写真:二宮清純

スポーツ×教育コラム by 二宮清純

2025.6.24

空手大会で注目集める「少年演武」。
子供の声響く道場は“街のオアシス”

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フルコンタクト空手のオリンピック実施競技を入りを目指すNPO法人全世界空手道連盟新極真会は、「心極める」を理念に掲げ、「青少年の育成」にも力を入れています。

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目指すは黒帯

青少年育成の実践版とも言えるイベントが、国際大会や国内大会の合間に行なわれる「少年演武」です。主に各支部に所属する少年少女たちが参加します。この6月1日、有明アリーナで行なわれた「全世界フルコンタクト空手道選手権大会」には、約60人の小学生が演武を披露してくれました。

空手着に身を包んだ少年少女たちの帯の色はさまざまです。新極真会によると、帯の色は白の無級からスタートし、10・9級=オレンジ、8・7級=青、6・5級=黄、4・3級=緑、2・1級=茶、初段=黒と上達のレベルに応じて変わっていきます。

少年演武を担当する内藤健太師範(新極真会大田南支部内藤道場)によると、「昇級審査を経て、級位や段位が上がっていくのですが、これが子供たちにとっては空手を続ける上での大きなモチベーションになっている」とのことです。

そう言えば、ビジネスの世界に「ブラックベルト」という用語があります。主に製造業において、品質管理や業務プロセスの向上を目指す「シックスシグマ」という手法を担うリーダーを指します。武道の「黒帯」に由来することは言うまでもありません。

話を少年演武に戻しましょう。少年演武は基本→移動→初級型→上級型→板割りという流れで進行していきます。まずリズミカルな音楽に乗って登場した少年少女たちは、空手の基本である正拳突きや中段突きを観客たちに披露します。その後、裏拳や手刀などに移行していき、型のひとつである三戦(さんちん)立ちも披露し、上段蹴りや回し蹴りも繰り出します。帯の色によって技の完成度にバラツキはありますが、“豆拳士”たちは真剣そのものです。

©スポーツコミュニケーションズ

「押忍」と大声で挨拶

少年演武のハイライトは、突きや蹴りでの板割りです。バットを手にして襲いかかる大人に少女がまわし蹴りを浴びせ、前転しながらかかとで板を割るシーンは圧巻です。護身術としても有益なことがわかります。

礼儀作法も、しっかりしています。舞台を降りる際には全員が前方と後方に向かって、きちんと礼をします。その時に発する「押忍(おす)」という大声での挨拶は、観客への感謝の気持ちが込められています。 「また空手には声を出す効能もあります」

内藤師範はそう前置きして、続けました。 「最近はマンションなどの集合住宅住まいの子が多く、大きな声を出すことに慣れていない。しかもひとりっ子が多く、他の子供たちと関係性をつくるのが上手ではない。

そこで稽古が始まる前に、必ず僕は言います。“声を出せ!”“気合を入れろ!”と。声を出すことは元気さを取り戻す第一歩。道場で大声を出せば、少々嫌なことがあっても吹き飛びます。

それに腹の底から声を出すことで、何をするにも積極的になれる。これまで消極的だった子が、ウチの道場で大声を出し、汗をかくことで前向きに物事に取り組むようになった例を、いくつも見てきました」

言われてみたら、確かにその通りです。大声を出すことで筋肉の出力が5~6%アップすることが、最近の研究では明らかになっています。それに加えて、呼吸機能の向上、血流の促進、姿勢の改善にも効果があることが認められています。また精神的な効果としては、ストレスの軽減、集中力や自己肯定感の向上などがあげられます。

ストレス社会を生きているのは大人だけではありません。子供たちの元気な声が響き渡る空手道場は、街の中のオアシスの役割を果たしているともいえそうです。

サイン:二宮清純

二宮清純

二宮清純 スポーツジャーナリスト

写真:二宮清純

1960年、愛媛県生まれ。
スポーツ紙や流通紙の記者を経てフリーのスポーツジャーナリストとして独立。オリンピック・パラリンピック、サッカーW杯、ラグビーW杯、メジャーリーグ、ボクシングなど国内外で幅広い取材活動を展開。明治大学大学院博士前期課程修了。広島大学特別招聘教授。大正大学地域構想研究所客員教授。「スポーツ名勝負物語」「勝者の思考法」など著書多数。

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