
2026.2.25
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全日本野球協会によると、2007年に66万人を数えた小・中学生の野球人口は、2020年には40万人にまで減少しました。そんな中、東京のど真ん中で、懸命に白球を追う子どもたちの姿がありました。
現在、千代田区少年野球連盟加盟チームは、学童の部と少年の部を合わせ、9チームあります。その中の1つが区立番町小学校校庭をメインの練習場とする番町エンジェルスです。約1300㎡の校庭は、全面タータンです。
番町エンジェルスは1968(昭和43)年に創設された男女混合の軟式野球チームです。練習は火、水、金の朝7時10分から8時。土日祝は8時から11時です。平日の朝練習だけ参加する子どももいます。現在は、1年生から4年生までの約20名が活動しています。
監督は大学4年生まで野球経験のある藤岡一紀さん。自身の息子も番町エンジェルスの選手です。
藤岡監督は自らの指導方針を、こう語ります。
「挨拶や礼儀、道具を大切にすることを教えています。日頃からの道具磨き、ゴミ拾い、親の手伝いなど徳を積むことをしてほしいと伝えています。やはり、子どもは凡打したら悔しくて、ヘルメットを投げ捨てたりします。そういう時には注意します」
取材に訪れたのは、2月のとある土曜日。この日は7名の選手と2名の体験者がグラウンドにいました。監督が「取材に来てくれる人に挨拶しよう」と促すと、気持ちのいい挨拶が返ってきました。
練習はキャッチボールから始まり、内野の通常ノック、ゲッツー練習、外野からの中継、ピッチングマシンを使ったバッティング練習へと移行していきました。
最後は子どもたちが待ちに待った紅白戦です。人数が少ないため、ピッチャーの代わりにマシン、キャッチャーは置かずにネットで対応しました。外野はひとりです。
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藤岡監督は初心者に向け「審判が号令をかけたら、ベンチから走ってくるんだよ」とやさしく指導します。ただし、バットを投げ捨てる子には、「バットは投げない! 投げちゃダメ!」
野球未経験の小学1年生が出塁すると、上級生が「ゴロだったら走るんだよ」「フライだったら一塁に戻って」と丁寧に教えます。試合は5対5の引き分けに終わりました。
試合後、藤岡監督に話を聞きました。
「この地域は医療関係者、弁護士、金融関係、IT系、経営者などが多い。イレギュラーバウンドで顔にボールを当てて、鼻血を出す子もいます。保護者に耳鼻科の先生がいるので、みんなを集めて適切な止血方法を教えてもらったりもしています。また学校のランチルームを借りて、保護者に金融関係の業界の話、IT関係の話、会社経営とは、などを講義してもらうことも。夢や目標がまだ決まっていない子どもにとって、何かのきっかけになればいいなと。私が子どもの頃に、こんなのあったらよかったなぁ、というものを実現していきたい」
そして、こう続けました。
「土地柄、中学受験する家庭が多いんです。実際、私の長男も中学受験しました。受験のために5~6年生になると野球を辞めて、勉強に専念する子が多い。しかし、体を動かす機会を無くすとストレスが溜まるんです。少し早起きして登校し、野球を楽しむ。その方が勉強も頑張れると思うんです。そのために平日の朝に練習時間を設けています」
試合が終わったのは午前11時ごろ。寒さを吹き飛ばす子どもたちの全力プレーに「あっぱれ!」をあげたい気持ちになりました。
(取材・大木雄貴、構成・二宮清純)
二宮清純
1960年、愛媛県生まれ。
スポーツ紙や流通紙の記者を経てフリーのスポーツジャーナリストとして独立。オリンピック・パラリンピック、サッカーW杯、ラグビーW杯、メジャーリーグ、ボクシングなど国内外で幅広い取材活動を展開。明治大学大学院博士前期課程修了。広島大学特別招聘教授。大正大学地域構想研究所客員教授。「スポーツ名勝負物語」「勝者の思考法」など著書多数。

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