写真:二宮清純

スポーツ×教育コラム by 二宮清純

2026.5.25

ウォーキングサッカーの魅力と役割。
中村俊輔「繋がりを感じられ新鮮」

写真:©JFA
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公益財団法人日本サッカー協会(以下JFA)とキリンホールディングス株式会社(以下キリン)は共同で5月17日、ウォーキングフットボールイベント「JFA×KIRIN キリンファミリーチャレンジカップ2026in千葉」を高円宮杯記念JFA夢フィールド(千葉市内)で開催しました。一般参加者は284名(計32チーム)。ゲストとして参加した元日本代表の中村俊輔さん、森脇良太さん、元なでしこジャパンの宮間あやさん、阪口夢穂さんもプレーしました。

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「“だいたい”5人対5人」

ウォーキングフットボールは言わずもがな、歩いて行なうサッカーのことで「2011年7月、イングランドで行なわれた55歳以上の高齢者の健康のための競技」が起源となっています。

JFAはウォーキングフットボールを「年齢、性別、サッカー経験や障がいの有無にかかわらず、大人も子どもも一緒に楽しめる」と定義しています。誰もが安心、安全にプレーできるようJFA独自のルールも設定されています。以下にルールの概要を記します。

・全員歩いてプレー(目安は1秒間に2歩)
・ヘディング禁止
・ボールをけり上げる高さは1.2mまで(ゴールの高さと同じ)
・オフサイドはなし
・相手が保持しているボールを取らない(前を塞ぐだけの接触プレー禁止、JFA独自ルール)
・スライディング禁止
・ピッチサイズは横20m×縦30m
・5人制

さて試合が始まり、ピッチに目を向けると、5人より多いチームもありました。疑問を審判にぶつけると「“だいたい”5人対5人です」と。だいたい、という返答がこの競技の特質を表しているようでした。

「今日のルールだと、小さいお子さんは、お父さんかお母さんと手を繋いだり、抱っこされた状態の2人1組でピッチに入っています。だから“だいたい”5人対5人という言い方になってしまうんです」

284名の年齢層は0歳から89歳まで。89歳の男性もハツラツとプレーしていました。これだけの年齢層の“選手たち”が一緒にプレーできるのは、JFA独自ルールである「接触禁止」があるからです。

緑鮮やかなピッチには、いたるところに笑顔が咲いていました。普段からサッカーに親しんでいるキッズたちは、ボールを追うことに夢中になるあまり、つい走ってしまいがちです。大阪府出身で元なでしこジャパンの阪口さんは「走ったらアカンで!」と指示。関西弁が響き渡り、会場は笑い声に包まれました。

写真:©JFA

「思いやりの大切さ学ぶ」

キッズから高齢者まで、全員に出番がある点もウォーキングフットボールの魅力のひとつです。多くのキッズや高齢者がゴールネットを揺らすたびに、歓喜の輪ができていました。

参加した元プロ選手の中でも、ひときわ輝いていたのが、元日本代表司令塔の俊輔さんでした。得意の左足でバックスピンをかけ、味方の歩く速度にピタリとパスを合わせると、周囲からオーッという感嘆のため息が漏れました。

囲み会見で、俊輔さんはこう語りました。
「歩きながらフットボールをするためスピードがでないからこそ、いろんなことが生まれた。たとえばパス。ゆっくりとしたパスをすることで速く展開するんじゃなくて、噛みしめながら繋がりを感じられてすごく新鮮でした。絆だったり、繋がりを感じながらいい時間を過ごせました」

さらには、こんなことも。
「小さい子どもにゴールを決めてもらったり、おじいちゃんにボールを触ってもらったりするなどパスをする時、その瞬間に繋がりが生まれる。誰かが誰かを思いやるパスや時間が増えるように意識してプレーしました」

JFAルールによるウォーキングフットボールは、敵味方、仲間同士の相互の思いやりがあって成立する競技だということが、よくわかりました。イベントを主催したキリンのマーケティング戦略部・泉伸也さんは、ウォーキングフットボールを通じて子どもたちに、次のようなメッセージを伝えました。

「歩いてプレーするので誰しもが参加できて、公平にプレーできます。“サッカー経験者だから得意とか運動神経が良いから得意”とかではなく、みんなでパスを繋ぐ。パスが繋がった時は心が通じますし、周りに笑顔が広がっていくのを見てほしい。いわゆる“空気を読む”とかではなく思いやりによって人と人が繋がっていくことを体感してもらい、“思いやりという精神は大切だな”と感じてもらえたらうれしいです」

JFAとキリンは家族や仲間との絆を深めるためのツールの1つとして、今後もウォーキングフットボールを推奨していく、としています。

(取材・大木雄貴、構成・二宮清純)

サイン:二宮清純

二宮清純

二宮清純 スポーツジャーナリスト

写真:二宮清純

1960年、愛媛県生まれ。
スポーツ紙や流通紙の記者を経てフリーのスポーツジャーナリストとして独立。オリンピック・パラリンピック、サッカーW杯、ラグビーW杯、メジャーリーグ、ボクシングなど国内外で幅広い取材活動を展開。明治大学大学院博士後期課程修了・博士(学術)。広島大学特別招聘教授。大正大学地域構想研究所客員教授。「スポーツ名勝負物語」「勝者の思考法」など著書多数。

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