2026年8月17日(月)更新
りくりゅう、工夫凝らしたアイスショー
テーマは「初観賞者にもわかりやすく」
7月31日配信号でも紹介したように、プロフィギュアスケーターに転身した、2026年ミラノ・コルティナ冬季五輪フィギュアスケートペア金メダリストの“りくりゅう”こと三浦璃来、木原龍一組プロデュースによるアイスショー「THE DESTINY」が、7月31日から8月2日の3日間、辰己アイスアリーナで開催されました。4公演(8月1日のみ午前・午後の2公演のため)でのべ1万8000人の観客を動員しました。
「僕は野球がやりたい!」
9組のペアと7組のアイスダンサー(計16組)が出演した「THE DESTINY」は、2部構成でした。今回は第1部、第2部から、興味深かったプログラムを1つずつ紹介します。
まず、第1部。オープニングから数えて9つ目の「PLAY BASEBALL」というプログラムに注目しました。というのも、7月30日に行なわれた公開リハーサル後、木原選手がこう語っていたからです。
「最初はペアとアイスダンスの違いをコラボレーションナンバーの中で表現できないか? というアイデアでした。そこからペアとダンスの対決の方が面白いんじゃないか? とミーティングを重ねながら、スポーツの構成になりました」
より詳しく説明したのは三浦選手です。
「コンセプトは何にしよう、と考えていたら“(木原選手が)僕は野球がやりたい!”って言い出したんです。“それ、いいね! 素敵なものができそう”と、取り入れました」
さて、氷上で野球をどのように表現したのでしょう。
このプログラムは、青色のユニホームを着用したペアチーム対黄色のユニホームを着たアイスダンスチームによるグループナンバーでした。
チーム編成は、りくりゅうら3組によるペアチームと、ミラノ・コルティナ冬季五輪フィギュアスケート団体銀メダル獲得に貢献した“うたまさ”こと吉田唄菜、森田真沙也(木下アカデミー)組ら3組のアイスダンスチームの、総勢12人でした。
メインスタンドから観て左側にペアチーム、右側にアイスダンスチームが陣を取りました。円陣を組んだ後、アイスダンスチームがグローブを着用し、守備につきました。ペアチームはプラスチックバットを持って攻撃を仕掛けます。本物のボールこそ投げませんが、アイスダンスチームの先発ピッチャーが投球の仕草を見せると、1番バッターの木原選手がバットを振りました。場内に「カキン」という効果音が響き、ヒットを打ったようです。
しかし、あろうことか木原選手は走ろうとせず、自らの打球に見惚れてしまいます。三浦選手が一塁を人差し指で差して、「走れ!」と指示を飛ばしました。
出塁した木原選手は、0ボール2ストライクのカウントで盗塁を試みました。しかし、一、二塁間で挟まれアウト。12人のスケーターは、これら一連の流れをミュージカル調にアレンジし、巧みに表現しました。
館内放送で解説
アイスショーの演目に野球を取り入れるとは、野球好きを公言している木原選手ならでは。調和のとれたコミカルでポップな世界観を表現しました。
第2部からは、整氷後6つ目のプログラム「6-MINUTE WARM-UP」を取り上げます。日本人選手は「6分間練習」のことを、「6練」、「6分」と言います。りくりゅうが「(6分に)こだわった」理由は、カップル競技の観戦や観賞をより多くの人に楽しんでほしい、というサービス精神によるものでした。
ペア3組、アイスダンサー2組が滑り始めるとナレーターによる館内放送が入りました。「ペアとアイスダンスならではの技、エレメンツがあります。ここからは、その技の数々を競技会の6分間練習の形を取りながら、ご紹介していきたいと思います。ペアとアイスダンスは同じカップル競技ではありますが、似て非なるもの。それぞれ、どういう競技特性があるか。理解にお役立ていただければ幸いです」
そして、こうも。
「まずはペアの離れ技の1つであるツイスト。男性が女性を空中に投げ、女性が空中で回転する技です」
場内の大型スクリーンには、ツイストの解説が文字で映し出されました。
続いて、アイスダンサーが片足で連続ターンをするツイズルを披露しました。これも、館内放送と大型モニターによる解説付きです。同じ流れでペア、アイスダンスの技を交互に披露し、「6分」「6練」を終えました。
千秋楽後、三浦選手は「6分」の狙いについて、こう語りました。
「ありがたいことに初めてカップル競技を見る方もたくさんいらっしゃったようです。ペアとアイスダンスの違いを教えてほしいという声をたくさんいただいたので、初めて見る方々にもわかりやすいように6分間の技紹介をつくりました」
一方、木原選手は「あの6分は2人でこだわっていたポイントでした。本当に魅力の詰まった6分だった」と充実した表情で振り返りました。
競技生活引退後、りくりゅうは「カップル競技の魅力を多くの人に伝えたい」とのミッションの下、メッセージを発信し続けています。その思いは、のべ1万8000人の観客に確実に伝わったはずです。
(取材・大木雄貴、構成・二宮清純)

二宮清純





