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藤井聡太棋聖に山崎隆之八段が挑戦する、ヒューリック杯第95期棋聖戦五番勝負が6月6日(木)に開幕する。藤井にとっては初の永世称号である永世棋聖が、山崎にとっては初タイトルが懸かる注目のシリーズだ。

藤井が史上最年少（17歳）で初タイトルである棋聖を獲得したのは、コロナ禍の2020年夏のことだった。あれから防衛を重ね、今期は早くも永世棋聖（通算5期）の懸かったシリーズを迎える。その間も毎年8割を超える勝率で勝ち続けてタイトルを増やし、2023年には史上初となる八冠制覇を成し遂げて時代の覇者となった。だが、2024年度に入ってからの防衛戦（名人戦、叡王戦）では内容、星取りで苦しむことが多く、プロ入りしてから初めてともいえる不調説がささやかれている点が気掛かりだ。今回防衛を果たせば史上最年少での永世称号獲得となり、ここでも記録を塗り替えることになる。不安材料はあるが、現時点の将棋界で実力ナンバーワンであることに異論が入る余地はないだろう。

43歳の山崎は2009年の第57期王座戦五番勝負以来、実に15年ぶりのタイトル挑戦。プロ入りした時から西を代表するタイトル候補の若手として期待が高かったが、大舞台にはなかなか縁がなかった。とはいえNHK杯戦で2回優勝するなど早指し戦では活躍を見せており、長年、最前線で戦ってきたことは間違いない。2024年度に入ってからは7戦全勝と、好調で五番勝負の開幕を迎えられそうだ。個性的な棋風と自虐的なキャラで、ファンからの人気が高い棋士の1人である。年齢的にも残されたチャンスは多くはないが、山崎自身も承知の上で、棋士人生の集大成のつもりで戦うはずだ。

公式戦における両者の対戦成績は1勝1敗と、トップ棋士同士にしては非常に少ない。もちろんタイトル戦初顔合わせだ。初手合は2018年で山崎が貫録を見せ、2度目の対戦は藤井がタイトル獲得後の2021年で、こちらは藤井が制した。局数の少なさもだが、最後の対戦から3年も開いており、過去の対局はあまり参考にはならないといえる。

近年の先手と後手がお互いに飛車を初期位置のままで戦う相居飛車戦は、終盤の入り口まで将棋AIを使った研究勝負になることも少なくないが、山崎は独創的で力強い将棋を好む。「山崎ワールド」は形にとらわれないねじり合いであり、力と力のぶつかり合いが見られることだろう。もちろん藤井は力将棋も強く、臨むところ。先後に関わらず、相掛かりや角換わりの力戦となることが予想される。早々に手探りの将棋になると時間も使わざるを得ないため、中盤以降は互いに時間が切迫するだろう。そうなれば白熱した秒読みの終盤戦が見られることは間違いない。

対局はいずれも9時開始で、持ち時間は各4時間、夜には決着する見込みだ。先に3勝した方がシリーズの勝者となる。藤井が防衛して永世棋聖の資格を得るか、山崎が悲願の初タイトル獲得となるか、梅雨の蒸し暑さにも負けない熱い五番勝負を期待したい。

第1局　2024年6月6日(木)
千葉県木更津市「龍宮城スパホテル三日月」

第2局　2024年6月17日(月)
新潟県新潟市「高志の宿　高島屋」

第3局　2024年7月1日(月)
愛知県名古屋市「亀岳林　万松寺」

第4局　2024年7月10日(水)
兵庫県洲本市「ホテルニューアワジ」

第5局　2024年7月23日(火)
静岡県沼津市「沼津御用邸東附属邸第1学問所」

※第4局以降はなくなる可能性あり

文：渡部壮大