トップガンとは
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「トップガン」は、アメリカ海軍の戦闘機パイロットに空中戦の技術や戦法、戦術、兵器の効果的な用法を指導するために作られた「海軍戦闘機兵器学校」の通称で、今日では海軍航空戦開発センターに統合化されて、ネバダ州のファロン基地に所在しています。空中戦だけでなく対地攻撃や打撃ミッションについても戦術や兵器の運用など、任務の遂行に必要な高等飛行技術訓練を実施しています。訓練を受けるのは第一線飛行隊から選ばれたパイロットで、現在では年間に5回の教育が行われ、1回の訓練期間は5週間、1回に教育を受けるパイロットは12名です。教育プログラムには、空対空戦闘を主体とする艦対航空優勢訓練と、空対地打撃や近接航空支援、闘捜索救難支援などの空対地ミッション関連があります。この課程教育を終えたパイロットは多くは第一線飛行部隊に戻って、その部隊のパイロット達に学んできたことを伝授してパイロット全体の戦闘技倆のレベルアップに役立たせます。また一部は、教官の道に進みます。
F-14とF/A-18の違い
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F-14トムキャット
グラマンF-14トムキャットは、遠距離から艦隊を攻めてくる、対艦ミサイル装備の爆撃機の脅威から艦隊を護ることを任務とした、防空および空対空戦闘が主体の戦闘機です。長距離で敵機を発見・捕捉できる高性能のレーダー、最大で150kmの射程を持つAIM-54フェニックス空対空ミサイルを搭載し、一度に24個の目標をレーダー追跡しながら、その中から、後席の兵器システム士官が選んだ6目標に対してフェニックスを同時に発射し、別々に命中させるという、1970年代当時としてはどの戦闘機も真似できない能力を有しました。なおこの能力を完全に発揮するため、F-14は全機が複座型ですが、後席からの操縦は行えず、レーダーや兵器など操作専任の搭乗員が乗り組みます。これに加えて中射程のAIM-7スパローと短射程のAIM-9サイドワインダー領空対空ミサイルも搭載でき、さらには接近戦闘用に20mmバルカン砲も備えました。フェニックス以外の兵器の照準や発射などは、前席のパイロットの役目です。
F-14の大きな特徴である可変後退翼は、高速から低速のあらゆる速度領域で最高の飛行運動性を発揮することを可能にするもので、しかもその角度はコンピューターの演算によって自動的に制御されましたから、パイロットは特別な動作の必要はありませんでした。F-14の世代の戦闘機は、飛行中にその機体が持つエネルギーを上手く管理しながら優位に立って戦闘を行うことが重視され、可変後退翼はこの分野でも飛行能力を高めることに貢献しています。こうしてF-14は、世界最高峰の戦闘機の称号を獲得したのです。今日でも単独での長距離防空という点でF-14を上回るものはありません。
F-14の長いキャリアの末期には爆撃機能も付与されましたが、もともとそうした用途での使用は考えられていませんでしたから、そのための照準機能などはなく、追加装備されたものも初歩的なものだったため、こちらの用途では高い評価を得ることはできませんでした。
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F/A-18ホーネット
マクダネル・ダグラス(今日ではボーイング)が開発したF/A-18ホーネットは、F-14とは異なり最初から空対空と空対地双方の戦闘ミッションに使用できる、多任務作戦機を目指したものでした。海軍の目論見は、F-4ファントムII戦闘機とA-7コルセアIIを1機種で置きかえようということで、このため実用化したホーネットには特別に、打撃戦闘機を意味する「F/A」の任務記号が付けられたのです。
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就役したF/A-18は、計画通りF-4飛行隊とA-7飛行隊での置き換えが進んでいきましたが、実運用に入ると運動性や航続力などいくつかの面で海軍が求めていた能力を満たせていないことが明らかになって行きました。それらを解決するためにマクダネル・ダグラスが提案したのが「ホーネット2000」計画で、いくつかの変更が加えられましたが、スーパーホーネットはこの提案を基本に開発されました。
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F/A-18スーパーホーネット
スーパーホーネットは、ホーネットの基本的な設計を維持しつつ、全体的に機体を大型化したものです。特に主翼の大型化は、低速域での旋回性の向上をはじめとする運動性を大幅に高めています。そして大きくなった主翼は内容積が増加して燃料容量が増え、これによるホーネットの大きな泣き所だった航続力が短いという問題を解決しました。
細かなところでは、着艦できる最大重量が増やされました。どのような航空機にも着艦(あるいは着陸)可能な最大重量の制約があり、着艦(着陸)時には機体の重量をそれ以下にしなければなりません。例えば攻撃任務で多くの兵器を積んで出撃したものそれらを使えずに空母に戻る際には、着艦前にそれらを海に捨てなければならないのです。スーパーホーネットでは着艦重量が引き上げられたことで、そうした搭載兵器類の無駄をなくすことを可能にしているのです。
スーパーホーネットと初代のホーネット、あるいはそれよりも前のF-14と大きく異なるのは航空機や搭載兵器に関連した電子機器技術が大幅に進化したことです。先にF-14のフェニックス・ミサイルによる空対空戦闘能力について記しましたが、スーパーホーネットもAIM-120 AMRAAM空対空ミサイルを用いれば、最大約100kmで4個の空中目標と同時交戦を行うことができます。
また電子機器技術の進歩は、スーパーホーネットの段階的アップグレードを可能にしました。最初の生産型はブロックIで、続くブロックIIではアクティブ電子走査アレイ(AESA)式のレーダーが搭載されて、解像度の向上や妨害への対応力の強化、異なる機能の同時併用などが可能になっています。最新タイプがブロックIIIで、コクピットの設計が一新されて、計器盤はその全体を大画面のカラー・ディスプレーが占めるようになりました。ブロックIIIではまた、近年開発された最新の兵器やセンサー・ポッド類の運用能力も段階的に加えられ、空対空と空対地の双方で任務遂行力を高めています。
可変後退翼とは
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可変後退翼とは、飛行中に主翼の後退角を変えられるメカニズムのことです。主翼の可変翼を浅くすればより大きな発生揚力が得られて、短距離滑走での離着陸が可能になり、また低速での高い旋回能力が得られます。
一方で後退角を大きくすると空気抵抗が大幅に減りますから、より高速の飛行や優れた加速・上昇力を得ることが可能になります。このいいとこ取りをしようというのが可変後退翼ですが、当然のことながら機構は複雑で整備性が悪くなってしまいます。
また重量の増加も大きな問題で、このためアメリカではF-14を最後に可変後退翼戦闘機は作られなくなりました。
単座と複座の違い
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スーパーホーネットには、単座型(F/A-18E)と複座型(F/A-18F)があり、F/A-18Fにはさらに後席からも操縦できるものとできないものがあります。
後席で操縦可能なものは、基本的にはパイロットの養成訓練に使われます。後席で操縦できないタイプの後席搭乗員は、F-14と同様に各種のセンサーや兵器システムの操作を行い、前席のパイロットが戦闘操縦に専念できるようにします。
またそれからの目視観測・警戒などの任務も、二人の搭乗員が協力して行った方が効果があります。
スーパーホーネットの飛行隊は、装備機種が単座と複座ではっきりと分かれています。どちらの飛行隊が投入されるかは、そのミッションが単座向きなのか複座向きなのかで決まります。
ロックオンとは
ロックオンとは、目標を捕らえて攻撃の準備を完了したことを意味します。例えば、レーダーで目標を捕らえて追尾を行い、それを攻撃目標に定めて照準を確立し、またそれを空対空ミサイルのシーカーに指示状態、ということになります。目標の捕捉が不確実だったり、目標の情報が兵器に伝わっていなければ、「ロックオンができた」ということにはなりません。
Fシリーズの歴史
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呼称方式を統一
アメリカの各軍は、装備した航空機にそれ独自の方式で命名を行っていました。その結果同じ航空機に異なる番号が付くなど混乱が生じることになり、アメリカ政府は1962年に軍の航空機の呼称方式を統一することにしました。その原則は、任務を示す記号(アルファベット)に軍の採用順を示す数字、そしてその機種の派生順を示すアルファベットを組み合わせるというものです。そして戦闘機の任務記号はFighterの頭文字「F」が用いられるることになりました。1962年の制度でこれが適用された最初の機種はファントムIIで、海軍のF4Hと空軍のF-110がF-4で一本化されたのです。
またF-1からF-3までは海軍が使っていた旧呼称のノースアメリカンFJ、マクダネルF2H、マクダネルF3Hにそれぞれ割り当てられました。またF-6はダグラスF4Dが、F-7はコンベアF2Yが、F-8はヴォートF8Uが、F-9はグラマンF9Fが、F-10はダグラスF3Dが、F-11がグラマンF11Fとそれぞれ改称されました。F-1からF-11まではいずれも海軍機で、また抜けているF-5は空軍のノースロップF-5に使われています。
欠番の数字
F-11以降では、「13」が忌み数字なので欠番になりました。またF-19も欠番ですが、その理由ははっきりしていません。アメリカ空軍の新戦闘機計画でノースロップYF-23とロッキードYF-22が採用を競ってYF-22がF-22として採用され、このため「23」も欠番になっています。
この後の数字は研究機と入り乱れることになりましたが、空軍と海軍の合同戦闘機計画である統合打撃戦闘機(JSF)計画でロッキード・マーチンX-35が採用されてF-35の名称を与えられました。この「35」がアメリカの戦闘機で最新の数字です。