写真:二宮清純

二宮清純コラム銀盤のカーテンコール

毎月第3月曜更新

2023年8月21日(月)更新

フィギュアを「支える」仕組みを
羽生結弦からの寄付は送迎バスに

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 報道に接する限りでは活況を呈しているように見える高校野球ですが、足元が盤石かと言えば、決してそうではありません。少子化の影響は年を追うごとに深刻になっています。

高校野球人口減少

 日本高校野球連盟によると、今年5月末時点での硬式野球部員数は12万8357人。9年連続で減り続けています。

 部員数のピークは2014年の17万312人。最盛期に比べると現在は約8割程度です。近年は、部員不足により“連合チーム”で地方予選に臨むところが増えています。今年は385校、128チームに及びました。

 私の故郷である愛媛県では今夏、今治南、今治東、今治北大三島、今治明徳(私立)の4チーム18人が“連合チーム”で予選を戦いました。

 愛媛県といえば、“野球王国”と呼ばれるほど野球の盛んなところで、2014年までは、夏の選手権大会で最高勝率を誇っていました。名門・松山商高は夏だけで6回も全国制覇を達成しています。

 松山市に負けず劣らず、今治市も野球の盛んなところで今治西高は、春夏合わせて27回も甲子園に出場しています。1963年、1973年、1977年の夏、1995年、1999年の春と5回もベスト4進出を果たしています。

 その今治市でも、少子化の影響を受けて野球人口が減り、“連合チーム”を組まざるを得なくなっているのですから驚きです。もっとも、これは愛媛県に限った話ではありません。

 ただし、高校野球人口減少の理由は少子化だけではありません。関係者に聞くと野球用具を揃えるにあたって高額の初期費用がかかり、これがネックになっているというのです。

 そこでインターネットで野球用具の値段を調べてみるとスパイクが平均1万円、グラブが1万2000円、バットが1万5000円。ポジションがキャッチャーともなるとミットにレガース、マスクなど、さらに費用がかさみます。

「物価が上昇しているのに、賃金は上がらない。高価な野球用具を前にして、どれにしようか迷っている親子を見ると、こちらが申し訳ない気持ちになってしまいます」(スポーツ用品店店長)

「する、観る、支える」

 しかし、フィギュアスケートの関係者によると、それでも「野球はまだ安い方」だそうです。フィギュアスケートの場合、スケート靴の相場は2~5万円、練習着でも最低1万円はかかるとのこと。競技大会用の衣装ともなると、この倍くらいではすみません。早い段階でコーチをつけたり、レッスンに通ったりすると、それこそおカネはいくらあっても足りません。

 以前、2002年ソルトレイクシティ五輪、06年トリノ五輪で2大会連続入賞(女子シングル)を果たした村主章枝さんから、こんな話を聞いたことがあります。 「フィギュアスケートは、ご両親の理解がないと、続けるのが難しいスポーツだと思います。私は、このスポーツを6歳から始めたのですが、衣装はパーツごとにリサイクルしていた時もあります。あるいはボディーの部分だけ、色を染め直すとか、スカートの色を変えるとか……。子どもにフィギュアスケートをやらせている多くの親が、こういったことを経験されているんじゃないでしょうか……」

 親御さんの負担は経済的なものだけにとどまりません。子どもをアイスリンクに送迎するのも一仕事です。

 羽生結弦選手が練習拠点のアイスリンク仙台に、2017年までに送った寄付金の使い方に注目が集まりました。同リンクを運営する加藤商会は、その寄付金を送迎バスの購入費用に充てたといいます。時間と費用を合わせた“送迎コスト”を軽減したいと考えたのでしょう。それだけでも親御さんは大助かりだったはずです。

 スポーツは「する、観る、支える」(文部科学省)から成り立ちますが、わけても「支える」は重要です。今後は「支える側」を「支える」仕組みづくりが求められています。

二宮清純

二宮清純 スポーツジャーナリスト

1960年、愛媛県生まれ。
スポーツ紙や流通紙の記者を経てフリーのスポーツジャーナリストとして独立。オリンピック・パラリンピック、サッカーW杯、ラグビーW杯、メジャーリーグ、ボクシングなど国内外で幅広い取材活動を展開。明治大学大学院博士前期課程修了。広島大学特別招聘教授。大正大学地域構想研究所客員教授。「スポーツ名勝負物語」「勝者の思考法」など著書多数。

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