あなたの「みたい」が見つかるコラム

昭和中期より根強い人気を誇る“任侠もの”。これまで数々の名作が制作され、中には「大作」と呼ばれる長く続くシリーズも生まれるなど、コアなファンの期待に応え続けてきたエンターテインメントには欠かせないジャンルの一つだ。

女性の地位向上など、女性の立場が強くなっている現代においても、男社会を描いたこのジャンルがこれほどまでに人気なのは、男くさい世界の中で描かれる登場人物たちの「仁義」や「恩義」「プライド」「信念」「欲望」「葛藤」「苦悩」「野心」といった混じり気のないストレートな感情が、観る者の心の奥底を刺激するからだろう。

そんな“コアな魅力”はそのままに、昭和後期、平成と時代に合わせてアップデートされながら続くこのジャンルの、令和最新バージョンが「CONNECT-覇者への道-」だ。同作品はNBCユニバーサルが最強俳優陣で放つ新たな任侠超大作シリーズで、現在、第３弾まで制作されている。

横浜最大の暴力団組織・東洋会の会長・向井重政(菅田俊)に拾われて育てられた宗像清蔵(高岡蒼佑)は重政に忠義を誓い、ラーメン屋を営むかたわら東洋会の裏仕事を請け負っていた。宗像の手際の良さや残酷性、判断力は裏社会でも注目の的となり、暗殺組織「烈士会」という名が一人歩きする。そんな宗像を慕い、彼のラーメン屋でアルバイトをしていた元暴走族のリーダー・沢村竜一(山本裕典)は、けんかの仲裁に駆け付けた店で元財務官僚で高校時代の同級生・相馬邦人(北代高士)と再会する、というストーリー。

宗像、沢村、相馬の3人を中心に物語が進んでいくのだが、“任侠もの”特有の登場人物たちそれぞれの思いが絡まり合いながら、時に悲しい展開やエモいシーンなどもありつつ、これまでの“任侠もの”と比べてアップデートされているのは、ひと際キャラクターたちの心情が丁寧に描かれているところだ。

極道の裏仕事を請け負いながらも組を持たない宗像、無口だが付いて行きたくなる漢気(おとこぎ)をもつ宗像に惚れている沢村、政治の汚い部分に触れ全てを投げ出した相馬と、それぞれに一言では説明できない背景があり、それらの背景を踏まえて人生を歩んでいく姿が、作品により見応えをもたらしている。

そんな同作品の特長を支えているのは、実力派俳優陣の演技に他ならない。高岡は無口で表情の変化も少なく何を考えているのか分かりづらい宗像を、クールな存在感と共に“何をやらかすか分からない”不気味さを纏(まと)って熱演し、山本は宗像の後ろを付いてまわる腰巾着のような沢村を時にコミカルに軽やかに演じている。一方、北代は人生に絶望した状態で2人と出会い、沢村と同じく宗像に憧れていく相馬を丁寧に表現している。

重政の妻・晴恵(真行寺君枝)と孫・静香(熊谷実音)が誘拐されるという事件をきっかけに、宗像たちも金や利権を巡る暴力団同士の抗争に巻き込まれていくのだが、激しく変化していく状況の中でそれぞれの思いと考えがしっかりと描かれ、観る者の感情移入を促してくれる。それを担っているのはやはり役者陣の芝居によるところが大きい。

というのも、現代において“任侠もの”で描かれる世界観は、普通の社会生活を送っている者にとってはほとんど異世界といっても過言ではない。いくらストレートな感情で構成されていても、世界観に入っていけなければ受け取り様がない。そんな異世界との“橋渡し”には、演じる者がどれだけ説得力を持たせられるかが重要なのだが、高岡、山本、北代をはじめとする実力派俳優たちがその実力を余すところなく発揮して、有無を言わせぬ説得力を作品に付与している。

例えば、“受け”の芝居がその一つ。相手のせりふに対する反応で、せりふがなくても持ち前の表現力で心情を雄弁に語ることで、視聴者を置き去りにすることなく進んでくれる。登場人物が男だらけということもあり、事細かに感情を説明しない場面がほとんどであるため、この“受け”の芝居がどれだけ重要かは言わずもがなであろう。

高岡、山本、北代という実力派俳優陣の表現力で紡ぐ心情を追いつつ、絡まり合うストレートな感情に動かされる展開を楽しむと、よりこのシリーズの深淵に触れることができるはずだ。