2025年9月16日(火)更新
アイスダンスに注目の新カップル
櫛田育良&島田高志郎“いくこう”

この5月から、女子シングル・櫛田育良選手(木下アカデミー)と男子シングル・島田高志郎選手(木下グループ)がアイスダンスカップルとして活動しています。シングルで注目の両選手だっただけに、このニュースに驚いた人も少なくなかったはずです。結成発表からわずか3カ月後の8月、櫛田/島田カップルはKOSÉ新横浜スケートセンターで行なわれた『フレンズ・オン・アイス2025』(8月29日が公開リハーサル、30~31日が本公演)に出演しました。ちなみに、新カップルの愛称は“いくこう”です。
「出会えた喜びを共有」
まずは二人の経歴を紹介しましょう。櫛田選手は愛知県出身のスケーターです。2022年の全日本ジュニア選手権では銀メダルを獲得しました。このコラムの公開時は17歳ですが、10月に18歳を迎えるホープです。今後はアイスダンスとシングルの“二刀流”で競技を続けます。
リーダー役の島田選手は愛媛県の出身です。9月11日に24歳を迎えたばかり。男子シングルでは22年全日本選手権で2位になったことがあります。櫛田選手と違って彼は、アイスダンスに専念します。身長176センチと日本人男子フィギュアスケーターとしては大柄。リフト技で強みを発揮しそうです。
いくこうは8月29日、『フレンズ・オン・アイス2025』の公開リハーサルで初めて観客に演技を披露しました。観客席の開放は一部でしたが「緊張もしたし、ちゃんとできるかな?
という不安が大きかった」と櫛田選手。7歳年上の島田選手は「シングルで立つ舞台とはまた違う緊張があった」と語りました。
曲目は、スティーヴィー・ワンダーfeat.アリアナ・グランデの『Faith』。島田選手は「(惹かれ合う)ふたりが、出会えた喜びや幸せを共有する曲」と説明しました。
櫛田選手は紫色と黄色のキャミソールに白いスカート姿で登場しました。一方の島田選手の衣装は、白のワイシャツに紫色のベスト、黄色のネクタイ、黒のスタイリッシュなズボン。差し色で使った黄色が氷上によく映えていました。
アップテンポな曲調で演技が進行する中、新カップルは息の合ったステップ、笑顔を交えてのツイズルを披露しました。続いて、大胆なリフト技を繰り出すと客席からはこの日一番の歓声が上がりました。しかし、櫛田選手は「全然聞こえなかった」。島田選手も「必死だったので……」と苦笑いを浮かべるだけでした。そのやり取りに初々しさが感じられました。
“かなだい”が振り付け
実は、この『Faith』の振り付けをしたのは“かなだい”こと村元哉中選手と髙橋大輔選手でした。『フレンズ・オン・アイス2025』で共演したかなだいは「新米カップルの演技をどんな思いで見守っていたか」と水を向けられ、こう語りました。
高橋:ああ、素敵だな、と。たぶん、僕がアイスダンスを始めた時は“大丈夫かな?”って気持ちにみんながなったと思うんです。でも、このふたりには安心感が既にあります。これからどんどん、素敵になっていくと思うので、勝手に誇らしい気持ちになって、演技を見ていました。
村元:初めて通し練習を見た時に、「えっ! すごい!」と思いました。上達がすごく速い。
一方で、課題も浮き彫りになりました。リフト技で櫛田選手を支える島田選手は、フィジカル面の強化が必要です。以下は本人のコメントです。
「トレーニングの内容は(カップル結成以前、以後で)かなり変わりました。上半身の筋肉が必要なんだろうな、と思っていましたが下半身もうまく使わない。そのため、全身くまなく筋トレに励んでいます。きっと、(シングルの)ジャンプには適さないんだろうなぁ、と思いながらトレーニングをしています」
島田選手が、こう語ったのには理由があります。シングルやペアと違い、アイスダンスは1回転半以上のジャンプ技が禁止されています。氷上の社交ダンスと言われるだけあって、ターンやステップ、表現が重要になってくるのです。
こうした課題は、逆説的に言えば、“伸び代”の大きさを表しています。いくこうのデビュー戦は、9月23日に長野で行なわれる『クリス・リード杯』を予定しています。

二宮清純