2023年10月16日(月)更新
王者りくりゅう、GP第1戦欠場
木原龍一を襲った腰椎分離症とは
日本スケート連盟は10月12日、フィギュアスケート・ペアの三浦璃来選手/木原龍一選手組が21日に開幕するグランプリ(GP)シリーズ第1戦(アメリカ大会)を欠場すると発表しました。
フィギュアスケーターの職業病
りくりゅうペア欠場の理由は、木原選手が「腰椎分離症」と診断されたためです。日本スケート連盟の公式サイトに、木原選手の以下のコメントが紹介されました。
<8月頃から腰に違和感を感じ、徐々に痛みを伴い悪化してきたため、練習拠点があるカナダに戻り診察を受けた結果によるものです。今は一日でも早く練習を再開出来るよう回復に努めたいと思っています>
さて、腰椎分離症とはどのような傷病なのでしょう。日本整形外科学会の公式サイトには、こうあります。
<多くは体が柔らかい中学生頃に、ジャンプや腰の回旋を行うことで腰椎の後方部分に亀裂が入って起こります。「ケガ」のように1回で起こるわけではなく、スポーツの練習などで繰り返して腰椎をそらしたり回したりすることで起こります。一般の人では5%程度に分離症の人がいますが、スポーツ選手では30~40%の人が分離症になっています。>
この傷病はフィギュアスケーターの“職業病”と言ってもいいでしょう。
では、どのような治療法があるのでしょう。専門医に聞きました。
「まず安静にすることが第一です。早期なら3カ月、進行期なら6カ月の安静が必要とされるのが一般的です。脊椎分離症は疲労骨折が原因とされる発育期(小中学生)に発症する疾患です。進行すると分離すべり症に移行し、手術が必要となる場合もあります。野球選手に最も多く、次いでサッカー、陸上、バスケット選手などに多い傾向があります。私が英文で世界で初めて発表した骨髄移植を行った症例は女子柔道選手でした。
治療法としては鎮痛消炎剤の投与、湿布、温熱療法などがありますが、超音波治療(保険適応外)といったやり方もあります。とにかく、今は安静にして、様子を見守ることでしょう」(南松山病院・坂山憲史副院長)
逆境を糧にする力
フィギュアスケートのGPシリーズは6カ国で開催されます。今季の日程は次の通りです。1戦目=アメリカ・アレン(10/20~22)、2=カナダ・バンクーバー(10/27~29)、3=フランス・アンジェ(11/3~5)、4=中国・重慶(11/10~12)、5=フィンランド・エスボー(11/17~19)、6=日本・大阪(11/24~26)。※日時は全て現地時間
各ペアは上記大会の中から、最大で2大会に出場できます。合計点数上位6ペアが12月7日~10日に中国・北京で開催されるGPファイナルにコマを進めます。
りくりゅうは、1戦目の米国大会と6戦目の日本大会にエントリーしていました。他の大会へのエントリー変更はできません。残念ながら今回の欠場により、連覇は事実上不可能となりました。
ところで、りくりゅうには「試練に強い」というイメージがあります。
昨年7月のアイスショーで三浦選手は左肩を脱臼し、2カ月もの間、一緒に滑れなかったのはペアを組んでからはじめてのことでした。三浦選手は、ひとりで練習する木原選手の姿を見て「悲しくなった」と語っていました。
ケガからの復帰戦は11月に行われたGPシリーズカナダ大会でした。ショートプログラム(SP)で披露したのは「You'll Never Walk Alone」。のびやかに滑り出し、木原選手が頭上で三浦選手を3回転させるツイストを決め、ふたり揃ってのトリプルトゥループも成功させました。続くスピンやステップシークエンスもノーミスでまとめ、首位に立ちました。翌日のフリースケーティング(FS)でも首位を譲らず、見事優勝しました。
このように、りくりゅうには逆境を糧にする力があります。木原選手には、しっかり腰を治し、万全の状態でリンクに戻ってきてもらいたいものです。
二宮清純