あなたの「見たい」が見つかるコラム

東京・新宿を拠点に、ボディガードや人探し、さらには殺しといった依頼まで引き受けるスイーパー（始末屋）、冴羽リョウの活躍を描いた北条司原作のコミック「シティーハンター」。1987年放送のTVアニメシリーズ化を機に爆発的人気を獲得した同作は、TVスペシャルや劇場版アニメ、宝塚歌劇団による舞台版、そしてフランスで制作された実写版など、幾度もメディア化され、今なお世代や国境を越えて愛され続けている。そんな伝説的名作が満を持して日本で初実写化。すべての混沌を飲み込む歌舞伎町を冴羽リョウとして駆け抜けるのは、『HK 変態仮面』『俺物語!!』など、数々の人気漫画の実写版を体当たりの演技で成功に導いた立役者・鈴木亮平だ。

相棒の槇村秀幸（安藤政信）と共に、有名コスプレイヤー・くるみ（華村あすか）の捜索依頼を請け負った“シティーハンター”こと冴羽リョウ（鈴木亮平）。その頃、新宿では謎の暴力事件が多発し、警視庁の敏腕刑事・野上冴子（木村文乃）は手を焼いていた。息の合ったコンビネーションでくるみを追うリョウと槇村だったが、捜査の最中、槇村が予期せぬ事件に巻き込まれ死亡してしまう。その現場に居合わせた妹・香（森田望智）は、兄の死の真相を調べてほしいとリョウに懇願するが…。

主人公・リョウとその相棒・香の始まりの物語を昭和から現代の令和へと時代を移して描かれる本作では、新宿歌舞伎町の大規模ロケで作品世界を完全再現。きらびやかさを増した摩天楼を背に、サウナを楽しむ水着姿の女性グループを特殊ゴーグルで覗き見しながら「もっこり♪もっこり♪もっこりちゃん♪」と笑顔を浮かべる、鈴木の初登場シーンを見て「リアル冴羽リョウだ！」と歓喜しないファンはいないだろう。そう確信してしまうほど、赤いTシャツに包まれた完璧に仕上がった胸筋や堂々たる立ち姿、アニメシリーズで長年、リョウを演じ続けている声優・神谷明の演技を心からリスペクトしていると分かるセリフのリズムや発声方法など、鈴木が並々ならぬ愛情を持って、冴羽リョウというキャラクターを自分の身に宿していることが伝わってくる。

その後、巨乳美女の依頼を受けて探していたくるみを救出するため、ビルとビルの隙間を滑空する場面から始まる一連のアクションシーンも注目だ。ひょうひょうとした表情から繰り出す重いパンチや回し蹴りでチンピラたちを沈めていく鈴木の姿は、まさにリョウそのものといっても過言ではない。そして、鈴木の代名詞でもある、圧倒的な肉体美を披露するシーンももちろん用意されている。それは、歌舞伎町のキャバクラで行われる、リョウによる「もっこりショー」だ。兄の死の真相を知るため、リョウに付きまとう香を追い払うため、「そんなに知りたいなら見せてやるよ、こっちの世界って奴をな」とすごんでからのギャップに加えて、鈴木の鍛え上げられた肉体や天真爛漫な笑顔は必見だ。

もちろん、槇村役の安藤や冴子を演じる木村、そして香に扮する森田といった役者陣も夜の歌舞伎町に溶け込み、「シティーハンター」の世界を見事に表現。エンディングテーマとして流れるTM NETWORKの「Get Wild Continual」を耳にする時、「完璧な実写版だった…」と幸せな余韻に浸れること間違いなしの傑作だ。

文／中村実香

※冴羽リョウのリョウは、けものへんに「僚」のつくりが正式表記