写真:二宮清純

二宮清純コラム銀盤のカーテンコール

毎月第3月曜更新

2024年5月20日(月)更新

宇野昌磨「自由度の高い日々」
次のステージは「THE・ICE」

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 フィギュアスケート男子で世界選手権2連覇(2022年、23年)、18年平昌冬季五輪シングル銀メダル、22年北京冬季五輪シングル銅メダル、団体戦銀メダルなど輝かしい足跡を残した宇野昌磨選手が14日、都内で引退会見を開き、競技会からの引退とプロスケーターへの転向を表明しました。

「悲しい気持ちはない」

 宇野選手は5月9日に自らのSNSで既に競技会からの引退を表明していました。

 その点に質問が及ぶと、晴れやかな表情でこう語りました。

「引退という場を、悲しい気持ちというよりも、前向きな気持ちで(とらえている)。まだ、これからもスケートを続けていくという意味でも、全然悲しい気持ちはない。次に向かって、またスケートを全力で頑張ります、という気持ちを込めての発表でもありますので……」

 引退といっても、競技会に参加しないというだけで、フィギュアスケーターをやめるわけではありません。7月には「THE・ICE」と題したアイスショーへの出演が決まっています。プロスケーターとして、自らの「世界観」をどう表現していくか。既に気持ちは、そちらに向かっているようです。

 宇野選手は、「どうしてもいい成績を残してやるぞ、という強い気持ちで競技をやってきたというよりも、毎日、ベストを尽くす。目の前の戦いを、全力で一番いいものにする、という気持ちでやってきた」と語るように、順位やメダルの色よりも、パフォーマンスに対するこだわりの方が強かったようです。

 競技会では、2位が多かったことから「シルバーコレクター」と呼ばれたこともありますが、「悪い気はしない」と、かつて本人は語っていました。

「2位という順位が、いかに難しいかは自分でも認識していたので葛藤はありません」

 1位を目指しつつも、誰が上にいるか下にいるかではなく、自らのパフォーマンスに対する評価は、自らで下したい。そんな思いがあったのかもしれません。

 現役引退を考え始めたのは、2年前だったと言います。これについて宇野選手は「ゆづくん(羽生結弦選手)やネイサン(・チェンさん)の引退もあり、すごく寂しいなと。ともに戦ってきた仲間たちの引退を聞いて、取り残された気持ちになりました」と語りました。

“昌磨ワールド”満載

 宇野選手にとって、羽生選手とチェン選手は「雲の上の存在」だったようです。それこそ「坂の上の雲」を見上げる少年のような気持ちで、彼らの背中を追いかけてきました。それは宇野選手のみならず、フィギュアスケートファンにとっても幸せな時間でした。

 宇野選手は続けました。

「僕が果たして、そこにたどり着けたかどうかは、自分ではわかりません。(でも)僕なりに全力のフィギュアスケート人生を終えることはできたかなとは思う。どっちかというと、大会というよりも、ふたりの人間性の素晴らしさの方が記憶に残っています」

 羽生選手は宇野選手に次のようなメッセージを送りました。

<普通の、年齢が3つ違いなだけの男性同士で、たわいもない会話をしましょう。そしてまたスケーターとして、リンクで、笑いながら本気出せる、熱くなれる、2人しかできない時間を過ごせる機会がくることも、どちらも楽しみにまっています>(スポニチ5月10日付、一部抜粋)

 2人にしかできない時間を過ごせる機会――という言葉が印象に残りました。いつかアイスショーで“共演”あるいは“競演”する日が来るということでしょうか。

 結局、競技会では今年3月の世界選手権が最後となりました。その後、すぐに宇野選手はトレーニングを再開しました。何か心境の変化はあったのでしょうか。

「(以前までの練習は)“これをやらなきゃ”という感じ。そうではなくて、“あ、これをやってみようかな?”とワクワクした気持ちで、自由度の高いスケートの日々を送れています」

 次のステージは、“昌磨ワールド”満載のものになりそうです。

二宮清純

二宮清純 スポーツジャーナリスト

1960年、愛媛県生まれ。
スポーツ紙や流通紙の記者を経てフリーのスポーツジャーナリストとして独立。オリンピック・パラリンピック、サッカーW杯、ラグビーW杯、メジャーリーグ、ボクシングなど国内外で幅広い取材活動を展開。明治大学大学院博士前期課程修了。広島大学特別招聘教授。大正大学地域構想研究所客員教授。「スポーツ名勝負物語」「勝者の思考法」など著書多数。

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