17歳・島田麻央、苦境の中の5連覇
「自分のジャンプ」を取り戻せるか

11月23日から24日にかけて東京辰己アイスアリーナで行なわれた全日本フィギュアスケートジュニア選手権は、島田麻央選手（木下グループ）が前人未到の5連覇を達成して幕を閉じました。左足首に不安を抱えながらの戴冠でした。

「無理だと思った」

　島田選手は、2008年10月30日、東京都生まれの17歳です。21年3月、わずか12歳で4回転トーループを成功させ、翌年にはトリプルアクセルをものにしました。世界選手権ジュニア3連覇、全日本ジュニア5連覇を達成し、来季（2025－26年シーズン）はシニアに転向予定です。

　東京での2日間を振り返りましょう。11月23日のショートプログラム（SP）、曲は「Get Happy／Sing, Sing, Sing」。赤にスパンコールを散りばめた衣装でリンクに立つと、ダブルアクセル、ルッツートーループの連続3回転ジャンプなどを見事に決めました。ノーミスの演技を披露し、72.55点で首位に立ちました。

　国際スケート連盟（ISU）は、体への負担を考慮し、女子ジュニアのSPにおいて、トリプルアクセルと4回転を禁止しています。しかし、フリーではこうした制限はありません。SP後の会見で「大技（トリプルアクセルと4回転トーループ）を入れる」と島田選手は宣言していました。

　翌日のフリースケーティング（フリー）。プログラムは「Miracle」。水色の衣装に身を包んでリンクに登場すると、客席は「MAO」と書かれた水色とピンクのタオルで揺れました。だが序盤に試練が待っていました。冒頭の4回転トーループに失敗し、壁に左半身を打ち付けました。トリプルアクセルも転倒。予定していた3回転－3回転のルッツートーループは、3回転－2回転に。ここから立て直し、演技をまとめました。

「（5連覇は）もう……、無理だと思った」と島田選手。フリーのスコアは124.23点で2位でしたが、合計点はトップの196.78点を記録し、逃げ切りました。

　島田選手は、12月4日から愛知で開催されるグランプリ（GP）ファイナルジュニアと、12月21日に東京で開催されるシニアの全日本選手権に出場予定です。大会に向け「痛みはほとんどないので、アクセルと4回転ジャンプの練習をどんどんやりたい」と抱負を口にしました。

「骨折の一歩手前」

　島田選手は、GPシリーズジュニア第7戦（現地時間10月8日～10日）の直前、左足首を骨挫傷しました。骨挫傷とは、骨の内部に炎症、または内出血している状態のことを言います。「骨折の一歩手前」とも言われ、痛みが慢性化する恐れもあります。

「痛みを抱えながら練習していた分、勝手に体をかばっていました。自分のジャンプではなくなっていたので、苦戦しました」

　自分のジャンプではない――。この言葉が彼女の苦境を物語っていました。

　周知のようにISUは2022年7月から、段階的にシニアの世界大会への年齢制限を15歳から17歳に引き上げました。来年2月に行なわれるミラノ・コルティナダンペッツォ冬季五輪の出場資格を満たすためには、五輪前年の7月1日までに17歳に達していなければなりません。

　従って、島田選手には五輪出場資格がありません。もしISUが年齢制限を15歳のままにしていたら、島田選手は五輪出場権を得るため、無理を押して練習していたかもしれません。

　今から3年前の小欄で、ISUの年齢制限引き上げについて、私はこう書きました。

＜今回のルール改正により26年、ミラノ・コルティナダンペッツォで開催される冬季五輪に島田麻央（13歳）は出場できなくなります。現在、日本で唯一4回転トーループを跳べる彼女は10月生まれ。五輪開催前年の7月1日時点で17歳以上でなければならないからです。残念ではありますが、後々、「失ったものより受益の方が大きかった」と笑顔で振り返られる競技人生であって欲しいものです＞

　先に述べたように、骨挫傷は選手寿命に関わる厄介なケガです。ケガとの戦いは、ある意味トップアスリートの宿命とはいえ、大事に至らないことを祈るばかりです。