巨人は選手の育成よりも補強を重視。広島は素質のある高校生を獲ってきて育てるチーム作り。今のカープの首脳陣は、FAを取得しながらも残留してチームの看板選手になったメンバーばかりですから。主砲はどんどん出ていきましたけど、いい選手が育っているチームだなという印象がありますね」
――今回の「広島×巨人」戦は、CMが全く入らない完全中継が見どころの一つなんですけど、北別府さんの注目ポイントは?
「う~ん、いろいろあるとは思うんですけど、それぞれのベンチの様子なんかは観ていて面白いかもしれませんね。首脳陣の表情がどんな風に変化していくのか。さっきまで笑っていたのに、今は結構渋い顔しているなとか(笑)。ゲームの展開によってはベンチの雰囲気も変わってきますから、ぜひ1回から9回まで通して観ていただきたいですね」
――中継の解説者は江夏豊さんと元木大介さん。広島OBと巨人OBが顔を揃えましたけど、お二人との思い出は?
「江夏さんとは一緒にプレーさせていただきました。それこそ、あの『江夏の21球』の時は、池谷(公二郎)さんと一緒に3塁側のブルペンで投げていましたから。僕はプロに入って、まだ4年目だったかな。あの頃は、ただただ先輩についていく感じでしたからね。古葉(竹識)さんから『肩を作っておけ』と言われてブルペンで投げていましたけど『僕らどこで投げるんですかね?』って、池谷さんと話してました。だって、ノーアウト満塁という場面で、ひっくり返されたら試合終了という状況。僕らは同点で終わるなんてことは考えてないんですよ。抑えるか、点を取られるかしか頭にない。でも、あとで古葉さんに聞いたら『同点になった時のことを考えていた』と。その時に、指揮官というのはそこまで考えながらやってるんだと思いました。僕は通算213勝なんですけど、この勝ち星の中には江夏さんに助けられた試合がいっぱいありました。あの頃のピッチャーは先発イコール完投というイメージ。でも、江夏さんがリリーフというポジションを確立したことで、先発は7回、8回まで抑えればOKという形ができたんです。それと、江夏さんは自分と同じサウスポーということで大野さんの面倒をよく見ていました。球種や投球術を教えたりして。“教え子”という意味で、素晴らしいサウスポー投手を広島に残してくれた先輩です。
元木くんは…、打たれたとか抑えたとかという記憶があまりないんですよね(笑)。ただ、バッターとしてはイヤラシいタイプだったなという印象があります。何を考えているか分からないというか。バッティングの形がきちんとしていて打つタイプではなく、崩されながらもヒットにする。詰まった打球で打ち取ったなと思うと三遊間の内野安打になったりして。塁に出すとうるさい存在で、やりにくいバッターではありましたね」
――番組内で、最初にヒットを打つのは誰かを当てるクイズ企画があるんですけど、ズバリ北別府さんの予想は?
「う~ん、誰なんでしょう(笑)。その頃のチームが上手く機能していなければ、丸(佳浩)が一番に戻っている可能性もあるんでしょうけど、普通に行けば田中(広輔)や菊池(涼介)が上位を打ってるでしょうから、彼らにチャンスがありそうな気がします。菊池の状態次第ですかね。いずれにせよ、一、二番に入った選手のどちらかじゃないですか。やっぱり、広島が浮上していくには菊池&丸の“菊丸コンビ”がカギを握っていると思います。この二人の状態が上がってこないとクリーンアップも機能しませんから。何とか彼らには頑張ってもらいたいですね」
――ちなみに、対する巨人の中で怖い存在の選手は?
「それは、やっぱり阿部(慎之介)じゃないですか。亀井(善行)には申し訳ないけど、彼が4番を打っている巨人は怖くないですよ。一昨年だったかな、阿部の調子が良かった時の巨人は手がつけられなかった。いいところでホームランを打ってたしね。まぁ、体との相談になるんでしょうけど、阿部が4番に座る巨人の打線は他球団にとっては脅威ですよ」
撮影:田浦ボン
取材・文:小池貴之