2026年6月15日(月)更新
羽生結弦「鉄人」へのメンテナンス。たび重なる試練を乗り越えた精神力
プロフィギュアスケーターの羽生結弦選手が総指揮を執り、自ら出演した単独公演「“REALIVE(リアライブ)”an ICE STORY project」(4月11日、12日に宮城県利府町にて開催)から約2カ月がたちました。前回、書き残したことを記しておきます。
J:COM STREAMで配信中「羽生結弦」出演番組はこちら
足首への衝撃
羽生選手は、昨年7月からの約8カ月間を「メンテナンス期間」とし、怪我の治療や肉体改造に取り組みました。公の場での氷上復帰は3月に宮城県利府町で行なわれた「羽生結弦 notte stellata 2026」。その1カ月後に開かれたのが、単独公演「“REALIVE(リアライブ)”an ICE STORY project」でした。
羽生選手は、単独公演初日後の囲み会見でメンテナンス期間を、こう振り返りました。
「ちょっと、スケートから離れる期間……離れざるを得ない期間がありました。いろいろ痛んでいる箇所、酷使してきた箇所を、これから長く続けていくにあたり良い方向に持っていきたくて、メンテナンスをしました」
ほとんどのフィギュアスケーターは、ジャンプの着氷は右足になります。羽生選手の場合も同様です。ゆえに着氷の際、利き足のアキレス腱にかかる負担は尋常ではありません。
いくらスケートブーツ自体が足首とアキレス腱を固定し、保護する構造になっているとはいえ、蓄積された負荷は、確実に足首を蝕んでいきます。
米ブリガムヤング大学の研究によると、着氷時にフィギュアスケーターが足首に受ける衝撃は、体重の5~8倍だと言われています。それが0.05~0.125秒という極めて短い時間に集中するのが特徴です。
羽生選手の場合、通常の体重は約57キロ(競技者時代)です。先の研究結果に従えば、着氷時には285~456キロの荷重が足首にかかる計算になります。
ちなみに、家の2階(約3メートル)から飛び降りたとしましょう。この時の衝撃は体重の約10~12倍。それより少ないとはいえ、エリート選手は1日に50~100回のジャンプを繰り返すわけですから、その過酷さがしのばれます。
深刻な“職業病”
もっとも、一流のスケーターは誰もが、衝撃を全身に分散させる技術を持っています。ヒザや股関節をうまく使いこなすことで、着氷時の衝撃をやわらげるのです。
そのため、アキレス腱断裂が原因で引退に追い込まれた選手は他競技に比べると少なく、ゆえに衝撃を分散させる彼らの身体的テクニックは、しばしば動作解析の重要な研究対象となっています。
羽生選手は、これまでいくども深刻な右足首の故障に悩まされてきました。
2017年11月 NHK杯での公式練習で右足関節外側じん帯損傷
2018年11月 ロシア杯の練習中に右足関節外側じん帯損傷、三角じん帯損傷、右腓骨筋腱部損傷
2021年11月 右足関節靱帯損傷
2022年2月 北京五輪公式練習中に右足首をねんざ
いくら“職業病”とはいえ、不屈の精神なくしてたび重なる試練を乗り越えることはできません。
当の羽生選手は、自らの身体とどう向き合っているのでしょう。
「スケートをしていると戻らないだろうな。体の1個1個を見つめ直して、実際にそのダメージがどれくらい溜まっているかっていうのも、しっかりとお医者さんを含めて見た上で、“これぐらいまで”と思って(メンテナンスの)期間を定めました」(khb東日本放送「サンデーチャージ&スポーツSP 羽生結弦~限界無き挑戦~」2026年5月10日放送)
競技者生活に区切りをつけたとはいえ、プロフィギュアスケーターとして、競技者時代を上回るパフォーマンスを披露し続ける羽生選手には「鉄人」の称号がよく似合います。

二宮清純





