二宮清純
二宮清純コラム ノーサイドラウンジCOLUMN
2019年1月10日(木)更新

誰もが認めるリーダー
主将リーチ・マイケル

 年が明け、W杯イヤーとなる2019年がスタートしました。日本がアジア初の開催国として迎えるW杯は9月に開幕です。残り8カ月――。ジャパンが目指す目標は初のベスト8進出です。

「“ベスト8進出”は好きじゃない」

 この「目標はベスト8」に異議を唱えるのは、ジャパンのキャプテンでフランカーのリーチ・マイケル選手です。

<「ベスト8進出を目標としていますが、正直言うと好きではありません。ベスト8を超えるチームを作って毎試合勝ち、それ以上に進出します。勇気と覚悟のある日本代表の戦いを見てもらいたいです。外国人選手もいますが、いろいろな文化が混ざり、築き上げるチームワークも感じてほしいです」>(「毎日新聞WEB版」2019年1月1日)

 前回のイングランド大会でもキャプテンだったリーチ選手は、ケガなどの不測の事態が起きない限りは日本大会でもキャプテンを務めるでしょう。上記のコメントからも日本大会に向ける決意と覚悟が見て取れます。

 さてピッチ上の監督とも言えるキャプテンには、勝敗を左右される決断を迫られる時があります。4年前のW杯、イングランド・ブライトンで起こしたジャパンのジャイアント・キリングは、リーチ選手の英断なしには達成できなかったでしょう。

 感動のシーンを振り返りましょう。ジャパンはW杯2度の優勝を誇る南アフリカに対し、試合終了間際まで3点のビハインドを負っていました。インゴール目前で南アフリカが反則を犯し、ジャパンはペナルティーを獲得。PGを狙えば、ほぼ確実に引き分けに持ち込むことができる状況です。

 ここでリーチ選手が下した決断は「スクラム」でした。「スクラムを選んだのは、相手が1人少なかったことと、勝ちに行くという気持ちから。今までやってきたことを信じてプレーした」。しかし、スタンドにいた当時のHCエディー・ジョーンズさんの指示は「ショット!」(PGを狙う)でした。

 最後は右サイドから左に大きく展開し、ウイングのカーン・ヘスケス選手の劇的なトライが生まれました。34対32。ラグビー史に残る大番狂わせは、あの『ハリーポッター』シリーズの作者であるJ・K・ローリング氏をして、「私だってこんな筋書きは書けない」と言わしめたほどです。

 イングランド大会でW杯過去最多の3勝をあげたジャパン。リーチ選手の前のキャプテンであり、東芝ブレイブルーパスの先輩にあたる廣瀬俊朗さんは「すごく優しい性格。プレーで引っ張ってくれました。アイツのキャプテンシーは大きかった」と後継者のリーダーシップを称えていました。

 リーチ選手は15歳でニュージーランドから来日し、札幌山の手高校に入学しました。恩師の佐藤幹夫監督からは「将来、日本代表になって主将になる」と言われ続けたそうです。

<「当時はまさかなるとは思わなかったし、今も先生がなぜそんなことを言っていたのか不思議。細かったし特別上手でもなかった。ただ、努力するのは得意だった。そこを見ていてくれたんだと思う。代表になる、主将になる、と思ってやってきた。高校3年間、日本で一番練習した自信はある」(スポーツ報知WEB版1月2日)

 細身の体躯で、本人曰く<特別上手でもなかった>選手が今やジャパンにおいて不可欠な存在です。

「みんながついていく」

 15年のイングランド大会でジャパンを牽引したリーチ選手ですが、16年は代表活動から離れています。これについてリーチ選手はNHKのインタビューにこう答えています。 <「当時は5年間くらいずっと休みなく、W杯で勝つためにやってきて、疲れがたまりまくっていました。正直、もうエネルギーがなかった。だから、“もう一度このチームでプレーしたい。代表に入りたい”という意欲がほしかったんです。2019年の大会で、もう一度いいパフォーマンスを出すためです」>(NHK『サンデースポーツ2020』2018年9月23日放送)

 ジャパンに復帰したのは17年6月。約1年半の充電期間を経て、リーチ選手は戻ってきました。キャプテン復帰以降はジャパンの調子も右肩上がりです。17年11月のヨーロッパ遠征で強豪フランスに引き分け、18年にはイタリアに勝利を挙げています。

 元ジャパンのナンバーエイト齊藤祐也さんはリーチ選手の印象をこう述べています。

「17年、ジャパンがフランス遠征に行った時に、僕も現地に行きました。その時のリーチ選手の立ち居振る舞いがすごくカッコ良かった。“この選手にはみんながついていくな”と感じましたね」

 同様の声は選手からも聞こえてきます。主にナンバーエイトでプレーする姫野和樹選手は<「リーチさんは言葉で引っ張っていくというより、自分が先頭に立って、みんなを引っ張っていく人です。自分自身が引っ張られる側になって、“この人のために身体を張りたい”って本当に思える選手なので、リーチさんの背中を追いかけてやっています」>(NHK『サンデースポーツ2020』2018年9月23日放送)と語っていました。

 指揮官のジェイミー・ジョセフHCは昨年のジャパン総括会見で、リーチ選手を名指しで褒めていました。

「彼はこの1年でキャプテンとして非常に大きく成長しました。それはフィールド内外、両方で成長が見られました。リーダーとして、彼がしっかりと役割を果たしてくれた。時にはアシスタントコーチかなと思うぐらいの活躍をしてくれていましたし、フィールド内でベストパフォーマンスを見せてくれました。フィールド外でも選手たちのいいお手本となっていました」

 昨年はリーダーとしてチームを牽引する姿はもちろんのこと、プレーヤーとして円熟の域に達していることも示しました。昨年11月のイングランド遠征では、前指揮官のエディーさんが率いるイングランドとW杯開幕戦で当たるロシアを相手に計3トライをあげました。ロシア戦、前半31分の得点シーンではリーチ選手の判断力が光りました。敵陣でペナルティーを獲得すると、相手の陣形が整っていないと見るやいなや素早くリスタートし、自らインゴールに飛び込みました。後半32分にはスタンドオフの田村優選手からのキックパスをキャッチし、勝ち越しトライをあげました。

 来日15年目を迎えるリーチ選手は現在30歳です。4年後のフランス大会までは現役を続けたいと考えているようです。

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