
2026.10.25
©SPORTS COMMUNICATIONS
スポーツの日である10月12日、東京都新宿区の歌舞伎町で「歌舞伎町 FOOTBALL LIVE powered by CRIACAO SHINJUKU(以下、クリアソン新宿)」と銘打たれた小学生を対象としたストリートサッカー形式のイベントが行なわれました。晴天に恵まれたこの日、東京きっての繁華街の一角でサッカー少年少女たちの笑い声が響き渡りました。
まずはクリアソン新宿というサッカークラブについて説明しましょう。2005年に任意団体としてクリアソンが発足。2009年に東京都社会人サッカーリーグに参入しました。2013年に運営会社「株式会社Criacao」(クリアソン)を設立し、2018年に<これまでも活動拠点としてきた新宿区とともに、今後もクラブの歩みを進める決意表明の意味を込め>(公式サイトより)て、クラブ名をクリアソン新宿に改称しました。
2022年からは、J3のひとつ下のカテゴリーであり、アマチュア最高峰にあたる日本フットボールリーグ(JFL)で戦っています。10月21日現在、クリアソン新宿は8試合を消化し、6勝1分け1敗の勝ち点19で目下、JFLの首位を走っています。
小学生を対象としたストリートサッカーのイベントは、東急歌舞伎町タワーが完成した2023年から年2回のペースで行われており、今回で6回目を数えました。東京きっての繁華街で40人前後の少年少女が躍動しました。
昨年までクリアソン新宿でプレーし、現在は広報マーケティング部・地域共創部こども室室長の任にある西山大輝さんは、「新宿区は、子どもたちが自由に走り回れて遊べる場所が少ない」と前置きし、こう語りました。
「狭いながらも、“思い切り子どもたちが体を動かせる場所をまち中で作れたらいいな”という発想から、東急歌舞伎町タワーさんと一緒にこのイベントを企画、運営させてもらっています。とも働きのご家庭が増え、子どもたちはゲームと塾、というライフスタイルになりがち。そんな中でも、健全に、そして安全に運動を楽しんでもらえる場所を提供し、運動を好きになってもらうきっかけをクリアソン新宿がつくっていけたらいいな、と……」
西山室長自身も新宿区在住とのこと。「私事で恐縮ですが」と言い、続けました。
「私には1歳と0歳の娘がいます。私がクリアソン新宿で働いている中で、子どもたちにできることってなんだろう、と考えました。少しでも子どもたちが安心安全に走り回って楽しめる場所をつくってあげることなんじゃないか、と。クリアソン新宿は、その架け橋的な存在を目指しています」
それではストリートサッカーのルールを説明しましょう。1チーム3人の3対3でコートに立ちます。危険が伴うため、スライディングや過度なフィジカルコンタクトは禁止です。交代のタイミングや回数は自由です。このイベントでは、ゴールネットを揺らす以外にも、「股抜き」を決めると1点が加算されるボーナスルールが追加されました。
©SPORTS COMMUNICATIONS
ゴールは横幅120センチ×縦75センチとかなり小さめです。小学3年生がひとり、ゴール前に立つだけでゴールマウスはほぼ塞がれてしまいます。この“狭き門”を足技のテクニックでいかにこじあけるかが、ストリートサッカーの醍醐味と言えるでしょう。
再び西山室長です。
「3対3のストリートサッカーは基本、浮き球のシュートだと入らない低さにゴールが設計されています。使用球も小さく重いもので、なおかつ今回はあまり空気を入れずに弾みにくくしています。これならボールが飛び跳ねる心配はない。新宿のど真ん中でも、やり方次第で子どもたちが楽しめる場所は作れるんです」
プレー中、各チームのコーチ陣から飛ぶ指示は温かいものでした。
「自分が試してみたかったフェイント、せっかくだからやってごらん!」
「勝ち負けは関係ないから、どんどん楽しめ!」
優勝したのはFC WASEDA BLUEというクラブ。MVPはマンチェスターNストライカー(西新宿SC)というクラブの4年生が受賞しました。この4年生は巧みに足裏を使ったり、鋭いキックフェイントで相手をかわすなど、高いテクニックを披露しました。「どんなことを意識してプレーしていた?」と聞くと、「股抜きでも1点だから、股抜きを結構狙っていました」と笑顔で答えてくれました。
ストリートサッカーの本場と言えばブラジルです。北中米ワールドカップの日本代表戦で活躍したFWヴィニシウス・ジュニオール(レアルマドリード)や、“ブラジルの至宝”の異名をとるFWネイマール(サントスFC)らが代表的な経験者です。
閉会式後、優勝クラブのコーチにこのイベントについて聞きました。
「地面がアスファルトなので最初は心配でしたが、スライディングや過度な接触が禁止されているため、あまり危険はなかったですね。敷地が狭くても、ボールを蹴ることができるスペースがあれば成り立つのがサッカーだよなと改めて実感しました。教育面でも、ボール1つで知らない者同士が競い合いながらもコミュニケーションを取るすごくいい機会だったように感じます」
かつて新宿は「コンクリートジャングル」などと呼ばれていました。ネオン街も多く、子どもたちにとっては疎遠な街でしたが、ひとつのボールを通じての触れ合いが街を明るくし、イメージの改善につながることを知りました。クリアソン新宿の試みは、都会の乾きを癒す一服の清涼剤と言えるのかもしれません。
(取材・写真/大木雄貴、構成/二宮清純)
二宮清純
©SPORTS COMMUNICATIONS
1960年、愛媛県生まれ。
スポーツ紙や流通紙の記者を経てフリーのスポーツジャーナリストとして独立。オリンピック・パラリンピック、サッカーW杯、ラグビーW杯、メジャーリーグ、ボクシングなど国内外で幅広い取材活動を展開。明治大学大学院博士後期課程修了・博士(学術)。広島大学特別招聘教授。大正大学地域構想研究所客員教授。「スポーツ名勝負物語」「勝者の思考法」など著書多数。
理想の生活を
J:COMで
多彩なサービスで暮らしを
もっと楽しく便利に。
J:COMなら、自分にあった
プランが見つかる。