2024年3月18日(月)更新
羽生結弦、アイスショーに新地平
女優・大地真央と“異次元コラボ”
プロフィギュアスケーターの羽生結弦選手が座長を務める「notte stellata2024」が3月8日から10日にかけて、セキスイハイムスーパーアリーナ(宮城県利府町)で開催されました。元宝塚歌劇団月組トップスターで女優の大地真央さんとの“共演”は大きな話題を呼びました。
“コの字型”の客席
宝塚歌劇団で男役のトップスターとして人気を博した大地さんは、退団後も舞台やテレビで大活躍されています。
演目は「カルミナ・ブラーナ」。羽生選手は、このプログラムで少年を、大地さんは“運命の女神”を演じました。
淡いパステルカラーの衣装に身を包んだ羽生選手はリンクを縦横無尽に滑り、トリプルアクセルも披露しました。パステルカラーの衣装を選んだのは、「まだ世界をちゃんと知らない少年。草花に触れたり幸せに生きている少年」を視覚的に表現したかったからもしれません。
ところが後半、大地さん扮する“運命の女神”が現れると、少年は“操り人形”と化してしまいます。
大地さんと羽生選手の距離は25メートルほど。アリーナの面積は3740平方メートル。テニスコート約15面分の広さです。高さは39メートル。羽生選手はともかく、大地さんにとって“コの字型”の客席は初めてだったはずです。
しかも、2人が一緒に練習を始めたのは公演初日の、わずか2日前。いくら2人が斯界のトップとはいえ、呼吸を合わせるのは容易ではないでしょう。
それをノーミスでやり遂げるだけではなく、最上のエンターテインメントに仕立て上げるのですから、会場が割れんばかりの拍手に包まれたのも当然です。
「天才は天才を知る」
初日公演後、羽生選手は“舞台裏”をこう明かしました。
「前半の部分、大地さんの登場前の部分は、シェイ=リーン・ボーンさん(プロスケーター、羽生選手の振り付けも担当)に振り付けをしていただいきました。大地さんの登場後は、大地さんが振り付けをしてもらっている方にお願いをしました。いわゆる、舞台の振り付けです。前半のフィギュアスケートの振り付けを滑っている自分と、後半の舞台の振り付けを滑っている自分の演技にギャップがでないように滑り込んできました」
大地さんは、どうだったのでしょう。先述した約25メートルの距離については、位置的な難しさを認めつつも、「息が合った。すごく“コラボ感”を感じることができました」と落ち着いた口調で語りました。
では、“コの字型”の客席については?
「(普段は)だいたい正面にしかお客様がいらっしゃらないんですけど、今回は“コの字型”にお客様がいらっしゃったもので。広い空間で、楽しくやらせていただきました」
大地さん自身、新しいチャレンジを楽しんでいたようです。
羽生選手が体操男子個人総合で五輪連覇(12年ロンドン、16年リオデジャネイロ大会)を達成した内村航平さんと“共演”を果たしたのは昨年3月10日から12日にかけてです。
当初は、同じスポーツとはいえ、“異業種コラボ”を不安視する声もありましたが、終わってみれば大成功でした。
あの時、私の脳裡には「天才は天才を知る」という言葉が浮かびました。そして今回、またも、それを実感することができました。言うなれば“異次元コラボ”です。
パートナーの持ち味を、しっかり引き出しながら、アイスショーの新地平を切り拓き続ける羽生選手。次のチャレンジが楽しみです。
二宮清純