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本作は、戦後70年(’15)に公開されました。その節目に向けてテーマを模索していたときに、ふと10代の頃に見た「日本のいちばん長い日」(’67)を思い出しました。終戦映画の代表作として有名な作品ですが、当時はまだ戦後20 年も経っておらず、さまざまな事情から描けない部分があると感じていました。同じ原作でも、今の時代だからこそ描けることがあると思ったことと、第2次大戦は自分に直結している戦争でしたからね。もし日本が戦争を続けていたら僕の父は知覧(鹿児島県)にいたので、亡くなっていた可能性が高かった。この戦争は自分の存在意義にも大きく関わるものでしたから、いつかテーマとして描きたいという思いも重なり、制作を決めました。
昭和天皇も含めて、原作に登場する人物を忠実に描くことを意識しました。原作者の半藤一利先生と脚本のやり取りをした中で、昭和天皇(本木雅弘)と鈴木貫太郎首相(山﨑努)と阿南惟幾陸相(役所広司)、この三人が疑似家族の関係にあることに気づきました。この小さな家族を中心に、緊迫した状況をどう切り抜けたのか。それを描くことで、終戦に向けての政府、軍人たちの思いや行動が分かりやすくなるだろうと。それと、昭和天皇は戦争を終わらせることに対して、さまざまな葛藤があったはずです。戦時中は閣僚や軍部だけじゃなく、各々の家族の中にも多くの葛藤があったわけですから。「戦争を始めるの簡単だが、終えるのは大変だ」と半藤先生はおっしゃいましたが、日本が下した聖断のように戦争を終息させるのはいかに大変か、その決断に至る苦悩の時間を描きたいと思いました。
映画の中で好意的に描いている人物でも、戦後の生き方を見ると、今の自分だったら絶対納得できない人たちも大勢います。ただ、あの凝縮された1945年の夏の短い期間だけは、それぞれの立場で真剣に全力で立ち向かい、輝いていたとは思うんです。鈴木貫太郎首相は最後までずっと愛着があって、演じた山﨑さんと「貫太郎さんになぜ惹かれるのか?」なんて話をずっとしながら人物像を作り上げていきました。阿南さんは息子が戦死した時点で、自分も死ななければいけないと考えていたはずで、自害は彼にとっての戦死だったと思うんです。その後、生きていたら文人になっていたかもしれないですね。当時、クーデターを企てた畑中健二少佐も、彼が起こしたこと(宮城事件)は今の僕の心情では賛同できないけれど、ただ純粋さはあったわけです。それが狂気ではなかったということを、今の時代の人でも理解できるように描きたいと思いました。畑中少佐を松坂桃李くんが演じてくれましたが、ひとりの軍人としてどう生きたかったのか、終戦を迎えるまでに抱えていた憤りを上手く表現してくれました。額に青筋を立てながら机をバンバン叩くシーンの、あの松坂くんの迫真の演技には非常に感激しました。すごくリアリティーのある空気を作ってくれたと思っています。
公開当時、各国の駐日大使を招いて特別試写会をやりました。多くの方々が見に来てくれて作品に共感してくれた方も多く、試写が終わった直後に僕の席に飛んで来て、握手を求めてくれた方もいました。その中には戦時中、日本軍に侵攻されて憎んでいたであろう国の大使もいましたが、当時の昭和天皇の立場も、阿南さんの立場も理解できると、わざわざ伝えに来てくれたんです。それは、今でも記憶に残っています。
本作の脚本の最終稿の段階で、半藤先生から広島の原爆投下の描写は入れてほしいと言われ、ワンカット入れました。これは今の僕につながっていて、それからさまざまな文献を調べて広島のことを勉強しました。広島の原爆で死んだのは、日本人だけじゃなかったんです。そんな資料も読んだので、いつか広島をテーマにインターナショナルキャストで撮りたいと思っています。今年公開された映画「オッペンハイマー」のアンサーソングのようにあの当時の広島を、VFXを駆使したリアリティーのある映像で見せることで、今の時代に必要な映画が描けると思っています。
©2015「日本のいちばん長い日」製作委員会
日本のいちばん長い日(2015)
日本の敗色がいよいよ濃くなった1945年7月末、連合国軍は日本に対して無条件降伏を迫るポツダム宣言を発表。それを受諾するか、日本政府が返答を先送りにする間、8月6日に広島、次いで同月9日に長崎に原爆が投下される緊迫した事態に。それでもなお陸軍の若手将校たちは徹底抗戦を唱え、彼らの暴発を抑えるのに陸軍大臣・阿南が苦慮する中、鈴木首相は御前会議を開いて天皇の聖断を仰ぐよう、冷静に事を進めていくが……。
直近の放送
8/15(木) 21:00~23:30
WOWOWプラス 映画・ドラマ・スポーツ・音楽 HD
原田眞人(はらだ まさと)
‘79年「さらば映画の友よ インディアンサマー」で監督デビュー。「クライマーズ・ハイ」は’08年の日本アカデミー賞10部門受賞。「わが母の記」(’12)はモントリオール世界映画祭で審査員特別グランプリ、日本アカデミー賞を12部門で優秀賞を受賞。
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