写真:二宮清純

スポーツ×教育コラム by 二宮清純

2025.5.25

井上尚弥を生んだキッズボクシング。
少年期に磨いた基本スキルの重要性

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さる5月4日(現地時間)、米ネバダ州ラスベガス。世界スーパーバンタム級4団体統一王者の井上尚弥選手は、挑戦者のWBA世界同級1位のラモン・カルデナス(米国)選手を8回TKOで下し、4度目の4団体統一王座防衛に成功しました。「モンスター」の異名をほしいままにする井上選手ですが、彼がキッズボクシング(U-15ジュニアボクシング大会)の第1回大会でチャンピオンになったことは、あまり知られていません。

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初代チャンピオン

井上選手がキッズボクシングの初代チャンピオンに輝いたのは2008年、彼が中学3年生の時です。その時の写真が専門誌『ボクシングビート』に掲載されていますが、まだ初々しい顔をしています。

神奈川県座間市出身の井上選手は、アマチュアボクサーだった父・真吾さんの影響で、小学1年生の時にボクシングを始めました。“父子鷹”と聞くと、劇画『巨人の星』の父・星一徹と飛雄馬の関係が連想されますが、決してスパルタ式ではなかったそうです。

それについて、井上選手はこう語っていました。 「父はジムで練習できない時は家で練習していました。その姿を見て、僕も自然と強くなりたいと思いました。しかし、父から、ああしろ、こうしろ、と言われたことは一度もない。僕の方から“ボクシングを教えてください”と頼んだのを覚えています」

高校に進んだ井上選手は、全日本選手権と国際大会(インドネシア大統領杯)を含む7冠に輝きます。目指したのは12年のロンドン五輪。前年の世界選手権で、井上選手はベスト16に進出し、出場権獲得まで、あと1勝と迫ります。しかし、キューバの選手に判定負け。その後のアジア選手権でも決勝で敗れ、五輪出場の望みは潰えました。

五輪の金メダリストからプロの世界チャンピオンへ――。そう目標を変えた井上選手が所属先に選んだのがJR横浜駅近くの大橋ジムでした。

ジムを主宰する大橋秀行会長は元WBC・WBA世界ストロー(現ミニマム)級王者。井上選手が初代チャンピオンに輝いたキッズボクシングの大会を主導したのも彼でした。 「このプロジェクトを始めたのは07年、僕が東日本ボクシング協会会長に就任した時。なぜ始めたかというと、僕の現役時代、外国の強い選手に勝つには、根性やスタミナしかなかったんです。要するに自ら輝くのではなく、相手の光を消して勝っていた。

しかし、それには限界がある。本当に強いチャンピオンは技術で相手を圧倒できる。それには早いうちから始めるしかない。ボクシング技術の習得は、練習時間の量と比例する。これは歳をとってからでは遅いんです」

©共同通信社

安全性に配慮

井上選手については、どうだったのでしょう。 「尚弥については小学生の頃から見ていましたが、基本的にはフットワークの練習ばかり。あとはジャブとストレート。その繰り返しです。この基本が今に生きているんじゃないでしょうか」

子どもがボクシングを始める上で、親が最も心配するのが安全性です。それを確保するためJKBA(日本キッズボクシング協会)は大きめのグローブ(キッズモスキートからキッズライトウエルターまでを12オンス、キッズウエルターからキッズヘビーまでを14オンス)やヘッドガードの着用などを義務付けています。さらには試合前と試合後の健康診断も実施しています。

今年1月12日には、日本プロボクシング協会ジュニア・チャンピオンズリーグ実行委員会による「第1回井上尚弥杯ジュニア・チャンピオンズリーグ国際親善大会」がボクシングの聖地・後楽園ホールで開催されました。
日本の小学3年生から18歳までのジュニアボクサーと、韓国・中国のジュニアボクサーが参加し、4つのクラスで熱戦が繰り広げられました。

キッズボクシングの創設に尽力した大橋会長には、「スキルは小さいうちに磨け」という持論があります。ボクシングに必要なステップワークにしろ、ワンツーの打ち方にしろ、ひとつの技術をマスターすると、それが自信になって、子どもは自らの意思で、次の課題に積極的に取り組み始めるというのです。その典型が井上選手だったと。モンスターは「1日にして成らず」です。

サイン:二宮清純

二宮清純

二宮清純 スポーツジャーナリスト

写真:二宮清純

1960年、愛媛県生まれ。
スポーツ紙や流通紙の記者を経てフリーのスポーツジャーナリストとして独立。オリンピック・パラリンピック、サッカーW杯、ラグビーW杯、メジャーリーグ、ボクシングなど国内外で幅広い取材活動を展開。明治大学大学院博士前期課程修了。広島大学特別招聘教授。大正大学地域構想研究所客員教授。「スポーツ名勝負物語」「勝者の思考法」など著書多数。

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