2025年10月20日(月)更新
鍵山優真、グラミー賞作曲家とタッグ
ミラノでの勝負曲はトゥーランドット
ジャコモ・プッチーニ作曲のオペラ『トゥーランドット』と言えば、2006年トリノ冬季五輪で、フィギュアスケート女子シングルに出場した荒川静香さんが金メダルを獲得した、日本人にも馴染みの深い曲です。ミラノ・コルティナダンペッツォ冬季五輪を来年2月に控えた今シーズン(2025-26年)、22年北京冬季五輪男子シングル・銀メダリストの鍵山優真(オリエンタルバイオ/中京大)選手も、フリースケーティングにこの曲を選択することを決めました。
「素晴らしい出来」
鍵山選手の『トゥーランドット』は特別仕様になっています。米グラミー賞の受賞歴がある作曲家クリストファー・ティン氏に、フリーの時間に合わせた4分間の編曲を依頼しました。収録は、ロンドンのアビー・ロード・スタジオで行なわれました。イギリスのフィルハーモニー管弦楽団の演奏に、オペラのコーラスを合わせています。
鍵山選手は、「実は、まだ音源は完成してないんです」と苦笑を浮かべ、こう続けました。
「テノールのオペラ歌手の歌声が、メインメロディー部分に加わります。僕、現段階の音源でも十分、感動できる素晴らしい出来だと思っています。完成版音源は、どうなるかまだ自分でも想像できない。試合での音量や、会場の壁からの反響など細かく調整する必要がある。そこは試行錯誤しながら、完成に近付けたらいいなと考えています」
気になるのは音源の完成の時期です。それについて鍵山選手は「グランプリ(GP)シリーズが始まるあたりには完成できているのかな?
とは思うけど、まだわからない」と言葉を濁しました。
GPシリーズは先週末(現地時間10月17日から19日)、フランスで開幕しました。中国、カナダ、日本(NHK杯)、米国、フィンランドでの戦いのうち、GPシリーズ出場選手は2試合に参戦。ポイント上位6選手が12月4日、名古屋(IGアリーナ)で開催されるGPファイナルに進出します。鍵山選手はNHK杯(11月7日から9日、大阪)とフィンランド杯(現地時間11月21日から23日)にエントリー済みです。
「パワフルかつ繊細に」
GPファイナルの開催地である名古屋は、言うまでもなく鍵山選手の生活拠点です。「ファイナルが地元・名古屋で開催されるので、すごく気持ちが入っている」と強調し、続けました。
「新しいアリーナにたくさんのお客さんが来てくれて、大事な五輪シーズンのGPファイナルが開催されるのはすごくありがたい。GPシリーズ2戦(NHK杯、フィンランド杯)を通じて、ファイナルに出場できるように頑張ります」
すでに鍵山選手は試運転を始めています。先月、イタリア・ベルガモで行なわれたロンバルディア杯では、濃い青と薄い青のグラデーションの衣装に身を包み、優雅で伸びのあるイナバウアーを披露しました。
この大会では、ショート(95.44点)とフリー(190.47点)の合計285.91点で、銀メダルを獲得しました。左足首を故障していたこともあり、4回転ジャンプを2本に留めるなど構成には苦労の跡が見てとれました。
さて勝負曲の『トゥーランドット』についてはこんな感想を口にしました。
「音源の迫力がすごいので、それに負けないくらい自分のスケートもパワフルかつ繊細でありたいと思います」
荒川さんに話を戻せば、金メダル獲得後、海外のメディアは「クールビューティー」という愛称を授けました。ミラノ・コルティナダンペッツォ冬季五輪後には、鍵山選手にも、新しい称号が待っているかもしれません。

二宮清純





