あなたの「みたい」が見つかるコラム

「ミナミの帝王」「ナニワ金融道」「借王」「闇金ウシジマくん」など、金をテーマに人間の底なしの欲望を正面から描いた物語は、怪しい魅力と、独特の吸引力を持っている。その中でも、新しい闇金映画として人気を博しているのが「闇金ドッグス」シリーズだ。これまでにシリーズ第9弾まで制作されており、最新作の「闇金ドッグスX 前編」「闇金ドッグスX 後編」が8月に映画・チャンネルNECOにて放送される。

同シリーズは、若くしてヤクザの組長まで上り詰めた主人公・安藤忠臣(山田裕貴)が、手下のためにヤクザから足を洗って始めた闇金業を軸に、登場人物の苦悩や人生を描いたもの。その魅力は何と言っても地上波のテレビでは描けない“現代の闇”を逃げずに描いているところだろう。

例えば第1弾では、表では笑顔を振りまきながらも裏では夢のために困窮した生活を強いられている地下アイドル、ニートでありながら地下アイドルの“推し活”に没頭するオタク、40歳を目前に働きもせずアイドルオタクをしている息子に強く言えない母親、地下アイドルという若い女性に巣食う大人たちなど、1つのテーマの中でさまざまな登場人物たちの人生模様が詰まっている。それらが“金”というキーワードでつながっていくという骨太のストーリーが見る者を引き付けて止まない。主人公も含めて、登場人物たちは皆、苦しみながらどこかに救いを求めて生きており、それぞれがそれぞれの事情で“金”という魔物に絡めとられていく。そんな哀しい姿も、ある種のリアリティーを生み出し、視聴者の心に強いメッセージを残す。しかもそれが、表層には見えてこない“現代の闇”を取り上げているのだからなおさらだ。

そんな中で、同シリーズでは作品によって主人公が変わり、他作品と一線を画している。第2弾は第1弾に引き続き安藤忠臣なのだが、第3弾は安藤が雇った元ホストの須藤司(青木玄徳)、第4弾は安藤、第5弾は須藤というふうに視点を変えながら、スナックの女性に入れ込んでしまった男性や、もがきながら再起を図る元地下アイドル、IT革命のあおりを受けるAV制作会社社長など、さまざまな債務者の事情を基に地上波では扱えない問題にメスを入れている。

そして、安藤と須藤の物語から心機一転し、第10弾からは元傭兵の闇金業者代表の真田一兵(佳久創)と社員の渡辺恒彦(池田匡志)の活躍を描く新章がスタート。劇団の若手女優を中心に、脱サラした企業家、劇団の座長、脚本演出家、スピリチュアル・カウンセラーなど、欲にまみれた人物たちが紡ぐストーリーで一層進化した“現代の闇”を描き出している。

“恐いもの見たさ”からつい引き込まれてしまう“現代の闇”に触れつつ、闇に落ちた登場人物たちが紡ぐ骨太の人間ドラマに浸ってみてはいかがだろうか。

文／原田健