あなたの「みたい」が見つかるコラム

今年も熱い夏が到来。夏といえば「高校野球」「花火」「夏まつり」「ホラー」など、さまざまな風物詩がある中で、忘れてはいけないのが「サメ」だ。

“サメ映画”の金字塔である映画『ジョーズ』(1975年)、映画『ジョーズ２』(1978年)、映画『ジョーズ３』(1984年)などは日本では冬場の公開だったが、基本的に海辺が舞台であるため描かれる季節も暑い時期で、それに合わせて公開も夏が多い。また、人がサメに襲われる事故が多いのも夏であるため、その注意喚起という意味でも、サメの生態を追ったドキュメンタリーなどが放送されやすい。熱い日々の中で“ゾクリ”とさせてくれるパニックホラーは夏にうってつけであるから、親和性が高いというのも理由の一つだろう。

ジャパニーズホラー、スプラッター、サイコ・ホラー、オカルトなど、“ゾクリ”とさせてくれるジャンルは多々あるが、サメを題材にしたパニックホラーが定期的に公開されるのは、やはり「サメ映画」独特の魅力があるからだ。陸ではなく海上や水中という“不自由な舞台設定”はもちろん、サメの持つ残虐性と凶暴さ、登場人物たちを絶望の底に叩き落とす圧倒的な力と存在感が見る者を圧倒する。海上で水着の男女が楽しく過ごしている中、突然のサメの襲来で事態は悪夢に一変する…など、作品として空気感の落差を演出しやすいし、“最終的に人々がどうやって危機から脱するか”というストーリー性が描きやすい。このシンプルな作りこそ、遊園地のジェットコースターのように、期待どおりの“ゾクゾク感”を与えてくれ、「想定できているのに、ついまた繰り返してしまう」という中毒性を生み出している。

そんな中で、「サメ映画」も日進月歩の進化を遂げており、想定をはるかに超える作品が続々と発表されている。映画『ディープ・ブルー』(1999年)では遺伝子操作によって高い知能を持ったサメが登場し、映画『シャーク・クルーズ』(2022年)では凶暴なホオジロザメの大群、映画『MEG　ザ・モンスター』(2018年)では200万年前に絶滅したはずの生きる化石の超巨大古代ザメ・メガロドンなど、能力や大きさ、数など、手を変え品を変え、みる者を恐怖の世界に誘ってくれる。最新作の映画『ザ・メガロドン　大怪獣覚醒』(2023年)に至っては、メガロドンが群れでやって来るという“大きさ+数”で最上級の“ゾクゾク”を体験させてくれる。

一方、演出などを排除した「サメ」自体にも“どこか引きつけられるもの”がある。特に、男の子にとって海の世界で強い存在である「サメ」は憧れの対象でもあり、その感覚は大人になっても変わらないため、多くの男性にとって惹かれてしまう存在なのだ。捕食シーンや凶暴性があらわになる瞬間、迫り来る時の存在感など、ドキュメンタリー作品では創作物を超えたリアルな“ゾクゾク”が得られる。「エア・ジョーズ　最後のフロンティア」(アニマルプラネット)でのホホジロザメが宙を舞う姿や、「シャーク・ウィーク35周年記念傑作選」(アニマルプラネット)での衝撃映像や決定的シーンの数々、さらには「おもしろ解説！ネットでバズったサメ動画集」(ナショナル ジオグラフィック)での専門家によるサメの驚くべき生態に関する解説など、珠玉のドキュメンタリーで知れば知るほど、“サメの沼”にハマっていってしまうだろう。

猛暑で外出するのも気が進まない中、屋内で冷たい飲み物を片手に、手に汗握りながらサメ作品で“ゾクリ”として過ごしてみるのもいいのではないだろうか。

文／原田健