写真:二宮清純

二宮清純コラム銀盤のカーテンコール

毎月第3月曜更新

2024年7月16日(火)更新

羽生結弦「而立」へのアプローチ
1月の「佐賀後」に変わったこと

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「三十にして立つ、四十にして惑わず、五十にして天命を知る……」。よく知られる孔子の言葉です。これを略して30歳の「而立」、40歳の「不惑」、50歳の「知命」と言います。今年の12月で羽生結弦選手は30歳、すなわち「而立」の時期に入ることになります。

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15歳で「志学」

 昔の数え年では、30歳になる前の29歳を「而立」としていたようです。ならば、羽生選手は既に「而立(じりつ)」の時期に入っていることになります。しかし昔は昔、今は今です。いずれにしても、あと5カ月もすれば、羽生選手は「而立」の時期を迎えることになるのです。

 気になるのは「而立」の意味です。実は、これには前段があります。孔子は「三十にして立つ」の前に「十有五にして学に志す」と述べています。これを「志学」と言います。15歳にして、学問の道を志した孔子は30歳にして学識や道徳観を確立させ、独立を果たした――。おおまかに言えば、そういうことです。

 忘れてならないのは、「志学」から「而立」までに15年の歳月を要しているということです。最低でも、そのくらいの年月をかけて思索に耽らなければ、本物の学問を修めることはできず、必然的に一身独立を果たすこともできないということでしょう。

 羽生選手がオランダ・ハーグで行なわれた世界ジュニア選手権優勝を果たしたのが15歳の時です。そこからフィギュアスケートへの「志学」が始まり、15年かけて「而立」を迎えようとしているのです。

 興味深い記事を見つけました。インタビューの一部を引用します。

<割とやっぱ練習はつらいですし、まあトレーニングも、明らかに「佐賀前」と「佐賀後」というフェーズが変わって、トレーニング自体の質も、考え方も、時間の実質的な量も本当に違くなって、あまりにもやることが多くてしんどいなとは思うんですけど。>(フィギュアスケート・マガジン2023-2024ハイライト

 ベースボール・マガジン社)

 佐賀前と佐賀後。要するに今年1月の「RE_PRAY」佐賀公演を境に、「トレーニング」の「フェーズ」が変わってきたというのです。

「不惑」までの10年

 推測するに、佐賀公演初日、「破滅への使者」というプログラムで、羽生選手は2度、ジャンプを失敗しました。冒頭の4回転サルコーは3回転になりました。4回転トウループでは転倒してしまいました。それが転機になったのではないでしょうか。

 フィギュアスケートは過酷な競技です。筋力に加えバランス、持久力も求められます。それを支えているのは日々の地道なトレーニングです。

 羽生選手は昨シーズン(2023年7月1日から2024年6月30日)だけで、「RE_PRAY」埼玉公演(2023年11/4、11/5)、同佐賀公演(2024年1/12、1/14)、同横浜公演(2/17、2/19)、「羽生結弦notte stellata2024」(3/8、3/9、3/10)、「RE_PRAY」宮城公演(4/7、4/9)、「Fantasy on Ice 2024」幕張公演(5/24、5/25、5/26)、同愛知公演(5/31、6/1、6/2)に出演しました。これはもう鉄人のなせるわざです。

 私はこれまで多くのアスリートにインタビューしてきましたが、30歳を境に、疲労がとれにくくなった、体のバネが失われてきた、ケガをしやすくなった、という話を、よく耳にしました。

 もちろん、それには個人差があり、一律に見られる現象ではないのですが、30歳という曲がり角をうまく回るためには、日々のトレーニングにおいて、これまでとは違ったアプローチが求められるようになります。

 そのアプローチの仕方も、人によってさまざまですが、羽生選手はストレッチにしろ、フィジカルトレーニングにしろ、これまで以上に時間と負荷をかけることで、曲がり角を回り、さらなる進化につなげようとしているのではないでしょうか。

 いずれにしても羽生選手の「而立」した姿が見られるのはこれからです。「不惑」までの10年間を、しっかりと見届けましょう。

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二宮清純

二宮清純 スポーツジャーナリスト

1960年、愛媛県生まれ。
スポーツ紙や流通紙の記者を経てフリーのスポーツジャーナリストとして独立。オリンピック・パラリンピック、サッカーW杯、ラグビーW杯、メジャーリーグ、ボクシングなど国内外で幅広い取材活動を展開。明治大学大学院博士前期課程修了。広島大学特別招聘教授。大正大学地域構想研究所客員教授。「スポーツ名勝負物語」「勝者の思考法」など著書多数。

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