2026年4月6日(月)更新
羽生結弦、1年2カ月ぶりの単独公演
31歳4カ月の「現在地」と「現在値」
プロフィギュアスケーターの羽生結弦選手が総指揮を執り、自らも出演する「“REALIVE” an ICE STORY project」が今週末(4月11日、12日)、宮城県利府町内のセキスイハイムスーパーアリーナで開催されます。初日はCSテレ朝チャンネル2で独占生中継、2日目はTELASAで独占生配信されます。どちらもJ:COMで楽しむことができます。
「未開発なスポーツ」
羽生選手は昨年8月から今年3月まで「メンテナンス期間」と称し、技術向上と肉体改造に取り組んできました。先月、セキスイハイムスーパーアリーナで行われたnotte stellataで、8カ月ぶりに演技を披露しました。今週末の会場も同じです。羽生選手の単独公演は2025年2月以来、1年2カ月ぶりとなります。
notte stellata初日公演後の囲み会見で羽生選手は、「充電期間を経て、フィギュアスケートに関する新たな発見はありましたか?」という質問をテレビクルーから受けました。少し間を置いた羽生選手、「体の動きをいろいろ勉強してきたんですけれども……」と前置きしてこう答えました。
「いかにいままで我流でやっていたのか、を改めて発見しました。フィギュアスケートは、科学的根拠のある研究をたくさんされているか? と言われたら、そんなこともない。まだ未開発なスポーツで、どれだけ根拠のない練習と、根拠のない技術を身につけてきたのかと、改めて実感しました。
ほんの少しかもしれませんが、フィギュアスケーターとしてだけではなく、スポーツに携わる人間として、またはダンスに携わる人間として、“こういう体の使い方をしなきゃいけない”という“基礎の基”くらいは学んで来られたのかなという気はしています」
notte stellataでの彼のパフォーマンスの内容については、前回の『羽生結弦「メンテナンス」を超えて 8カ月ぶりのベストパフォーマンス』(2026年3月16日(月)配信号)にて私見を述べました。
プロ転向後、羽生選手はフィギュアスケートの枠に収まらない演技を見せるようになりました。具体的に言えば、2023年11月から2024年4月にかけて行なわれたICE STORY 2ndのRE_PRAYから徐々にダンスの要素が色濃くなっていきました。RE_PRAYでは、演出家でありダンス講師でもあるMIKIKOさんにプログラムの振り付けを依頼しました。羽生選手は鏡張りのダンススタジオで上半身の振り入れ作業を行い、氷上でMIKIKOさんの振り付けが生きるようなスケーティングを模索しました。
「生きた存在」
振り返るに、ダンス仕様の上半身の動きと足元のスケーティングの技術との融合は、このあたりから一気にハイスペック化したように思われます。
今回のREALIVEに話を戻しましょう。公式サイトによると、コンセプトは<羽生結弦がこれまで生み出してきたプログラムたちを、もう一度“生きた存在”として立ち上げる>。これは何を意味しているのでしょうか。
生きた存在――という言葉が気になります。フィギュアスケーターのみならず、アスリートは通常、ある一定の年齢を超えると、かつてできていた動きに陰りが生じます。ひらたくいえば、自分が頭で思い描く姿に、体がついていかなくなるのです。
もちろん効果的なトレーニングによって、それに抗うことはできます。とはいえ、それはアスリートとしての“延命行為”に過ぎません。ところが羽生選手の場合、延命ではなく、新しい価値の創造に挑んでいるように、私の目には映ります。唯一無二の試みを具現化するためには、思いを共有する同志が必要です。そのひとりがMIKIKOさんであることは言うまでもありません。
彼女は、こう述べています。
<アスリートとしても、表現者としても、進化し成熟していく彼が自らの“これまで”を塗り替え“ここから”を提示するLIVEになります。この先、表現者としてどのような境地へ向かっていくのか。その可能性を想像する時間として、本公演を受け取っていただければ幸いです。私たち制作側もまた、彼の挑戦と覚悟に向き合いながら、大切にこの時間を創り上げています。羽生結弦の現在地、そしてその軌跡を、ぜひ会場でご体感ください>
羽生選手が示す「現在地」と「現在値」――。1年2カ月ぶりの単独公演で、彼は私たちに何を問いかけるのでしょう。

二宮清純





