2023年9月19日(火)更新
羽生結弦、初の単独ツアー開催へ
「ゲームからの倫理観や価値観」
プロフィギュアスケーターの羽生結弦選手が9月1日、単独アイスショーツアー「Yuzuru Hanyu ICE STORY 2nd “RE_PRAY” TOUR」の開催を発表しました。ツアーと銘打った単独公演は自身初。11月4、5日に埼玉(さいたまスーパーアリーナ)、来年1月に佐賀(SAGAアリーナ)、2月に神奈川(ぴあアリーナMM)で開催の予定です。
発表は11時11分
同ツアーの開催を発表したのは1日の午前11時11分。数字の「1」にこだわりを持つ羽生選手らしい演出です。そう言えば、8月4日の結婚発表は午後11時11分でした。
同ツアーの公式サイトには、次のような羽生選手のメッセージが掲載されていました。
<MIKIKO先生や大切な皆さんと一緒に、また作り上げていく機会をいただき、本当に嬉しいです。この『RE_PRAY』には、自分の経験の中で大きな要素であるゲームの世界からの倫理観や価値観も入っています>
「ゲームの世界からの倫理観や価値観」という言葉にハッとさせられました。ゲームと聞くと無意識のうちに無機的なもの、人工的なものを連想しがちですが、その中にも倫理観や価値観があり、それを大切にしたい、と羽生選手は語っているのです。
羽生選手のゲーム好きは有名です。中でもロールプレイングゲームが好きだと聞いたことがあります。この種のゲームの特徴は、キャラクターを操作し、冒険の途中で直面する数々の試練を乗り越え、目的を達成するところにあります。羽生選手は、自らの生き様にゲームの主人公を重ねているのかもしれません。
謎めいた問いかけ
羽生選手は2022年11月、単独アイスショー「プロローグ」の中で披露した「いつか終わる夢」において、ロールプレイングゲーム「ファイナルファンタジーⅩ(FFⅩ)」のオリジナルサウンドを使用しました。
それについて羽生選手は「(ゲームの)原作を知らない人に伝えるのがちょっと難しいけど」と苦笑を浮かべつつ、こう話していました。
「(ゲームの登場キャラクターが)魂の光と共に舞っていたり、歌っていたり、幻想的な風景の中で水の中にいたり。MIKIKO先生と演出を考える中で(ゲームのシーンを)参考にしながら作りました。僕のことを、皆さんは魂を込めて応援してくださっている。皆さんの思いや応援が満天の星空のようにまぶしく感じる時もあります。……でも、自分はもう(その光を)見たくない、滑りたくない。……でも、背中を押されてまた自分は滑り続けるんだ、というものを表現したつもりです」
どうやら羽生選手にとって、ゲームは、ただの娯楽ではないようです。ゲームからインスパイアされたものを、プログラムに落とし込んでいく。その営為はクリエイターそのものです。
<たった一回しかない命、繰り返しできるゲーム、相反している二つの中で、それぞれでしか見つけられない大切なことがたくさんあると思っています。どちらの大切なことも、言葉たちとスケートに、託していきます。見てくださる方の中で考えて、過去が昇華されたり、考えすぎて逆に悩みが増えることもあるかもしれません>(RE_PRAY公式サイト)
羽生選手の少々、謎めいた問いかけに対する答えは、そう簡単に見つかるものではありません。彼の問題意識を、観る側が内面化させるには時間がかかります。じっくり、ゆっくりと答えを探していきましょう。
二宮清純